
小児肝移植
概要
肝臓移植とは、障害を受けた肝臓あるいは疾患のある肝臓を摘出し、提供された健康な肝臓と置き替えることです。 小児においては、胆道閉鎖症などで肝臓の状態が悪化して肝硬変・肝不全となり、保存的治療が限界となった場合や、先天性の代謝異常疾患、自己免疫性疾患、切除不能肝芽腫などに対して肝移植は治療の1つの選択肢として行われます。
日本肝移植研究会の報告によれば、日本では2017年末までに9242例の肝臓移植(うち脳死移植444、心停止移植3、生体肝移植8795)が行われています。うち18歳未満の小児は3109例でした。年間130例程度の小児肝移植が施行されています。
我が国では小児の肝臓移植は生体肝移植がほとんどであり、一般的にドナー(提供者)はご両親のいずれかであることが多く、健康状態や肝臓の状態など十分な検査を行った後に、肝臓の一部(患児の体に応じて切除範囲は異なります)が移植されます。一方で、2010年の改正臓器移植法の施行後、脳死臓器提供数も徐々に増加してきており、さらには小児優先ルールの適応もあり、今後は小児においても脳死肝臓移植が増えてくると考えられます。
治療後経過
個人差はありますが、手術後1〜2週間は集中治療管理が必要となり、約1~2ヶ月の入院期間が必要になります。
肝移植の治療成績は年々向上してきており、小児例では5年生存率は約90%、10年生存率は85%と成人症例と比べて小児症例では有意に成績が良好です。成績を左右する主な要因は、他人の臓器が移植されることにより引き起こされる拒絶反応と、拒絶反応予防のために使用する免疫抑制剤の影響で体の抵抗力が落ちることによる細菌や真菌、ウイルスなどの感染症です。
術後の拒絶反応予防に使用する免疫抑制剤は、原則として一生飲み続ける必要があります、しかし、小児においては一部の患者さんに免疫抑制剤の必要性がなくなる症例もあります。ステロイド剤は移植後半年から1年で90%が離脱できます。術後1年以降は、ほぼ通常の生活ができるようになります。
文責:
小児外科
最終更新日:2020年10月25日
