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腎生検

じんせいけん

概要

腎生検とは

腎臓は「生体内の司令塔」というべき重要な役割を担っている臓器です。生体内の恒常性を保つために、大動脈、頸動脈、心臓など各部所から常に情報が腎臓に集められ、その情報を腎臓で処理し、水、電解質、血圧などを調整しています。この司令塔が何らかの原因で障害を受ければ大変なことになります。「蛋白尿」、「血尿」がみられても、たかが「蛋白尿」、「血尿」と放置しては、徐々に腎障害が進行し、いずれは生体内の恒常性が破綻することになってしまいます。蛋白尿は、腎臓に限った問題ではありません。アルブミン尿、蛋白尿は、それだけで心筋梗塞、脳卒中など心血管イベントの大きな危険因子です。したがって、腎臓の発する「蛋白尿」、「血尿」という危険信号を早急に察知し、この「生体内の司令塔」に今、何が起こっているのかを明らかにしなくてはなりません。 実際、蛋白尿、血尿、腎機能低下を医師や健康診断で指摘されても、何の症状もないことが多く、戸惑うこともあるようです。その際、患者さんに「本当に腎臓が悪くて初期のサインが現れているのか?」、「治療が必要なのか?」、それとも「本当は腎臓の病気はないか、あっても心配は要らないものなのか?」といった情報をお知らせすることが医師の仕事です。

私ども医師は、まず血液検査、尿検査、超音波検査をはじめとする画像検査という体に負担のかからない検査を行いますが、それによっても正確な診断ができないことがあります。このような場合、患者さんの腎臓病を正確に診断し、最適な治療方針を決定するために「腎生検(じんせいけん)」をおすすめすることがしばしばあります。腎生検とは腎臓の一部(といってもほんのわずかですが)を採り、腎臓の状態を顕微鏡で観察し、評価する診断技術です。

腎生検の目的

腎生検の目的は大きく分けて3つあります。

  1. 腎臓の状態を組織で正確に診断すること
  2. 腎臓の病気の今後の見通し(予後)を予測すること
  3. 腎臓の病気に対し適切な治療法(ステロイド、免疫抑制剤等の適用)を決定すること

一方、腎生検によって患者さんは次のようなメリットを得ることができます。

  1. 腎臓組織の顕微鏡像が分かることにより、より正確な組織診断ができます。
  2. 腎臓病の治療には、ステロイド、免疫抑制薬など副作用が多いものがあり、慎重に適用すべきです。そのためにも正確な診断が必要となり、患者さんにとって不必要、不適切な治療を回避できます。
  3. 逆に早く治療しないと急速に腎不全に陥り、透析療法が必要となる病気もあります。このような病気を早く見つけ、早く治療することができます。
  4. 腎臓病の状態(軽いのか重いのか)や見通し(悪くなるのか、ならないのか)をつけることにより、出産(腎臓にも負担がかかる)、職業の選択(腎臓病が重いと重労働には耐えられない)など人生設計ができます。

腎生検を行う場合

医師は、次のような場合に患者さんに腎生検をすすめることが多いです。

  1. 検尿異常
    1. 血尿のみの場合

      健診で最も多く指摘されますが、腎臓の病気が疑われる場合のみ行います。すなわち、尿路の異常、腎盂(腎臓内で尿のたまる部位)、尿管、膀胱、尿道、前立腺といった部位での出血(感染、炎症、腫瘍、結石)あるいは腎臓の腫瘍が疑われる場合は、泌尿器科的な検査が優先されます。

    2. 蛋白尿のみの場合

      試験紙による検査で尿蛋白が(+)~(2+)が持続し、蓄尿検査(一日の尿をためていただきます)で蛋白が0.3~0.5g以上の場合は腎炎の存在が疑われ、腎生検を行います。早朝尿が(―)のときは起立性蛋白尿が疑われ、腎生検は適用しません。

    3. 蛋白尿と血尿の両方が認められる場合

      腎臓の病気が強く疑われるため、より積極的に腎生検を行います。

  2. ネフローゼ症候群

    正常な場合でも1日0.1~0.2g程度の蛋白尿はみられます。それが著しく増加してしまい、1日3.5g以上もの蛋白尿が観察され、むくみがみられる病気を、ネフローゼ症候群といいます。この場合、糖尿病によるものを除き、腎生検が適用されます。糖尿病による場合は、糖尿病以外の腎臓の病気が強く疑われる場合のみ腎生検が適用されます。

  3. 急性腎不全、急速進行性腎炎

    急速に(数日、数週間、2,3ヶ月)腎機能が低下し、尿が出なくなるような状態となった場合、原因の診断、治療方針の選択のために腎生検を行います。ただし、その場合に腎臓より下流の尿管、膀胱、尿道といった尿路系の閉塞や脱水、心不全といった腎臓自体には何も問題ないと判断される場合は適用しません。したがって、急性腎不全、急速進行性腎炎での腎生検を適用するかどうかについては、医師が慎重に判断します。

  4. 全身疾患に伴う腎臓病

    腎臓病以外で全身に異常を来す病気に、しばしば腎臓の異常が合併することがあります。代表例は、全身性エリテマトーデスという膠原病、多発性骨髄腫という血液疾患などです。これらの病気に伴う腎臓病は重要な意味を持つことが多く、腎生検を適用します。

  5. 腎移植後の腎臓

    拒絶反応の有無を検討する、腎炎の移植腎への再発の有無を検討する、免疫抑制剤による腎障害の有無を検討する目的で重要な検査です。

  6. 薬剤性の腎障害

    服用している薬剤が原因で腎障害が起こることがあります。本当に薬剤が原因なのかどうかを鑑別することは重要です。薬剤が原因であれば、その薬剤を中止、あるいは他薬へ変更しなければならないからです。また、薬剤による腎障害でも、様々な腎障害の型を示し(血管に障害を起こす、間質に障害を起こす、糸球体に障害を起こすなど)、腎臓障害の部位や程度を評価する点からも腎生検が重要となります。

腎生検を行わない、行ってはいけない場合

以下の場合は、腎生検を行いません。

  1. 長期にわたる腎機能の低下があり、腎臓がすでに小さくなっており、生検をしても治療に役立てられない場合
  2. 出血傾向、高度な高血圧、腎および腎周囲に感染がある場合
  3. 腎臓の数、形に異常がある場合―――腎臓が1つしかない場合、馬蹄腎、低形成腎といった腎臓の奇形
  4. 多発性嚢胞腎および大きな嚢胞が腎臓の生検する部位にある場合(嚢胞とは水の入った袋で、腎臓、肝臓などの臓器に時々できます)
  5. 全身状態が悪い場合―――重症の感染症など
  6. 腎生検施行中の医師の指示や、腎生検後の安静が守られない場合
  7. 患者さんやご家族のご了承やご協力が得られない場合
  8. 腎臓、尿路のがんが強く疑われる場合

所要時間

30分から1時間程度

検査の実際

通常は、一般病室で行います。病室のベッドサイドで超音波検査(エコー)を行いながら針で腎臓の一部を採取します(超音波ガイドでの針生検)。リスクが高い患者さんの場合、手術室で全身麻酔を行い、手術で腎臓の一部を採取する方法(開放腎生検)を選ぶことがあります。

  1. 超音波ガイドでの針生検
    • 患者さんはうつぶせになります。背中の肋骨の下あたり、背筋のある部位から針を刺していくためです。
    • 医師は超音波を背中よりあてて、まず腎臓の位置を確認します。
    • 腎生検は、左右どちらか片方の腎臓に対して行います(両方ではありません)。術者が患者さんの左側に立って検査を行うことが多いため、通常、左側の腎臓を生検することが多いです。
    • 患者さんには呼吸法を練習していただきます。大きく息を吸ったところでしっかり止めてもらいます。腎臓は呼吸で位置が変わるので、針で刺すときは止まっていることが必要です。したがって、この息こらえが10秒ぐらいできることが重要です。
    • 「検査は痛くないですか?」というご質問を受けることがありますが、痛み止めの注射をしてから行いますので、ご心配は要りません。痛み止めの注射は細い針で行います。
    • 次に組織採取のための針(太さは鉛筆の芯くらいです)を超音波で腎臓の位置を確かめながら、腎臓に向かって(おなかに向かって)進めていきます。
    • 針が腎臓に達したところで息こらえをしていただきます。その瞬間に針をわずかに(1~2cm)腎臓の中に挿入し、腎臓の組織を採取し針を抜きます。抜くと同時に針を刺したところを5~10分強く圧迫します。
    • この操作を2~3回行います。
    • 終了後は仰向けに3時間ベッド上で安静にしていただきます。針を刺した部位に砂袋を下から差し入れ、圧迫を続けます。生検を施行した当日はなるべく安静を保ちます。食事、飲水は可能ですが、仰向けを少し起こした状態で取っていただきます。翌日から徐々に体を動かすようにします。
  2. 開放腎生検
    • 手術室で全身麻酔をかけながら行います。
    • 背中の皮膚を切開し、腎臓まで到達します。
    • 腎臓を直接確認して腎臓の一部を採取します。
    • 採取部位を確実に止血した後で皮膚を縫います。
図

腎生検の合併症

最も多い合併症は出血です。軽い出血は避けられず、全国集計で100人あたりに2人程度です。多くはヘモグロビンの低下の進行もなく安静の継続など経過観察のみで大丈夫です。しかし輸血や外科的処置が必要な出血は日本の全国集計で1,000人あたりに2人程度です。したがって998名の方は大きな処置は必要ありません。死亡症例は日本の3年間の全国集計では30,000回で2名です。すなわち15,000回で1名の危険度です。

重症の出血の対処法は、腎臓の動脈に管を入れ血管を塞いで止血します。手術により出血部位を除去するか、最悪の場合は腎臓自体を取り除くこともあります。

当院の腎生検の実績は年間約60症例(毎週1~2例)です。重症の出血例はここ10年間で起きていません。

その他、感染や針を刺した部位の痛みなどの合併症がありますが、抗生剤、痛み止めで対処可能です。

腎生検入院(パス入院)

腎生検の入院は5日間です。当院では腎生検入院を決められた段取りで行っています。通常、月曜日に入院していただき、火曜日に腎生検を行います。合併症がないことを確認し、金曜日に退院となります。仕事や学校の都合で月曜日の入院が難しい場合は、適宜調整します。腎生検の結果は外来で説明します。

最後に

腎臓組織の状態がより正確に分かる腎生検は、有益な情報を患者さんにもたらす必須の検査です。安全に行うことができる反面、患者さんの負担や合併症も重視すべきです。私どもは患者さんの利益を第一に、慎重に適応を考え、安全で負担の少ない検査をめざし日々努力しております。

文責: 腎臓・内分泌・代謝内科外部リンク
最終更新日:2018年12月13日

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