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ホーム > 病気を知る > こどもの病気 > 体表の先天異常の形成外科治療 > 眼の周りの形態異常

眼の周りの形態異常

めのまわりのけいたいいじょう

症状

眼は、見るという重要な役割を持っており、眼の周りの形態異常は視界の障害の原因となるだけでなく、精神的負担となります。眼の周りの形態異常を引き起こす原因には、1)生まれつきの形態異常(先天性眼瞼欠損・眼瞼下垂)、2)外傷後の変形、3)腫瘍切除後の変形、4)美容外科などの領域がありますが、慶應義塾大学病院では形成外科が主となり、関連各科と連携しながら治療にあたります。


たれ下がったまぶた(眼瞼下垂:がんけんかすい)

眼瞼下垂とは、正面を見たとき、まぶたが黒目にかぶさり視界が妨げられる状態です。重度の場合は瞳孔(黒目の中心)を完全に隠してしまうほどにもなります。片側、両側とも起こる場合があります。眼瞼下垂は、上まぶたを引き上げる筋肉が生まれつき未発達な先天性の眼瞼下垂と、まぶたをこする刺激や加齢により、まぶたを持ち上げる筋肉が緩んでしまう後天性眼瞼下垂とがあります。生まれつきの先天性眼瞼下垂の場合は、早期手術としてできれば1歳頃に、視力と両眼視機能(3Dで見る機能)を考慮すると少なくとも3才から小学校入学前までの手術が良いと思われます。なお、先天性眼瞼下垂、眼瞼縮小、内眼角間開大などを特徴とする「眼瞼縮小症候群(眼裂狭小症候群とも呼ぶ)」では、内眼角形成術や上眼瞼吊り上げ術などを同時に行います。入院期間は3~10日間です。当院では様々な状況と程度による違いを説明しています。

後天性のものは、まぶたを上げる筋肉の眼瞼挙筋に異常が生じたり、まぶたの中の瞼板に付着する部分が緩んだりして発症します。また、加齢による皮膚のたるみを合併するケースも多く見られます。眼瞼挙筋と瞼板とをつなぐ部分を腱膜と呼び、瞼板が外れた状態を「腱膜性眼瞼下垂」と呼びます。これはアトピー性皮膚炎・花粉症などのアレルギーにより、眼をこすったり、あるいは老化などが要因で、近年増加しているものです。また最近は、コンタクトレンズの長期装用が原因の眼瞼下垂も増えています。

後天性眼瞼下垂では視力が落ちることはほとんどありませんが、眼瞼挙筋の緊張によって眼痛を生じさせたり、交感神経が支配しているミュラー筋が緊張を続ける結果、慢性の頭痛、肩こり、不安、疲労、顎関節症を引き起こしたりすることがあります。視野を確保しようと眉毛を吊り上げて眼を開けることを繰り返すため、額に横ジワを作る傾向があります。

まぶたを挙げる筋肉の眼瞼挙筋に異常が生じる「重症筋無力症」などは難治性であり、程度に応じた術式の使い分けが重要となります。夕方になるとまぶたが重い、片目だけ疲れてくると開かないなど症状は様々で、診断に至らない症例や術後の再発で発見される例も少なくありません。

手術は、1)眼瞼挙筋短縮術、2)眼窩隔膜瞼板固定術、3)眼輪筋・前頭筋連合筋弁、4)大腿筋膜前頭筋吊り上げ、などがあり、原因と程度によって方法が異なります。眼の眼瞼挙筋が萎縮して使えない場合に大腿筋膜吊り上げ術を採用することがありますが、左右差の調整が非常に困難で手技の熟練を要します。手術の所要時間は1~2時間で、多くの場合は日帰りで、希望により1泊入院となりますが一時的に目が腫れることがあります。また、術式により数日間の入院が必要となる場合があります。眼瞼下垂症手術では再発・症状の進行により微調整を含め再手術が必要な方が多数いらっしゃいます。前回の手術瘢痕により修正が困難なケースをご紹介いただくことが多くあります。

くぼんだ眼、飛びだした眼

眼球の周りにある脂肪が少なくなると、眼がくぼみ、反対に甲状腺の機能亢進などで脂肪が多くなると眼が飛び出します。上眼瞼の筋肉の動きの調節や、脂肪の移植や切除によってこの状態を改善させます。しかし、眼球を支持する眼窩構成骨に異常がある場合には、土台となる骨の治療が必要となります。

まぶたの周りのできもの

できものが小さい場合は切除後そのまま縫い縮めますが、大きな場合にはほかの部位からの組織移植が必要になります。いずれにしても、手術後にひきつれを残さず外見上のバランスを崩さないような形成外科的な配慮が必要となります。

まぶたのひきつれ、たるみ

外傷による組織の欠損や不適切な手術により、まぶたのひきつれを残す場合があります。まぶたを閉じることができず、角膜が乾燥して痛みや充血を来し、挙げ句の果てに失明を来す場合があります。ひきつれを治した後に、必要があれば新しい組織を移植します。加齢による組織のたるみでも同様の状態となりますが、その場合はまぶたを引っ張り、皮膚の緩みを取り除くだけではなく、余分な脂肪を取り去って自然な眼の形態を回復させるようにします。

眼球をとりまく骨の骨折

眼球を支持する土台の骨が骨折すると(眼窩壁骨折)、眼がくぼみ、眼球が上を向くことができなくなり、物が二重になって見えます。骨折を治療し、骨の足りない部分には人工骨などを移植しますが、骨折の治療に終始するのではなく、手術後の傷跡など整容面での配慮が必要となります。

腫瘍(がん)切除後の変形

腫瘍(がん)切除後の変形には、口腔内粘膜・鼻腔内粘膜・耳介軟骨の移植をしたり、眼窩外装プロテーゼやインプラントを使用して義眼を装着するケースもあります。最近ではCT撮影により腫瘍の形状を予測し、術前にその形状に合わせて人工骨を作製した上で装着するなど、コンピューターシミュレーションの手法も積極的に取り入れた手術も導入されています。

眉毛(まゆげ)の形態異常

眉毛の周りの外傷やできものの切除後に眉毛がなくなってしまい、形がアンバランスになることがあります。小さな欠損では周りの眉毛をうまく利用した手術を行いますが、組織欠損が大きな場合、頭の毛を利用した移植術を行います。また、眉毛の下垂に関しても固定術を行います。

義眼床形成術

様々な原因で眼球を失った場合、義眼を使用します。先天性小眼球症や網膜芽細胞種などは眼窩(眼のくぼみ)の成長のために義眼を徐々に大きくしていかなくてはなりません。義眼を挿入する土台が狭いと装着困難となります。ほかの部位からの組織移植や組織延長術などにより義眼を入れる土台を作成します。

眼の周りの形態異常については、まずは下記の外来にてご相談ください。
担当医: 酒井成貴(火曜日の午前中)

さらに詳しく知りたい方へ

  • よくわかる子どものための形成外科 / 中島龍夫編
    大阪 : 永井書店, 2005.3

文責: 形成外科外部リンク
最終更新日:2019年1月29日

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