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ホーム > 病気を知る > 脳・脊髄・神経の病気 > 脳血管障害 > くも膜下出血

くも膜下出血

くもまくかしゅっけつ

概要

 脳は頭蓋骨によって外力から保護されていますが、頭蓋骨の内側では、外から順番に硬膜、くも膜、軟膜と三枚の髄膜で覆われています。くも膜と軟膜のすき間は、くも膜下腔と呼ばれていますが、ここには、脳脊髄液という脳を循環している透明な液体と、脳動脈や脳静脈が存在しています。くも膜下出血とは、このくも膜下腔に出血を起こした状態を言います。原因としては、くも膜下腔を走行する動脈の壁の一部が瘤(こぶ)のように膨らんだ脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)の破裂が大部分ですが、その他、血管奇形や外傷なども、くも膜下出血の原因となりえます。脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血は死亡率が高く、約半数の方は即死あるいは昏睡状態におちいり、辛うじて病院に搬入されて最善の治療を受けたとしても、病前の状態で社会復帰がかなうのは、約25 %にすぎない恐ろしい病気です。男性より女性に多く、40歳以降に多く見られ、加齢に伴って発症率は増加します。破裂を起こす前段階の脳動脈瘤(未破裂脳動脈瘤)については、脳動脈瘤に関する箇所で解説します。

図1

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症状

 典型的には (1) 突然起こる (2) バットで殴られたような激しい頭痛で、今まで経験したことがない強烈な痛みが起こります。大部分が吐き気や嘔吐を伴い、意識が朦朧(もうろう)とする、意識を失うといった症状を起こすこともあります。特に (1) の突然起こるというのは重要で、患者さんは、「何時何分何秒に」とか「○○をしようとした時に」など、その瞬間を自覚されておられることが多いです。出血の程度にもよりますが、約30%の人が初回破裂で死亡するといわれています。一方、くも膜下出血の発症前に、警告症状として、突然の頭痛を何回か経験する場合があります。ズキズキする頭痛で吐き気を伴うことが多く、1~2日持続し、本人にとっては非日常的な頭痛であっても、最終的には見逃される場合があります。これは動脈瘤からの微小な出血による頭痛と考えられており、危険なサインです。またまれですが、くも膜下出血の出血量が少ない場合、軽い頭痛のみで上記のような典型的な症状がなく、"風邪"と思い込んで様子をみてしまう方も中にはいらっしゃいます。脳動脈瘤で解説した脳神経症状があるかないかも、重要な診断ポイントです。

診断

 くも膜下出血を疑った場合、まず頭部CTを行います。しかし、出血が少量の場合や発症から日数が経過している場合には、頭部CTで診断が難しい場合もあります。その時は、腰椎穿刺で脳脊髄液を採取し、血液が混ざっているかどうかを調べる必要があります。MRI検査を行えば、微小なくも膜下腔の出血を検出できますが、すべての医療機関で昼夜を問わず施行できる検査ではありません。
 くも膜下出血の診断がなされた場合、出血原因(85%は脳動脈瘤破裂)を探すために、血管の検査を行う必要があります。MRAは、造影剤やカテーテルを使わず脳血管を観察できる検査法ですが、治療法を決めるために必要な詳細な検討を行うためには、CT 血管撮影や脳血管撮影を行う必要があります。これらの検査は、脳動脈瘤の説明で解説してあります。

図2

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治療

 くも膜下出血は脳の病気です。しかしながら、約半数が即死あるいは昏睡状態に陥ることからも、全身に大きな影響を及ぼす疾患でもあるのです。心電図で異常が起こったり、心臓の動きがたこ壷のような異様な動きになったり、血管から肺に水が滲み出てしまう肺水腫を起こしたり、くも膜下出血の初期治療は全身管理を含めた管理になります。呼吸状態を管理し、血圧や心拍などの循環状態を安定させるためには、熟練した全身管理の技術が必要となります。
 出血した脳動脈瘤は、病院に搬入された時点では辛うじて止血されている状態になっています。しかしこれは、いつ何時、再び出血するかはわかりません。24時間以内(特に最初の6時間以内)に再出血を起こすことが一番多いと言われていますが、再出血を起こした場合の死亡率は約50 %、再々出血後の死亡率は約80 %以上と言われています。破裂脳動脈瘤が2~3週間以内に再出血する確率は全体で約30 %と考えられます。そこでまず行うべき治療は再出血予防です。しかし、昏睡状態やきわめて全身状態の悪い患者さんの場合には、残念ながら手術治療ができない、または適応がない場合もあります。再出血予防治療は薬では無理で、手術的治療に限られます。ただし、手術的治療の目的は、あくまでも再出血予防で、くも膜下出血そのものの治療ではありません。方法については、脳動脈瘤の説明の中で解説しました。なお、手術的治療や、検査の段階では、血圧が上がらないようにコントロールし、麻酔薬などで鎮痛し、安静を保つことを原則とします。

図3

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 くも膜下出血の最終結果は、出血を起こした時点ですべてが決まる訳ではありません。出血から4~14日後ごろに、脳血管攣縮と呼ばれる、脳の栄養血管が糸のように細くなる現象が起きる時期に入ります。この現象は、くも膜下腔に残った血の塊(血腫)が関係して生じるのですが、詳しい原因は未だに不明です。脳の栄養血管が細くなり、血流不足に陥った脳は脳梗塞になる可能性が出てくるため、大きな問題になります。可能な範囲で血圧を上げ、十分な点滴の量で血流を保ち、血液が固まりにくくなる薬剤、血管を拡張させる薬剤などを点滴したり、くも膜下腔の血腫を可能な限り洗い流す治療をしたり、様々な管理を行います。これらの内科的治療でも症状が改善しない場合には、血管内手術による血管拡張術を行う場合があります。
 ようやく脳血管攣縮の時期が過ぎる頃、水頭症という三番目の山がやってきます。くも膜下腔の血腫が、約1ヶ月の間に周りの組織と癒着した結果、くも膜下腔を流れる脳脊髄液が循環障害を起こし、ゆっくりゆっくり脳の中に溜まってきてしまう状態になるのです。典型的な症状は、認知症、歩行障害、尿失禁です。水頭症に対しては、脳内のうまく流れなくなった脳脊髄液を、腹腔あるいは心臓(正確には心房)に導く管を入れる手術 (1) 脳室腹腔短絡術(V-P シャント) (2) 脳室心房短絡術(V-A シャント) (3) 腰椎くも膜下腔腹腔短絡術(L-P シャント) などが行われ、適宜患者さんの状態に応じて使い分けています。

慶應義塾大学病院での取り組み

  • 救急部、神経内科、放射線科、麻酔科、中央手術部などと連携し、救急搬入された患者さんの中から、くも膜下出血が疑われる方を的確に診断、全身管理を含めた治療が24時間365日可能な診療体制を築いています。
  • 手術の安全性と確実性を向上させるため、手術中に脳機能を確認するモニター、超音波ドップラーや術中血管撮影を用いた脳血流および動脈瘤消失の確認、神経内視鏡による動脈瘤の奥や裏など顕微鏡では見えない部位の確認、などを行っています。
  • 動脈瘤を処置するために頭蓋骨底部の骨を削る必要がある症例では、頭蓋底外科手術と血管内治療の技術を駆使して、安全かつ的確な手術を行っています。
  • 巨大脳動脈瘤など、治療が困難な動脈瘤に対しても、頭蓋外の動脈を頭蓋内の動脈に吻合するバイパス手術を併用した手術的治療法を行っています。
  • 動脈瘤治療のみならず、脳血管攣縮に対しても積極的に血管内治療を取り入れています。
 

さらに詳しく知りたい方への書籍とwebサイトの案内

「すべてのブレインスタッフのための脳動脈瘤臨床」(魏 秀復著 メディカ出版)
脳動脈瘤の診療に携わるすべての医療スタッフのために書かれた最新の書籍です。脳動脈瘤に関する34症例を取り上げ、その治療・手術を豊富な画像を添えてわかりやすく解説してあり、手術DVDも付いています。

「社団法人日本脳神経外科学会」ホームページの脳神経外科疾患情報ページ外部リンクには、脳動脈瘤の基本的な知識がわかりやすくまとまっており、参考ホームページの一覧も掲載されています。

脳動脈瘤のいま~くも膜下出血の原因、脳動脈瘤外部リンク」は脳動脈瘤全般に関する国内外からの情報サイトです。患者さんの体験談も掲載されています。

2009年に発表された脳卒中治療ガイドライン外部リンクには現在のスタンダードと考えられる治療が紹介されています。

文責: 脳神経外科外部リンク
最終更新日:2011年12月28日

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