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糸球体腎炎

しきゅうたいじんえん

概要

腎臓は、血液の中の老廃物を除去し、尿を生成する臓器です。尿を生成する最初のステップは、血液を濾過(ろか)することですが、その濾過装置の1個1個を「糸球体(しきゅうたい)」と呼びます。人体には腎臓が2つあり、1つの腎臓にこの糸球体が約100万個、2つの腎臓で計200万個の糸球体があるといわれています。この糸球体に炎症が起こるのが糸球体腎炎です。

どうして糸球体に炎症が起こるのでしょうか?病気の主体が腎臓にあると考えられる場合は「原発性」の糸球体腎炎といいます。「原発性」の糸球体腎炎は、病因が特定できない場合が少なくありませんが、何らかの免疫異常が原因の場合が多いとされています。この免疫反応は、通常は生体を細菌やウイルスから防御するために働くものですが、その免疫反応の異常により糸球体腎炎が生じる可能性が考えられています。

一方、「続発性」糸球体腎炎は、膠原病、血管炎、炎症性腸疾患、悪性腫瘍など、元となる全身疾患が存在し、それによって引き起こされる二次性の腎炎です。したがって、「続発性」糸球体腎炎の場合は、まずは元の全身性の疾患の診断と治療を行うのが基本です。


症状

「糸球体腎炎」には様々なタイプがあり、それぞれの症状には大きな違いがあります。ここではWHO(世界保健機関)の分類に基づいて、代表的な4つのパターンを説明します。

  1. 急性糸球体腎炎
    「急性糸球体腎炎」は、何らかの他の感染症状が出現した後に、腎臓の症状が現れます。急性糸球体腎炎を起こす感染で一番多いのは咽頭炎(いんとうえん)、すなわち、のどの痛みを伴う風邪です。皮膚の感染の後に症状が出現することもあります。これらの感染の1-2週間後にむくみや血尿(けつにょう、尿に血が混じり、時には色が赤くなること)に気付くことがあります。血圧が高い、だるい、息苦しいなどの症状がみられることもあります。急性糸球体腎炎の場合は、これらの症状が自然に軽快することが多いことが知られています。

  2. 慢性糸球体腎炎
    慢性糸球体腎炎の場合は、特に症状がないことが多いのが特徴です。健康診断で尿の異常(尿に蛋白・血液が検出される蛋白尿・血尿)を指摘されて初めて気付く人もいます。生理中の時、激しい運動の後などに一時的に尿異常がみられる場合と異なり、異常が慢性的に持続する場合は「慢性糸球体腎炎」の可能性が疑われます。

  3. ネフローゼ症候群
    糸球体腎炎の中で、特に蛋白尿が高度(厳密には、1日に3.5g以上)の場合をネフローゼ症候群といいます。症状は、手足のむくみ、体重増加(むくみは体の中の水分量が増加したために出現し、この増えた水分が体重増加となります)、だるさなどです。

  4. 急速進行性糸球体腎炎
    糸球体腎炎の中で、最も重篤な経過をたどる急速進行性糸球体腎炎は、腎臓の機能が数週間から数ヶ月間で低下します。症状としては、だるさ、むくみ、微熱、咳や息苦しさなどがみられることもありますが、ほとんど症状がない場合もあります。

診断

尿検査、血液検査、腎臓の画像検査、腎生検の組み合わせにより診断を進めていきます。

  1. 尿検査
    糸球体腎炎の基本検査です。尿検査で蛋白尿または血尿がみられることが糸球体腎炎の特徴です。蛋白尿を定量化するために、24時間の尿を貯めて、その一部を検査する「24時間蓄尿検査」を行う場合があります。

  2. 血液検査
    血液検査では、糸球体腎炎の原因となりうる免疫異常の有無、腎臓の機能の指標となる血清クレアチニン値、ネフローゼの有無を知るために必要な血清蛋白やアルブミンの測定などを行います。

  3. 画像検査
    画像検査で一番多く用いられるのが腹部超音波検査(エコー検査)やCT検査です。糸球体腎炎以外の病気の検索、腎臓の構造に大きな変化がないかを知るために有用です。

  4. 腎生検
    糸球体腎炎の状態を最も正確に知る方法です。尿・血液検査、画像検査で、糸球体腎炎の診断や進行度を推定しますが、確実な最終診断をするために行うのがこの「腎生検」です。腎臓の組織を針で採取し、糸球体を顕微鏡で観察し、診断します。
    以前は手術室で行うような検査でしたが、現在は一般の病室で行えるようになりました。より安全に検査を行うために、5日程度の入院にて行います。

治療

治療法については、糸球体腎炎の種類(組織分類)によって異なります。ここでは、各種の糸球体腎炎に共通した一般的な治療法と、糸球体腎炎の種類によって異なる薬物療法について説明します。

  1. 一般的な治療法
    糸球体腎炎では、原則として塩分摂取を控える、過労を避ける、などの基本的な治療を行います。軽症の糸球体腎炎が疑われる場合は、特に薬物療法を行わずに、尿検査や血液検査を定期的に行い、その経過を外来で観察します。

  2. 薬物療法
    1. 血圧の薬
      高血圧は腎臓に負担をかける原因となりますので、血圧が高ければそれを下げる降圧薬(こうあつやく)を使用します。降圧薬の中でもアンジオテンシン変換酵素阻害薬(へんかんこうそそがいやく)・アンジオテンシン受容体拮抗薬(じゅようたいきっこうやく)といった種類のものは蛋白尿の改善にも有効であることが示されています。
    2. ステロイド薬
      重症の糸球体腎炎、例えばネフローゼ症候群の場合は、糸球体の炎症を緩和するステロイド薬を使用します。ネフローゼ症候群を引き起こす糸球体腎炎の中でも、細かい分類が「微小変化群(びしょうへんかぐん)」の場合はステロイド薬で、少なくとも一時的に治る(寛解(かんかい)する)ことがあります。他の種類のネフローゼ症候群、さらに急速進行性糸球体腎炎でもほとんどの場合はステロイドを使用します。
      また、腎生検結果の分類が「IgA腎症」(あいじーえーじんしょう)の場合は、ネフローゼ症候群でなくても、腎機能の保持のためにステロイド薬を点滴で投与する「パルス療法」を行う場合があります。
      このように、ステロイド薬は特定の糸球体腎炎に対して最も効果がある薬ですが、その反面、様々な副作用があります。(1)炎症を抑えるのと同時に自分自身の免疫力も抑えてしまうため、感染症にかかりやすくなる、(2)胃炎、胃潰瘍、(3)骨がもろくなりやすい、(4)不眠傾向になる、(5)血圧や血糖値が乱れる、(6)顔が丸くなる(ムーン・フェース)、(7)白内障や緑内障を起こすことがある、などです。投与前や投与中には副作用をチェックするための検査を行い、副作用の出現を予防する投薬も行います。
    3. 免疫抑制薬
      ステロイドの効果が不十分の場合、あるいはその効果を補助するために、免疫機能を抑える薬を使う場合があります。
    4. 血小板凝集抑制薬
      蛋白尿を減らす目的で使用する場合があります。
    5. その他の治療
      重症患者に対する特殊な治療として、血液を直接浄化(じょうか)する血漿交換(けっしょうこうかん)や血液吸着(けつえききゅうちゃく)治療を行う場合もあります。

生活上の注意

  1. 食事の注意
    腎臓の負担となる塩分の取りすぎ、それに蛋白質の過度の取りすぎには注意します。ネフローゼなどでむくみがある時以外は、脱水にならないよう水分を十分に摂るように心がけます。

  2. 生活・仕事・運動の注意
    過度のストレス、睡眠不足、マラソンなどの過度の運動、炎天下の作業など、脱水を引き起こす行動は避けることが必要です。風邪をひくと腎臓に負担がかかりますので、うがいや手洗いなどを行い、風邪予防を心がけます。また急速進行性糸球体腎炎やネフローゼ症候群は、病状が安定するまでは入院安静が原則となります。妊娠は腎臓に負担をかけますので、特別な配慮をします。

慶應義塾大学病院での取り組み

慶應義塾大学病院では、糸球体腎炎の検査としての腎生検検査を週に1-2回行っています。また糸球体腎炎に対する各種の治療法を行う体制が整っています。


さらに詳しく知りたい方へ

腎臓病とは-蛋白尿・血尿-(日本腎臓学会)外部リンク
糸球体腎炎診断のきっかけとなる蛋白尿・血尿の検査の意義について説明してあります。

腎臓ネット外部リンク(日本腎臓学会承認サイト)
腎臓病の基本的な知識が分かりやすくまとまっています。

文責: 腎臓・内分泌・代謝内科外部リンク
最終更新日:2018年12月13日

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