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摂食障害

せっしょくしょうがい

概要

摂食障害は、体重に対する強いこだわりをみとめ、体重が増加することを防ぐために食事量の制限、自己嘔吐や不適切な下剤の使用といった行動を認める疾患で、近年、心療内科、小児科、精神科外来において増加している疾患の一つです。摂食障害は神経性無食欲症と神経性大食症とに大別されます(表1参照)。しかし現在では、それぞれは独立した疾患というより、相互に移行したり、重複したりすることのある疾患と考えられています(参考文献(1))。

この疾患の患者さんの90-95%は女性であるといわれており、もっとも頻繁に発症する年齢は10代半ばであるといわれていますが、20代初期に発症する場合も5%前後あります。ここでは、それぞれの疾患について概略を説明いたします。

表1 摂食障害の分類

表1 摂食障害の分類

神経性無食欲症

 診断と臨床的徴候

神経性無食欲症では、年齢と身長から考えられる正常体重の最低限の体重さえ維持するのを拒む(例えば、標準体重の85%を下回る体重減少や、成長期に予想される体重増加がみられず、標準体重の85%を下回る)、体重不足にもかかわらず体重増加や肥満に対して強い恐怖心を持つ、自分の体重・サイズ・体型の感じ方に障害を認める(例えば、体重や体型が自己評価に大きな影響を与えると過剰に考えてしまう)、現在の体重不足が重大な問題であることを認めない、月経が少なくとも連続して3回ない、などといった症状を認めます。
アメリカ精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル第4版(DSM-IV)では、表2に示されるような診断基準(参考文献(2)より引用)で、診断が行われます。

神経性無食欲症は、制限型と無茶喰い/排出型の二つの診断にさらに分類されます(表1、表2参照)。

表2 神経性無食欲症の診断基準 (参考文献(2)より引用)

  1. 年齢と身長に対する正常体重の最低限、またはそれ以上を維持することの拒否(例:期待される体重の85%以下の体重が続くような体重減少、または成長期間中に期待される体重増加がなく、期待される体重の85%以下になる)。
  2. 体重が不足している場合でも、体重が増えること、または肥満することに対する強い恐怖
  3. 自分の体の重さまたは体型を感じる感じ方の障害:自己評価に対する体重や体型の過剰な影響、または現在の低体重の重大な否認。
  4. 初潮後の女性の場合は、無月経、つまり、月経周期が連続して少なくとも3回欠如する(エストロゲンなどのホルモン投与後にのみ月経が起きていいる場合、その女性は無月経とみなされる)

 病型

制限型:現在の神経性無食欲症のエピソード期間中、その人は規則的に無茶喰い、または排出行動(つまり、自己誘発性嘔吐または下痢、利尿剤、または浣腸の誤った使用)を行ったことがない。

無茶喰い/排出型:現在の神経性無食欲症のエピソード期間中、その人は規則的に無茶喰いまたは排出行動(つまり、自己誘発性嘔吐または下痢、利尿剤、または浣腸の誤った使用)を行ったことがある。


神経性無食欲症はさらに制限型と排泄型の二つの下位診断に分類されます。

制限型とは、現在の神経性無食欲症の期間の間に、規則的な無茶喰い、自己嘔吐、または下剤・利尿剤・浣腸の不適切な使用といった排出行動を行ったことがない状態をさします。排出型とは、現在の神経性無食欲症の期間中に、規則的な無茶喰い、自己嘔吐、または下剤・利尿剤・浣腸の不適切な使用といった排出行動を行ったことがある状態をさします。

患者さんは最低限の正常体重を維持することを拒否し、正常体重を維持することに大きな恐怖心を抱きます。また体重増加を防ぐ手段として、食物摂取の制限を行うことが多くみとめられますが、食物摂取の自己制限が持続できない場合は、無茶喰いが行われることもあります。多くの場合、無茶喰いをした後は、自己嘔吐をします。それ以外にも、不適切な下剤の使用、過剰な運動といった手段が用いられます。過剰な運動には、儀式的な体操や遠距離のサイクリング、散歩、ジョギング、マラソンなどがあります。これらの行動の大半は、隠れて行われることが多く、同居している家族でもその行動のすべてを把握するのは困難です。

 疫学、病因

神経性無食欲症の有病率については、研究により差が認められますが、思春期の女子の約0.5%から1%でこの疾患が発症すると推定されています。また男性の10倍から20倍の割合で女性に多く発生することが確認されています。

神経性無食欲症の原因については、生物学的な要因、心理的な要因、社会的な要因などが考えられます。

生物学的要因として、内因性アヘン物質が関与していることを示唆するいくつかの研究がありますが、決定的な要因にはなっていません。また社会の文化的な背景も関与することが指摘されています。一般的に痩せていることや運動に対して社会が肯定的である国ほど、神経性無食欲症の有病率が高いと考えられています。心理学的には、神経性無食欲症の症状は、思春期において、これまで以上に自立性や社会的責任が要求されることに対する反応としてとらえられることもあります。

このようにこの疾患の病因については、いくつかの仮説が提示されていますが、確定的なものはなく、現時点では、特定の要因のみで発症するのではなく、生物学的、社会的、心理的な要因が複雑に絡んで発症すると考えられています。

 治療

神経性無食欲症は医学的、精神病理学的、また人間学的にも複雑かつ深刻で、しばしば慢性的な経過をたどることが多いため、治療期間も長期にわたるケースが少なくありません。

治療は原則的に外来で行われます。薬物療法についてですが、臨床症状に応じて、抗不安薬、抗うつ薬、抗精神病薬などが対症療法的に用いられることがありますが、この疾患の中核となる症状を根本的に改善させる薬物療法は残念ながらまだ開発されていません。

精神療法については、一般的に支持的に対応していく精神療法が用いられますが、この疾患に対して有効性が確立されている精神療法は現段階では明らかになっていません。こういった状況から外来における実際の治療場面では、栄養状態が極端に悪化しないように身体管理を行いながら、症状に応じて薬物療法を行い、そして本人の苦痛を軽減し、問題解決を促すため、支持的精神療法を実施するというのが、一般的な治療になります。

栄養状態が極端に悪化した場合には、栄養状態の改善を目的として、一時的な入院治療を行うことがあります。通常は、栄養状態が改善した時点で治療場面を再び外来に移します。治療チーム、患者さんの双方で入院の目標を明確にし、それを共有します。目標体重を細かく設定し、それが達成された場合には、段階的に行動制限を緩和していくなどの方法がとられます。しかし、これらの治療には、患者さんやご家族の方の治療に対する積極的なかかわりが重要となります。

 慶應義塾大学病院での取組み

一般外来での対応になります。専門的な精神療法、専門外来等は特に設置しておりません。

神経性大食症

神経性大食症では、無茶喰いを繰り返す、無茶喰いをしているあいだ食事を制御することが不可能であると感じる、体重増加を防ぐために自己嘔吐をしたり、下剤や利尿剤を不適切に使用する、絶食を行ったり体重増加を防ぐために過度の運動を行う、そして自己評価が体重と体型に過度に結びついていると感じる、といった症状を認めます。通常、無茶喰いは自己嘔吐の1年程前に始まります。この疾患のほとんどの患者さんは標準体重の範囲内にありますが、低体重や高体重であることもあります。自分自身の身体像と外見に気を遣い、他人からどのように見えるかを心配していることが一般的です。
アメリカ精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル第4版(DSM-IV)では、表3のような形で診断が行われます。神経性大食症は排出型と非排出型の二つの診断にさらに分類されます(表1、表3参照)。

表3 神経性大食症の診断基準(参考文献(2)より引用)

  1. 無茶喰いのエピソードの繰り返し、無茶喰いのエピソードは以下の二つによって特徴付けられる。

     他とはっきり区別される時間の間に(例:1日の何時でも2時間以内の間)、ほとんどの人が同じような環境で食べる量よりも明らかに多い食べ物を食べること。

     そのエピソードの間は、食べることを制御できないという感覚(例:食べるのをやめることができない、または、何を、またはどれほど多く食べているのかを制御できないという感じ)。
  2. 体重の増加を防ぐために不適切な代償行動を繰り返す。例えば、自己誘発性嘔吐;下剤、利尿剤、浣腸またはその他の薬剤の誤った使用;絶食;または過剰な運動。
  3. 無茶喰いおよび不適切な代償行動はともに、平均して、少なくとも3ヶ月間にわたって週2回起こっている。
  4. 自己評価は、体型および体重の影響を過剰に受けている。
  5. 障害は、神経性無食欲症のエピソード期間中のみに起こるものではない。

 病型

排出型:現在の神経性大食性エピソードの期間中、その人は定期的に自己誘発性嘔吐をする、または下剤、利尿剤、または浣腸の誤った使用をする。
非排出型:現在の神経性大食症のエピソードの期間中、その人は、絶食または過剰な運動などの他の不適切な代償行為を行ったことがあるが、定期的に、自己誘発性嘔吐、または下剤、利尿剤、または浣腸の誤った使用はしたことがない。


排出型とは、現在の神経性大食症の期間中に、定期的に自己嘔吐をしたことがある、または下剤・利尿剤・浣腸などを不適切に使用したことがある状態を指します。非排出型とは、絶食または過剰な運動など、他の不適切な代償行為を行うことはあるものの、排出型にみられるような定期的な自己嘔吐、または下剤・利尿剤・浣腸などの不適切な使用を認めない状態を指します。


 疫学、病因

神経性大食症は神経性無食欲症より多くの人が罹患している疾患です。若い女性の1~3%に認められる疾患と考えられています。神経性大食症は、神経性無食欲症と同様、男性よりも女性に際立って頻繁に起こりますが、神経性無食欲症の発生に比べ好発年齢はやや遅く、10代後半もしくは、20代前半に発症することが多いと考えられています。

神経性大食症の原因も、神経性無食欲症と同様、生物学的、社会的、心理的要因が考えられています。生物学的には、抗うつ薬が効果を示すことから、セロトニン、ノルアドレナリンとの関係が示唆されています。患者さんは一般的に高い目標の持ち主であることが多く、痩せているのが好ましいという社会的な圧力にこたえようとするという社会的な要因も指摘されています。また、心理学的には、神経性無食欲症と同様、思春期におけるさまざまな課題に困難を感じ、それに対する反応として症状が出現しているとも考えられています。

 治療

通常、治療は外来で行われ、入院が必要になるケースはまれです。薬物療法では抗うつ薬が無茶食いと排出に有効で、治療に用いられることがあります。

精神療法については、アメリカの報告によっては、無茶喰いを引き起こす特定の行動に対する認知行動療法の有効性が示唆されていますが、我が国においては、マンパワー不足などの要因もあり、専門的な精神療法を提供できているのは一部の専門機関に限られているのが現状です。

 慶應義塾大学病院の取り組み

一般外来での対応になります。専門的な精神療法、専門外来は特に設置しておりません。

さらに詳しく知りたい方へ

 参考文献

(1)星野仁彦、金子元久、丹羽真一, 1996. 摂食障害の診療ストラテジー, 新興医学出版社, 東京.

(2)カプラン, H.I., サドック, B.J., グレブ, J.A.; 井上令一, 四宮滋子 監訳, 1996. カプラン臨床精神医学テキスト, 医学書院エムワイダブリュー.

文責: 精神・神経科外部リンク
最終更新日:2011年12月28日

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