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外傷性脳損傷のリハビリテーション

がいしょうせいのうそんしょうのりはびりてーしょん

概要

交通事故などの外部からの衝撃によって脳にダメージを受けることを外傷性脳損傷といいます。ここでいう外傷とは頭部への打撲のように直接に外力が加わり脳出血やくも膜下出血のように画像ではっきりとわかるような損傷を起こすものから、激しいスピードで脳が揺らされることにより間接的に脳が衝撃を受け、画像などでは判別の難しい微小な傷になるものまで様々なものがあります(表1)。受傷原因としては若い方では交通事故や労働災害が、高齢者では転倒、転落などが挙げられます。
この脳の損傷によって起こる症状は、その損傷を受ける部位により様々ですが、代表的なものに脳卒中のような麻痺や感覚障害、手足が震えうまくコントロールできなくなる失調症状、記憶障害や言語、注意力の低下などの高次脳機能障害があります。ただし一般に頭部外傷では脳の一部分の限局した場所のみがダメージを受けるということは少なく、受傷時の脳挫傷・低酸素・血腫による圧迫などによりダメージは広範にわたることが多いです。これは、比較的病気の部位が限局している脳梗塞や脳出血と異なる点です。そのため、頭部外傷で最も多い症状は「広範な前頭葉障害による高次脳機能障害」になります。

表1.頭部外傷の分類

1.頭蓋骨骨折

円蓋部骨折

頭蓋底骨折

2.局所的脳損傷

急性硬膜外血腫

急性硬膜下血腫

脳挫傷

外傷性脳出血

3.びまん性脳損傷

軽症脳震盪(のうしんとう)

古典的脳震盪

びまん性軸索損傷


症状

【頭部外傷の障害の特徴】

外傷性脳損傷の障害の特徴としては脳卒中などの疾患に比べ運動麻痺よりも高次脳機能障害が目立ちやすいこと、脳の広範な障害によるもののため様々な障害が混在することです。また、受傷される方が比較的活動的な若年の方が多いため復職や復学といった社会生活への復帰が問題になること、障害の回復がゆるやかで長期間にわたることが挙げられます。
頭部外傷では障害を受ける部位によりさまざまな障害が出現する可能性があります。運動障害としては、運動麻痺・嚥下障害・失調症・構音障害などが遭遇しやすい症状です。また、頭部外傷では高次脳機能障害をきたすことが多くあります。運動麻痺などは脳卒中の項を参考にしていただければと思います。以下に頭部外傷で比較的認められやすい高次脳機能障害について説明します。

《頭部外傷で認められやすい高次脳機能障害の症状》

  1. 覚醒度低下
    意識が低下し、声をかけたときの反応などが弱くなる状態です。覚醒度が低下していると外見上は睡眠時間が長くなったり、呼びかけや刺激に対する反応が悪くなるなど常にボーとしていることが多くなります。このような状態で物事を行おうとすると健常者よりも過度な労力を要することとなります。疲労の蓄積が起こりやすくなったりすることがあります。また、覚醒度低下により他の高次脳機能障害などが見つけづらくなります。
  2. 脱抑制症状
    これは気分や感情のコントロールができない症状です。些細なことで非常に興奮しやすくなったり、周りの人に暴言を吐いたり暴力を振るったりするといった症状がよくあります。また人によっては些細なことで泣き続けたり、笑うのが止められなくなったりと、感情のムラが大きくなり、なおかつそれを自分自身で抑えることのできない状態となります。
  3. 自発性の低下
    覚醒度の低下と似ていますが、これは起きて目はしっかり開いてはいるけれども自ら何かをしようとする意志が現れない症状です。具体的には、自分から話しかけようとしない、何か動作をしようとしない、なにもやる気が起きないという症状が認められます。但し、だからといってできないわけではなく、他人が口で声をかけてあげると、自分の力で普通に物事を行えることもあります。
  4. 注意力の低下
    注意力が傷害されると何かのひとつのものに対して集中することができなくなったり、また一度何かに注意を向けると別の刺激があってもその注意を移すことが難しくなったりします。よそから見ているとぼんやりしている、あきっぽい、人の話を聞かない、落ち着きが無いといったふうに見えることがあります。
  5. 記憶障害
    これは最も高頻度に見られる症状です。記憶障害の主なものとして、何年も前のことは覚えているけれども、新しく遭遇したものやその意味などを覚えていくことが困難となったり、目の前にある問題を処理する手続きがわからなかったりする記憶障害があります。具体的には、待ち合わせ時間を覚えていられなかったり、新しくあった人の顔を覚えられなかったりといったことがあります。
  6. 遂行機能障害
    遂行機能とは何かひとつの物事を成し遂げるために計画を立て準備をし、それを実行することです。計画を立てることができない、作業を途中でやめてしまう、途中で作業を変更できない、状況に応じて臨機応変に対応できないなどといった症状を呈します。
  7. 病識の欠如
    他人から見ると、問題点が明らかであるのに、本人が病気であるという意識を持たない状態です。自身が障害をもっているということに気づかず、時にはそれを否定しようとするため、結果的には必要なリハビリテーションを続けることができなくなります。このような場合、無理に障害があることを納得させようとすると却って悪影響を与えることが多いです。

これらの中でも、脱抑制症状や遂行機能障害は周囲の方から見ると特に目立ち、時に異常行動として目に映るため本人だけでなく周囲の方々が正しい理解をもつことが重要です。
また、受傷により心理的な反応として落ち込みや悲観などといった感情の変化が強く見られることがあります。これは病的なものではなく、ごく自然な心理的な変化ではありますが、落ち込みが継続すると運動・高次脳機能のリハビリテーションに対して否定的に働きます。

治療

【リハビリテーションの流れ】

頭部外傷におけるリハビリテーションは急性期と回復期に分かれます。

1.急性期
頭部外傷の急性期では生命の危機や不安定な全身状態・意識状態などが認められ肺の損傷や手足の骨折を伴っていることが多く、集中治療室での全身管理や、二次的合併症の予防が重要となります。急性期においての目標は、当然意識状態や全身状態の安定・改善です。これが安定すれば直ちにリハビリテーションを開始します。この段階では昏睡や半昏睡状態であることが多いですがこの時期に感覚刺激を入れることが大事です。意識状態が低下している状態では感覚刺激の入力、車椅子やベッド上での姿勢・肢位(ポジショニング)、手の位置を固定する装具などを用いた良い体の位置の設定や、筋や関節のストレッチによる二次障害の予防が大事です。この中でも特に関節が硬くならないように注意を払う必要がありますし、長期間の寝たきりによる廃用症候群の予防が大切となります。また、可能であれば急性期においてもその方の障害像を正確に把握し、日常生活を安定して送るためには何が問題かを検討することが重要です。なぜなら前述したように頭部外傷では運動麻痺や感覚障害などのほかに注意力や記憶力といった"見えざる障害"が隠れていることが多々見受けられるからです。特にベッドの上で治療を受けている分には表立って目立たなくても実際に他人と会話をし、コミュニケーションをとるようになると目に付くようになるものもあります。

2.回復期
回復期においては、全身状態の安定とともにより積極的に運動障害や高次機能障害に対して回復を促していくことが大事になります。これらのアプローチには1.運動機能へのアプローチ、2.日常生活動作へのアプローチ、3.認知機能へのアプローチ、4.行動異常へのアプローチがあります。
1.と2.に関するものは脳卒中の項を参照してください。認知機能での問題の多くは、簡単な課題や一つの指示であればこなせるけれども、複数の課題を同時に行おうとすると途端にできなくなるというものが多いです。これは考える過程(思考過程)での問題であり、職業復帰や就学への障害となることが多いため積極的に関わっていくことが重要です。この状態では一度に処理できる情報量が低下し情報処理のための注意の集中が難しい状態となっているため、情報量を小さくし、自動的に情報処理が可能となるよう繰り返し練習することが大事です。例えば、単純なものから複雑なものへの課題へとすすめていったり、少ない刺激での課題から多数の刺激での課題に進めたり、慣れている課題から目新しい課題へ進めていくなどのアプローチ方法があります。
行動異常へのアプローチとしては、行動異常を引き起こす原因として疲労やストレスへの耐性の低さ、感覚の過負荷、環境コントロールの欠如、固執、洞察の欠如、記憶の欠如などが考えられます。行動異常に対するアプローチでは好ましい行動を多くする目的で行動療法が用いられることが多いです。
回復期においては認知機能障害がより重大な問題となってきます。このことは頭部外傷の一般的な予後として、初期の昏睡や外傷性の健忘が長いほど高次脳機能障害が大きく、これらの回復は意思疎通や運動能力の回復に比べ悪いためです。先に述べたように頭部外傷は若い方に多いため、学業復帰や職業復帰など社会への再統合が重要となり認知障害や行動障害が大きな阻害因子となり、経過が長くなるため退院後のリハビリテーションが必要となることが多いです。
頭部外傷のリハビリテーションの大切なゴールの一つとして、その方の運動機能・高次脳機能を必要な環境へ適応させ、社会へ再参加させることが挙げられます。ゴール設定を左右する因子としては高次脳機能障害の種類や程度、運動障害や感覚障害の種類や程度、合併症の種類や程度、行動や情緒の異常などが上げられます。

教育・職業へのアプローチ

頭部外傷はその主な原因が交通事故であり若年に多いため復学や復職の問題が重要となります。障害を総合的に判断した上で、将来的に問題となる領域を明らかにします。必要に応じて場面設定や機器などを含めた環境の改善の実施やアドバイスを行います。また、地域社会での生活を送る上で必要な買い物などの基本的技能を再獲得することも大事です。金銭管理や買い物などの基本的技能から開始し、徐々に交通機関の利用など社会への参加に必要な技能の獲得を目指すことが重要となります。

【回復の見通し】

最終的にどの程度まで回復するかは、脳損傷の程度、年齢、意識障害の長さ、記憶障害の重症度などによって変わります。頭部外傷の一般的予後では移動や意志の疎通などの回復に比べ、高次脳機能障害、行動異常などの回復は悪く最後まで大きな問題となることが多いです。特に初期の昏睡期間が長かったり、認知機能の障害が大きい場合に後遺症の程度も大きくなる傾向があります。
回復の期間においても受傷後6ヶ月以降は回復が少ないが1年までは神経学的回復が見られるなどの報告があります。また、社会性の回復に関しては10年以降も見られるといわれています。
職場復帰できるまで回復する場合もありますが、残念ながら重い後遺症が残る場合もあります。いずれにしても、長期的な見通しをつけることは容易ではありませんので、専門医の判断を仰ぐことが大切です。

慶應義塾大学病院での取り組み

リハビリテーション科では頭部外傷による後遺症として生じた運動障害や高次脳機能障害に対して、入院・外来リハビリ治療を包括的に実施し、機能回復を図ります。また、復学や復職に関しては、福祉施設スタッフや会社・学校担当者と連携をとりつつ、患者さんとそのご家族と検討していきます。

さらに詳しく知りたい方への書籍とwebサイトの案内

日本リハビリテーション医学会ホームページ 外部リンク
東京都心身障害者福祉センターホームページ外部リンク

文責:リハビリテーション医学
記事作成日:2009年2月1日
最終更新日:2014年9月8日

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