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乳房の再建

にゅうぼうのさいけん

症状

乳房再建とは、乳がんの手術などで失われた乳房を、手術によりもう一度造ることをいいます。女性にとっては、年齢に関わらず乳がんなどで乳房を失ってしまうことによる精神的苦痛は察して余りあるものがあります。ご高齢の方でも、乳がん手術後の患者さんたちは、「友達と温泉に行きたい」「スポーツをしたい」「胸のあいた洋服を着たい」などの理由で乳房再建を行われる方も数多くいらっしゃいます。 このような乳房再建ですが、単なる乳房の高まりを造るだけでは、満足の得られる結果とはなりません。失われた乳房をできるだけ自然な形で造り上げることで、患者さんの心の負担を軽くすることを目標にしています。

診断

再建する乳房ですが、乳がんの手術方法にとって様々な方法があります。この十数年の間に乳がんの手術方法も進歩してきました。乳がんの手術方法は下の方法があります。それぞれの手術後の乳房の変形に対して乳房再建術をおこないます。切除の詳細は乳腺外科の項をご覧ください。

  • 胸筋合併乳房切除術(定型的乳房切断術、Halsted手術)
    乳房すべてと、大胸筋、小胸筋を切除します。このため、肋骨の形が外から浮き出て見えるような変形が残ります。以前はこの手術方法が主体でしたが、現在では、進行がんのような場合を除き、あまり行われることはありません。
  • 胸筋温存乳房切除術(非定型的乳房切断術)
    乳房は全部切除されますが、前胸部の皮膚と、胸筋は温存されます。いくつかの方法がありますが大胸筋に加え小胸筋も残すものをAuchincross法といいます。この方法では筋肉を切除しないため、胸筋合併乳房切除術に比べて前胸部の肋骨の浮き上がりは比較的少ないです。
  • 乳房温存術
    しこりとその周囲の正常乳腺組織を乳頭を中心にして扇型に切除する乳房扇状部分切除術、しこりとその周りの正常乳腺を含めて、部分的にまるく切除する乳房円状部分切除術があります。残された乳腺に対しては術後に放射線療法が行われることが多いです。この手術方法では乳腺の切除は部分的なのですが、切除される場所、大きさによっては乳房の変形が目立つことがあります。
  • 皮下乳腺全摘術
    乳がんが接している皮膚を一部切除しますが、できる限り健康な皮膚と脂肪を残して乳腺を全部摘出する方法です。乳管がんなど周囲組織への浸潤は少ないものの、乳管の中への進展が強いものはこの術式になることが多いです。

治療

一次再建と二次再建

乳房再建術は大きく分類すると一次再建と二次再建に分けられます。一次再建とは乳がんの手術の際に同時に乳房を再建する方法です。二次再建は乳がんの手術とは遅れて別の時期に乳房を再建する方法です。一次再建は、患者さんの立場からすると、1度の手術で乳がん切除と再建が同時におこなえるという利点があります。しかし、乳がんの再発の可能性のある患者さんや術後の放射線照射が必要になる場合は二次再建が望ましいです。これらのことを考慮して、それぞれの患者さんに適した手術時期を選択すべきであると考えています。

自家組織による再建

患者さん自身の体の一部の組織を胸に移植する方法です。ご自分のほかの部分から、皮膚と脂肪と筋肉を取ってきて移植します。大きく分けて「腹直筋皮弁」を用いた再建と「広背筋皮弁」を用いた再建の2つの方法があります。乳房を造るほど大きな組織は、ほかのところから持ってきて移植しても、血のめぐりがないと、新しい場所にうまくくっつくことはありません。「腹直筋皮弁」も「広背筋皮弁」も筋皮弁という言葉がついていますが、この筋肉は移植した後に動かすことを目的にしたものではなく、この筋肉の中に血液が豊富に流れ、その上の脂肪や皮膚に十分な血のめぐりを送り届けるためのものです。

「腹直筋皮弁」と「広背筋皮弁」が多く使われている理由は、スポーツ選手や職業の問題がなければ、これらの筋肉を別のところに移しても日常生活には問題がないことと、十分な量の組織を移動させることができることによります。

  • 腹直筋皮弁
    腹直筋皮弁とは、いわゆる腹筋の片側を使って、下腹部の脂肪と皮膚を胸に移動させる方法です。上方に血管がつながった腹直筋に皮膚と脂肪をのせてみぞおちのところまで持ち上げ、胸の方へ反転して、筋肉と脂肪の厚みで乳房を再建する方法です。手術の後におなかの脂肪が取れてすっきりするという副産物もありますが、逆に手術の後下腹部の筋肉周囲の強度が弱くなって、おなかが出っ張ることもあります。また胃の付近が締め付けられる感じがしばらく続くことがあります。将来妊娠出産の予定のある場合は、他の方法を考えられた方が良いでしょう。


  • 広背筋皮弁
    懸垂をするときなどに用いる背中の広い筋肉を用います。背中の皮膚は斜めに切り、まわりの脂肪も一緒につけて胸に持ってきます。健常側があまり大きな方には、使えないこともあります。広背筋皮弁採取の際、周りを剥がす範囲が広くなりますので、手術の後にしばらく皮膚の下に体液が溜ることがあり、外来で採取しなければならなくなることがあります。
  • 遊離皮弁を用いる方法
    腹直筋皮弁の筋肉をできるだけ犠牲にしないで、皮膚や脂肪に分布している血管とその周囲の最小限の組織を顕微鏡を使ってほじって行き、やはり顕微鏡を使って、胸にある血管と顕微鏡でつなぐ手術です。腹直筋以外には、臀部の脂肪を用いる場合もあります。うまくいった場合は、手術の後の違和感もほとんどなく、非常に良好ですが、顕微鏡で血管をつながなければなりませんので、血管が詰まってしまい、移植した組織がだめになってしまう可能性もあります。

以上の自己組織を用いた再建は、健康保険が適用になっています。入院期間は2週間から4週間程度、必要になります。

人工物を用いる方法

再建する予定の乳房の皮膚の下に組織拡張器(ティッシュ・エキスパンダー)というシリコンでできた風船を入れます。傷が落ち着いたあと、皮膚の余裕をみながら2週間おきくらいにエキスパンダーの中に少しずつ生理食塩水を注入し、皮膚を膨らませてゆきます。皮膚を膨らませ終わってから6ヶ月以上たったところで、シリコンでできた人工物に入れ替えます。自分の組織で作るのと違い、他のところの傷ができないことが利点です。しかし、下垂した状態を作るのは困難であること、感染に弱いこと、ある程度周りの組織が固くなるといった欠点もあります。また、異物が入っていますので違和感を訴える方もいらっしゃいます。

対象とならないのは定型乳房切断術が施行されており、胸の組織が薄い場合です。これは、組織拡張器を膨らませてゆくと次第に胸の皮膚が薄くなってゆきますので、薄い胸の皮膚直下に挿入した場合、ティッシュ・エキスパンダーで皮膚を膨らませてゆく途中や、人工物に入れ替えた後に、人工物が露出してしまう恐れがあるからです。


乳輪・乳頭再建

これらの方法で乳房の高まりを作る再建が終わってから、半年以上間をあけてから乳頭・乳輪をつくります。これもさまざまな方法があります。乳頭・乳輪は乳頭を造る予定の場所の皮膚を、紙のサイコロを作るように切って組み立てたり、反対側の乳頭に余裕がある場合は、一部を取って持ってきたりする方法があります。

再建の時期と方法

乳房再建は、上述のさまざまな乳がん手術後の患者さんに乳房を再建することが可能です。しかし、欠損の場所や大きさにより使用できる方法がある程度決まってきます。二次再建の場合は、再発の心配がなくなった時期の方が望ましいですが、患者さんの社会生活の中でのご要望との兼ね合いで決まります。

乳房再建を考えていらっしゃる患者さんはできれば乳がん手術の前に外科の担当の先生にそのことを相談されるのがよいでしょう。

慶應義塾大学病院での取り組み

上記のさまざまな乳房欠損に対して、各方法の利点・欠点をお話させていただき、最適と思われる方法を相談させていただいております。お気軽にご相談ください。

担当:貴志和生(外来:月曜午前・金曜午前)

文責: 形成外科外部リンク
最終更新日:2017年2月24日

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