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非結核性抗酸菌症

ひけっかくせいこうさんきんしょう

概要

非結核性抗酸菌は、結核菌と同じ抗酸菌に属しますが、結核菌ではありません。そのため非結核性抗酸菌(抗酸菌であるが結核に非ず)、英語ではnon-tuberculous mycobacteria (略してNTM)と呼ばれます。NTMは土壌、水系、食物、動物(家畜を含む)などに生息しています。現在、約150種類が知られており、そのうち我が国で人に病気を起こす主な菌は約10種類です(図1)。

図1.抗酸菌群の分類

図1.抗酸菌群の分類

感染経路としてNTMの吸入による呼吸器系からの感染と、NTMを含む水や食物を介する消化器系からの感染があるといわれています。リンパ節、皮膚、骨・関節に病変を作ることもありますが、最も病変ができやすいのは肺です。かつては結核や肺に病気を持つ人が起こしやすいといわれていましたが、近年、世界各地で肺に病気がなく、免疫力も正常な人にNTMによる肺感染症が増加していると報告されています。NTMは結核菌と異なり、人から人へ感染しません。経過や胸の画像検査で結核と区別できる場合も多いですが、菌の名前が分かるまでの数日間は結核菌と区別がつかず、ひとまず結核として対応しなければならない場合もあります。また結核として治療を開始される場合もあります。肺疾患としては、我が国ではMycobacterium avium complex(略してMAC)菌による肺MAC症が約70%、Mycobacterium kansasii(カンサシ)による肺カンサシ症が約20%です。肺カンサシ症は結核と区別がつかないことも多いですが、特に増加傾向はなく治療によく反応します。一方、我が国で最も患者数の多い肺MAC症は増加傾向にあります。特に気管支を中心に病変を作る肺MAC症が中年以降の女性に増えていますが、最近若年者にも見つかっています。気管支拡張症、慢性気管支炎といわれてきた患者さんの中に、痰の中の菌を調べるとMAC菌が見つかり肺MAC症と診断されることがあります。以下、肺MAC症について説明します。表1にポイントをまとめました。

表1. 肺MAC症の患者さんの注意点

自覚症状がなくても、完全に治すためには定期的な通院が必要です。経過観察中でも最低半年に1度は受診しましょう。病気が進行すると体重が減ることがあるので、定期的に体重を測定しましょう。
血痰が出ることがありますが、必ずしも病状が進行、悪化しているとは限りません。血痰が出た時には受診しましょう。
胸部の画像検査(エックス線やCT検査)も重要ですが、喀痰検査は病状を把握するために最も重要です。
治療が開始されたら、薬を指示通り、確実に内服することが重要です。この点は結核など治療期間の長い他の感染症と同様で、治療を成功させるために大切な点です。
副作用で注意を要するのはエタンブトール(黄色い錠剤)による視神経障害やストレプトマイシンやカナマイシンによるふらつきや聴力障害です。五感に関わる障害なので十分に留意しましょう。日常の生活で異変を感じたら主治医や眼科、耳鼻咽喉科の医師に相談しましょう。
人から人にはうつりませんが、咳や痰のあるときにはマスクをしましょう。
菌が住みつきやすいシャワーヘッドなどを定期的に掃除しましょう。


症状

肺MAC症では咳、痰などの呼吸器症状を呈する場合もありますが、症状はなくても偶然に検診の胸部レントゲンやCT検査で異常を指摘されたり、以前から指摘されていた影について原因を調べているうちに診断されることもあります。気管支に病変を作るので、病気の重さとは関係なく血痰が出ることもあります。結核症でよくみられる発熱、寝汗などのないことが多いですが、病気が進行すると咳や痰に加えて全身倦怠感や体重の減少(たとえば1年で5kg減)がみられることがあります。しかし肺MAC症に特徴的な症状はありません。

診断

近年、画像診断法の進歩と、胸部CTの普及により、症状がなくても非結核性抗酸菌によると考えられる初期の病変が発見されるようになりました。そのため2008年に、日本結核病学会の非結核性抗酸菌症対策委員会と日本呼吸器病学会感染症・結核学術部会が合同で新たな診断基準を発表しました。その結果、臨床症状(咳、痰、血痰、発熱、など)がなくても、肺MAC症を疑う画像所見があり、MAC菌が検出されれば、肺MAC症と診断できるようになりました。しかし、MAC菌は環境にいる菌なので、1回の検出だけでは不十分であり、診断するには最低2回は菌を見つけることが必要です。新しい診断基準により、今後ますます患者さんが増加すると予想されます。また、痰が出ない場合には、濃い(3%程度)食塩水を吸入し咳を起こして痰を採ることがあります(誘発喀痰)。喀痰は1日程度なら冷蔵(4℃)保存できますので(冷凍しないでください)、所定の容器に痰を採って冷蔵庫に保管すれば次の日に検査に出せます。それでも痰がとれない場合には、気管支鏡検査を行ない詳しく調べることがあります。

治療

治療には複数の薬を用いた化学療法が行なわれますが、有効な薬剤は限られており、治療の開始時期や終了時期などに定まった基準がなく、治療が難しい病気です。一般的に10年、20年の経過をたどり、進行もゆるやかで、日常生活に支障がない例も多く、治療をしなくても痰に菌がみつからなくなったり、何年もレントゲンが変化しない患者さんもいます。しかし年単位で少しずつ進行していく例が多いようです。画像で空洞(肺組織の一部が病気で崩れて穴があいた状態)がみられる場合、過去の画像と比較して明らかに悪くなっている場合、痰から多数のMAC菌がみつかる場合などでは治療を開始しますが、多くの場合には緊急性がないので患者さんの背景をよく理解し、治療内容、副作用や定期的な画像や喀痰検査等の重要性を理解した上で治療を開始することが重要です。患者さんには高齢者が多く、薬の副作用も心配なので病状によっては治療をしないで経過観察する場合もあります。

治療薬

代表的な治療薬はクラリスロマイシン(CAM)とエタンブトール(EB)で、この2種類の薬に、リファンピシン(RFP)を加えて3種類の薬で治療を行ないます。また病状によってストレプトマイシン(SM)、カナマイシン(KM)などの注射剤(筋肉注射)を使用する場合があります。中でもCAMは治療の要となる薬です。また2008年10月より、RFPと同じリファンマイシン系の薬であるリファブチン(RFB)が使用可能になりました。副作用にはアレルギー反応(発疹、発熱など)や肝臓や腎臓への影響、血小板減少や白血球減少などがありますので、定期的な受診と血液検査が必要です。その他に特徴的な副作用としてEBによる視神経障害、RFBによるぶどう膜炎(眼の副作用)、KM、SMによる第8脳神経系への作用によるふらつき(平衡感覚異常)や聴力低下(聴覚異常)、など五感に関係する副作用があります。日頃から新聞や本、雑誌の見え方に注意したり、階段などでのふらつき、耳の聞こえ方、などに注意します。大切なことは治療を開始したら服薬を確実に継続すること、副作用と治療効果を判断するため定期的な受診(内科、眼科、耳鼻咽喉科)と検査(画像検査、血液検査、喀痰検査など)を行なうことです。治療期間は定まっていませんが、一般的に年単位の治療になります。

外科療法

病変の形状、広がり、排菌状況などによっては患者さんの年齢、基礎疾患、全身状態、肺機能(肺の余力)などを総合的に判断して主病巣を切除することがあります。2008年に日本結核病学会非結核性抗酸菌症対策委員会から手術に関する考え方が示されましたが、手術経験の豊富な医師への相談が望ましいと思われます。

生活上の注意

人への感染性がないので日常生活上特別な注意点はありません。糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病がなければ特に食事の制限もありません。非結核性抗酸菌の生息場所として土壌、水系がありますが、自宅内では菌の住みつきやすい場所(風呂場、シャワーヘッドなど)を清潔に保つように留意します。この疾患を完全に治すことは難しく、経過観察が必要ですので、診断された場合には通院不要と判断されることはありません。自覚症状がないまま悪化する場合もあるので、症状がなくても通院を中断しないことが重要です。この疾患の経過を予測する便利な指標はありませんので、最低数ヶ月から半年に1度は受診することが大切です。

文責: 呼吸器内科外部リンク
最終更新日:2018年2月13日

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