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関節リウマチ(rheumatoid arthritis: RA)

かんせつりうまち

概要

関節リウマチ(rheumatoid arthritis: RA)は、外敵から体を守る免疫の異常によって関節に炎症が起こり、腫れや痛みが生じる病気です。女性が男性の4倍ほど多く、発症が最も多い年齢は30~50歳代でしたが、近年では65歳以上で発症する高齢発症関節リウマチも増えてきています。また、国・地域によって頻度は異なりますが、人口のおよそ0.5~1%の方が病気にかかっているといわれており、日本には60~100万人の患者さんがいると考えられています。

原因はいまだ不明ですが、遺伝的な要因に、出産や喫煙、感染症などの環境の要因が重なって起こると考えられています。特に最近の報告では、ある遺伝子の型をもっている人が喫煙をすると、発症リスクが20倍以上になることが分かっています。家系調査では、関節リウマチの人の3親等以内は発症する率が高く、33.9%の確率という報告があります。また、一卵性双生児の一方が関節リウマチであった場合には、15~30%の確率でもう一人もリウマチであり、さらに二卵性双生児では7%程度といわれています。病気そのものが遺伝するわけではありませんが、遺伝的素因が関与することが示唆されています。ほかの人にうつる病気ではありません。

関節とは骨と骨の連結部のことで、2つの骨と、骨の間のクッションの役割をする軟骨、それらを包む関節包と滑膜などから成ります(図1)。滑膜は薄い膜で、潤滑油の働きをする関節液を分泌し、関節の中はこの関節液で満たされ、滑らかに動くことができます。関節リウマチでは、この滑膜に炎症が起こり、滑膜が増殖します。ただ痛いだけではなく、無治療のままでは関節中の骨や軟骨、腱が破壊され、関節が変形していきます。かつては治らない難病とされていましたが、現在は抗リウマチ薬の進歩によって、「寛解(かんかい)」という、関節の痛みや炎症がない状態へとコントロールすることが可能になりました。また、関節破壊は発症2年以内に急速に進行することが分かり、早期診断・早期治療によって速やかに寛解へ導くことが重要と考えられています。

図1 関節の構造

図1. 関節の構造

症状

主な症状は関節の痛み、腫れ、朝のこわばりなどです。左右対称性に複数の関節に起こることが多く、腫れている部分は軟らかいのが特徴です。90%以上の人が手足の指の関節に症状がみられ、ほかに膝、肘、肩、足首などにも痛みが出ます。特に上肢の関節に強い傾向があり、膝、足首では腫れや熱感なども多い症状です。手の指は、第1関節に症状が起こることはまれで、第2関節や指の付け根の関節に症状が出ることが多いのも特徴です。また、第1および第2頸椎以外の背骨にはあまり影響が出ません。高齢発症関節リウマチでは、肩関節など大関節に罹患することが多く、リウマチ性多発筋痛症との鑑別が必要な場合もあります。

診断

従来は1987年に作成された基準(表1)をもとに診断されていましたが、早期診断に向かないことが問題であったため、2010年に欧米を中心に基準が改訂されました(図2)。この基準は、腫れや痛みのある関節炎の数、期間、リウマチ因子や抗CCP抗体の有無、炎症反応の有無によってスコア化して判断します。
しかし関節リウマチの人でも約10~20%はこの基準を満たさないこともありますので、診察所見、血液検査X線検査に加え、MRI超音波などの画像検査を組み合わせて判断します。

表1. 関節リウマチの従来の分類基準(1987年 米国リウマチ学会)
*基準1~4項目は6週間以上継続していなければならない。
7項目中4項目以上で関節リウマチと分類する。

基準

定義

1. 朝のこわばり*

関節とその周囲の朝のこわばりが最大限改善するまでに少なくとも1時間持続

2. 3領域以上の関節炎*

少なくとも3領域の関節で同時に軟部組織の腫脹または関節液貯留(骨の過成長のみではならない)が医師によって認められる。部位は、左右の手PIP(近位指節間)関節、MCP(中手指節)関節、手関節、肘、膝、足、MTP(中足指節)関節の14領域。

3. 手関節炎*

手関節、MCP関節、またはPIP関節の少なくとも1か所に腫脹がある。

4. 対称性関節炎*

体の左右の同じ関節領域が同時に腫れている。

5. リウマトイド結節

骨突起部、伸展側表面、または傍関節部位に皮下結節が医師により確認される。

6. 血清リウマトイド因子

血清リウマトイド因子が異常高値を示す。

7. X線異常所見

手指または手関節の前後撮影によるX線写真上で関節リウマチの典型的な所見が認められる。関節びらんや明瞭の骨の脱石灰化が含まれていること。


図2 関節リウマチの新分類基準(2010年 米国リウマチ学会・欧州リウマチ学会)

図2. 関節リウマチの新分類基準(2010年 米国リウマチ学会・欧州リウマチ学会)

血液検査

血液検査では、リウマチ因子と抗CCP抗体、CRPや赤沈などの炎症反応、軟骨破壊に関係している酵素であるMMP-3などを重点的にチェックします。リウマチ因子は以前から測定され、現在も汎用されていますが、最近は抗CCP抗体の有用性が注目されています。抗CCP抗体は、リウマチ因子に比べてより早期に、より特異的に検出でき、さらに抗CCP抗体が非常に高い例では、関節破壊が急速で高度になる傾向があることが知られています。逆にリウマチ因子や抗CCP抗体も関節リウマチの方の10~20%は陰性であるため、血液検査のみで関節リウマチを診断することはできません。また、高齢発症関節リウマチでは、リウマチ因子やCCP抗体が陰性になる例が、従来の関節リウマチより多いことが知られています。関節の炎症を反映して、CRPや赤沈などの炎症反応やMMP-3が高値となることも重要な参考所見のひとつです。

画像検査

X線所見では、関節周囲の骨粗鬆症(骨が薄くなること)、関節の隙間の狭小化、骨びらん(骨が一部欠けていること)(図3のA)、強直(きょうちょく、骨と骨が癒合していること)(図3のB)などがみられます。膝のX線では、変形性関節症と異なり、内側外側ともに均等に狭くなるのが特徴です。。

図3 関節リウマチのX線所見

図3. 関節リウマチのX線所見

図4. 関節リウマチ発症初期の関節X線(A)、MRI検査(B)、超音波検査(C)

図4. 関節リウマチ発症初期の関節X線(A)、MRI検査(B)、超音波検査(C)
X線写真は、初期には変化がほとんどみられず、下の写真でも有意な異常所見はみられないが、より敏感なMRIと超音波検査では滑膜炎や、骨びらんが描出されている。 また、関節リウマチに間質性肺炎が合併することもあり、定期的に胸部X線も撮影する。

治療

関節リウマチの治療薬には、痛みを和らげるための薬と免疫異常に働きかける抗リウマチ薬があります。 従来、初期に痛み止め、次いで抗リウマチ薬、効果不十分であればほかの抗リウマチ薬の追加または変更といった段階的な治療強化を、明確な指標がないままで行っていました。しかし、 関節リウマチの関節破壊は発症2年以内に急速に進行することが分かり、現在は「寛解」という明確な治療目標を設定し、指標をもとに早期から抗リウマチ薬によって治療することが推奨されています。病気の活動性の制御を意味する「臨床的寛解」、関節破壊が進行しないことを意味する「構造的寛解」、身体機能の維持を意味する「機能的寛解」の3つをいずれも満たすことを目標としています。

これらの寛解を判断するために、患者さん自身による病気や痛みの評価、日常生活での障害の度合いをお答えいただいています。 抗リウマチ薬には、大きく分けて免疫抑制(修飾)薬と、2000年前半から使用可能となった生物学的製剤、数年前から使用可能となったJAK阻害薬があります。通常は禁忌事項などなければ、メトトレキサートという薬剤で治療を開始、3か月程度で治療効果判定を行い、効果不十分の場合には生物学的製剤やJAK阻害薬を追加しますが、それぞれの患者さんの状態に合わせて、相談しながら治療を計画していきます。 また骨粗鬆症治療薬の一つとして使用されている抗RANKL製剤が骨びらんを伴う関節リウマチにも使用され始めており、骨破壊を防ぐ治療選択肢の一つとなっています。 治療についての詳細は関節リウマチの薬物療法関節リウマチの分子標的治療をご覧ください。

生活上の注意

関節リウマチの寛解を目指すには、薬物療法を基本に、運動やリハビリテーション、生活の工夫を組み合わせた治療・ケアが必要です。

  1. 症状を悪化させるタバコは厳禁
    喫煙の心臓血管系への影響などはよく知られていますが、喫煙は関節リウマチの発症リスクを高めます。それだけでなく、薬の効きを悪くして、治療に影響します。節煙では効果がないので、きっぱりとやめるようにしましょう。

  2. 食事はバランスよく、様々な食品から
    食事療法が必要な合併症がなければ、基本的に食事の制限はありません。特にこれを食べたから病状が悪くなるといった食事もありません。しかし、骨粗鬆症などの合併症を少しでも防ぐためには栄養のバランスを良くし、良質のたんぱく質や、カルシウム、鉄分を積極的に摂るようにしましょう。

  3. 睡眠・休養を十分とるようにする
    疲労は症状悪化のきっかけになることがあります。休養をとって体調、心のストレスを減らすようにしましょう。

  4. 体を動かして関節や筋肉の機能を守る
    炎症や痛みが強い時は安静が第一ですが、病状が落ち着いてきたら自分ができる範囲で、毎日少しずつでもリハビリテーションや運動を続けましょう。自宅でも簡単にできるリウマチ体操や、炎症が強い時は関節を動かさずにできる体操がありますので、体調と相談しながら無理せず行うことが大切です。

  5. 温める・冷やすで痛みを和らげる物理療法
    炎症がおさまっているときには、温熱や光線、超音波による温熱療法が適しています(ただし、人工関節や、心臓ペースメーカーを植え込んでいる人は受けられないことがあります)。また、炎症が強く、痛みや腫れがあるときは冷却療法で患部を冷やします。

  6. 関節に負担をかけない自助具・装具利用や、洋式の生活で暮らしやすく
    立ち座りや、食事、排せつなどの際にも関節は大きくかかわっています。持ちやすい食器や、装具を利用することで関節への負担を和らげましょう。また、基本的に和式ではなく洋式の生活の方が関節への負担が軽くて済みます。例えば、畳よりも、椅子に座ったほうが膝や股関節の負担を減らすことができます。

慶應義塾大学病院での取り組み

慶應義塾大学病院リウマチ・膠原病内科では関節リウマチに対する多くの診療実績があります。診断の難しい例では、関節MRI検査や関節エコー検査も行うことで診断の確度を高めています。また、関節穿刺で関節液を調べてほかの疾患の除外を行うこともあります。大学病院という特徴を生かし、通常の医療機関ではできない研究室レベルの専門的な検査法を行うこともあります。初めて関節リウマチにかかられた人が標準的な治療を受けた際の経過に関する臨床研究や、既に生物学的製剤を使用している人の減量、投与間隔の延長に関する臨床研究も行っています。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: リウマチ・膠原病内科外部リンク
最終更新日:2023年3月3日

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