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縦隔腫瘍

じゅうかくしゅよう

概要

縦隔とは、おおまかに言えば胸の中の心臓と肺を除いた部分の事をさし、縦隔腫瘍とはその縦隔内に発生する腫瘍のことをさします。縦隔の中で発生する部位によって特徴があるので、前縦隔、中縦隔、後縦隔または上縦隔に分けて扱っています。(図1)それぞれの部位に特徴的な病変を以下に示します。

  1. 上縦隔:甲状腺腫、神経原性腫瘍、リンパ性腫瘍(悪性リンパ腫(ホジキン病、非ホジキンリンパ腫)、キャッスルマン病)、心膜嚢胞など
  2. 前縦隔:胸腺腫瘍(胸腺腫、胸腺癌、胸腺カルチノイド)、胸腺嚢胞、胚細胞性腫瘍(成熟奇形腫、未熟奇形腫、セミノーマ、胎児性癌、卵黄嚢癌、縦毛癌など)、リンパ性腫瘍、甲状腺腫など
  3. 中縦隔:気管支嚢胞、心膜嚢胞、リンパ節腫大(サルコイドーシスなど)、リンパ性腫瘍など
  4. 後縦隔:神経原性腫瘍(神経鞘腫、神経線維腫、神経節細胞腫など)、気管支嚢胞、食道嚢胞など
  5. その他:線維(肉)腫、脂肪(肉)腫、平滑筋(肉)腫、横紋筋(肉)腫、血管(肉)腫、軟骨(肉)腫、骨(肉)腫など

上記のうち最も多いのは、日本胸部外科学会の集計(2008年)では胸腺腫で以下、先天性嚢胞、神経原性腫瘍、縦隔原発胚細胞性腫瘍、リンパ性腫瘍が続きます。縦隔腫瘍全体では2006年に国内での手術は3704件で、1998年の2494件に比し年々増加傾向です。これは胸部CT検査の機会が増え、その精度が向上していることも関係していると考えられています。
縦隔腫瘍とは前述のごとく縦隔内に発生する腫瘍をさしますが、気管、食道、心臓に発生する腫瘍は各臓器別の腫瘍として分類され縦隔腫瘍から除外されるのが通常です。また他の臓器から縦隔内に転移した腫瘍や外から縦隔に入り込んでいる腫瘍も縦隔腫瘍から除かれます。

図1

図1

症状

多くは無症状ですが、以下のような症状をきたすことがあります。

  • 胸部の痛みや圧迫感
  • せき、喘鳴、呼吸困難、肺炎による発熱などの呼吸器症状
  • 上大静脈の圧迫による症状(上大静脈症候群):上半身のチアノーゼ、むくみ、呼吸困難、頭痛など
  • 末梢神経の圧迫による症状:嗄声(声枯れ)、むせ込み、呼吸困難、しゃっくり、まぶたが開きにくくなるなどの目の症状、発汗異常など
  • 脊髄の圧迫による症状:手足の麻痺や感覚の異常など
  • 食道の圧迫による症状:食べたものが胸でつかえるなど

一般に、悪性病変は良性病変よりも症状を呈する傾向がはるかに高いです。上記のうち胸部の痛みや圧迫感は最も頻度の高い症状です。縦隔臓器の圧迫による症状はほとんどの場合、悪性腫瘍に伴う症状です。
縦隔腫瘍では合併疾患による全身症状をきたすことがあります。胸腺腫の合併症として重症筋無力症は最も頻度が高く、胸腺腫の20%前後に認められます。赤芽球癆(せきがきゅうろう)は胸腺腫の1~2%に合併するとされています。低ガンマグロブリン血症の合併も稀に認めます。

診断

縦隔腫瘍は他の臓器の影と重なるため胸部X線正面写真による発見は難しく、胸部CTによる偶然の発見、時には圧迫症状が出るほどに巨大化してみつかることが多いです。それぞれ治療戦略が異なるため鑑別診断が重要となるので以下のような過程で検査を行い診断します。

  1. 年齢、性別などの問診
  2. CT・MRI、腫瘍マーカー
  3. 嚢腫か固まりとしてある腫瘍か、または良性、悪性のおおよその鑑別を行う。
  4. 悪性腫瘍が疑われ、手術で完全に切除するのが困難と考えられる場合には、治療前の組織診断(細胞の顕微鏡による診断)が必要になるため超音波ガイドやCTガイドによる針生検または、傍胸骨切開生検、胸腔鏡下生検、縦隔鏡下生検などを行います。
    また前述のように胸腺腫においては重症筋無力症、赤芽球癆、低ガンマグロブリン血症などによる全身合併症を認めることがあるのでその検査(血清抗アセチルコリンレセプター抗体価、筋電図、テンシロンテストなど)も必須です。
    悪性胚細胞性腫瘍のうちセミノーマ以外の患者さんでは90%の方で血中の腫瘍マーカー(AFPまたはβ-HCG)が高値となるので、若年男性で前縦隔に腫瘍を認める場合、これらのマーカーは必ず測定します。

治療

以下のように、治療は病因により異なります。

心膜嚢胞、胸腺嚢胞など:

基本的には経過観察です。ただし時間とともに明らかに大きくなるもの、圧迫症状を呈する場合は手術適応となります。

神経鞘腫などの良性充実性腫瘍:

基本的には手術を行います。

胸腺腫:

広範囲に浸潤している症例においては化学療法、放射線治療を行った上で切除の可能性を考えます。浸潤のないものでは摘出は容易ですが、周囲臓器に浸潤するものでは合併切除が行われます。
胸腺腫の臨床的な病期分類として正岡分類があり、周囲組織への浸潤度を考慮し手術的に判定されるものですが、手術を受けない場合は画像所見も考慮材料としています。(図2)当科ではこの正岡分類の病期を参考とし、集学的治療を行っています。I、II期に対しては胸骨正中切開による拡大胸腺摘出術。III期のうち一部では術前化学療法の後に拡大胸腺摘出術+浸潤臓器の合併切除、および術後放射線治療を行っています。IVa期ではまず化学療法を行い可能であれば、手術を行います。その後に放射線治療を行います。IVb期では主に化学療法を行っています。

悪性胚細胞性腫瘍:

セミノーマは化学療法がよく効くタイプの腫瘍です。当院ではBEP療法(ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチン)による化学療法を行い、完全寛解する場合が多く、その場合は経過観察します。腫瘍が残っている場合に手術や放射線治療も考慮します。セミノーマ以外ではまずBEP療法を行い、血中腫瘍マーカーが正常化した場合は手術を行います。腫瘍マーカーが正常化しない場合は化学療法を継続します。

悪性リンパ腫:

化学療法が主体となります。
縦隔腫瘍の手術のアプローチは胸骨正中切開、肋間開胸、胸骨正中切開+肋間開胸、胸腔鏡が代表的ですが、腫瘍の場所、大きさ、周囲組織への浸潤の程度などの要因により最適のアプローチを決定します。

図2

図2

慶應義塾大学病院での取り組み

  • 縦隔悪性腫瘍の治療にあたっては可能な限り組織診断を行い集学的治療を行っています。
  • 先天性嚢胞や神経原性腫瘍の一部では胸腔鏡下手術を第一選択として行っています。
  • また、前縦隔に対するアプローチ法として胸腔鏡を用いてI期胸腺腫、重症筋無力症例の一部に対して拡大胸腺摘出術を行っている。従来の胸骨正中切開法に比較し皮膚切開創は体の側面にあり小さいです。

さらに詳しく知りたい方への書籍とwebサイトの案内

「呼吸器腫瘍学ハンドブック」(医事出版社)
縦隔腫瘍を総論、各論にわけ解説しており、基本的な知識がわかりやすくまとまっています。

「呼吸器病New Approach 9 気道・肺の腫瘍」(メジカルビュー社)
縦隔腫瘍の各疾患に対する治療方針がわかりやすく解説されています。

「呼吸器病学総合講座」(メディカルレビュー社)
縦隔腫瘍に対する最新の臨床的情報が詳細に書かれています。

文責:外科学(呼吸器)
記事作成日:2009年2月1日
最終更新日:2011年12月28日

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