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小児の血液の病気、腫瘍

しょうにのけつえきのびょうき・しゅよう

概要

血液の細胞には赤血球、白血球、血小板があります。小児の血液の病気には、免疫の異常によって白血球が減ってしまう自己免疫性好中球減少症などの白血球の病気、赤血球がこわれやすくなる溶血性貧血などの赤血球の病気、原因不明で血小板が減少する特発性血小板減少症などの血小板の病気があります。
ここでは、この3種類の血液細胞すべてが異常になり、専門医による診療が必要である再生不良性貧血と白血病について取り上げます。白血病は小児で最も多い腫瘍です(下図)。

再生不良性貧血(さいせいふりょうせいひんけつ)

ほとんどが原因不明で発症します。血液細胞のもとになる造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)の質的異常または免疫学的に造血幹細胞が傷害されることによって、骨髄で血液細胞が部分的にまたは完全につくられなくなり、赤血球、白血球、血小板が減少する病気です。このように3種類すべての血液細胞が減少する病態を汎血球減少(はんけっきゅうげんしょう)といいます。汎血球減少をきたす病気は再生不良性貧血以外にもたくさんあり、正確な診断をすることが大切です。

【症状】

赤血球が減少することによって、ぐったりして元気がない、顔色が悪い、頭が痛いなどの貧血症状がみられます。白血球が減少することによって、細菌やウィルスに感染しやすくなり発熱や感冒症状など感染にともなう症状がみられます。血小板が減少することによって、血が出やすく止まりにくい、出血斑ができるなど出血傾向がみられます。

【診断】

血液検査で血液細胞が減少していることがわかりましたら、下表に示す疾患を除外することが大切です。まず、感染症を中心に患者さんとご家族がこれまでにかかった病気や、患者さんが内服している薬剤、生活している環境について問診します。また、先天性骨髄形成不全にともなう身体的特徴がないか診察します。診察とともに血液検査で感染症や肝機能の検査を行います。

診断にもっとも重要なのは骨髄検査と染色体脆弱性(ぜいじゃくせい)検査です。骨髄検査によって白血病や骨髄異形成症候群と区別することができます。また、低身長・母指低形成・多指症などの特徴的な奇形をともなわない場合、染色体脆弱性検査によって先天性骨髄形性不全症候群と区別することができます。

【治療】

造血がどの程度障害されているかによって治療法が異なります。重症度は血液細胞の数によって下表のように分類されます。最重症~やや重症の患者さんなど、血液細胞が非常に少なく、貧血症状が出現したり、出血のリスクの高い患者さんには、必要に応じて輸血療法を行います。白血球が少ないために感染症を合併した患者さんには感染症の治療を行います。

やや重症~最重症:HLAという白血球の型が患者さんと一致する健康なきょうだいがいる場合には、骨髄移植が第一選択になります。骨髄移植を行う場合、入院期間は合併症によりさまざまですが、3か月から半年が目安となります。HLAの一致するきょうだいのいない場合には、病気の原因のひとつである異常な免疫をおさえるために、免疫抑制療法を飲み薬、点滴療法で行います。免疫抑制療法は約半年間行い、効果を判定します。免疫抑制療法が無効であった場合、免疫抑制療法を再度行うほかに、骨髄バンクでドナーがみつかれば骨髄移植という選択肢もあります。臍帯血は骨髄よりも拒絶される確率が高いため、骨髄移植が好まれますが、ドナーが見つからない場合は臍帯血移植を行うこともあります。

軽症~中等症:汎血球減少の進行または5万/μl以下の血小板減少がない場合には無治療で経過観察します。ある場合には、免疫抑制療法を飲み薬、点滴療法で行います。

白血病(はっけつびょう)

血液細胞は、赤血球、白血球、血小板からなります。赤血球は体に酸素を運ぶ細胞、白血球は感染症と戦う細胞、血小板は出血をとめる細胞です。これらの細胞は骨の中にある「骨髄」でつくられ、骨髄にいる造血幹細胞が成熟・分化して赤血球、白血球、血小板になります。この血液細胞のうち1つの細胞が異常となり、正常なコントロールを受けず増え続ける病気が白血病です。そして、増え続ける異常な細胞を白血病細胞といいます。

白血病は病気の経過により急性・慢性、そして異常となり増え続ける細胞の種類によりリンパ性か骨髄性にわけられます。小児の白血病の約95%は急性白血病であり、急性白血病の約8割が急性リンパ性白血病、2割が急性骨髄性白血病です。慢性白血病は5%程度です。

ここでは、小児の白血病のほとんどを占める急性白血病をとりあげます。

【症状】

白血病細胞が増え続けると、骨髄が占拠され、正常な血液細胞をつくることが困難となり、正常な赤血球、白血球、血小板が減少します。赤血球が減少すると、ぐったりして元気がない、顔色が悪い、頭が痛いなどの貧血症状がみられます。白血球が減少すると、細菌やウィルスに感染しやすくなり発熱や感冒症状など感染にともなう症状がみられます。血小板が減少すると、血が出やすく止まりにくい、出血斑ができるなど出血傾向がみられます。白血病細胞は、骨髄以外にもさまざまな臓器に浸潤し、その臓器の機能を低下させます。具体的な症状としては、肝臓や脾臓の肥大、骨痛や骨折、皮膚腫瘤、胸腺腫大による呼吸困難、脳脊髄に浸潤すると頭痛やけいれんなどがみられます。

【診断】

骨髄穿刺で骨髄細胞の形態、細胞表面膜マーカーの検査、染色体検査、遺伝子検査を行って、白血病の診断、白血病の種類を確定します。また、治療を決める上で、白血病細胞がどこに浸潤しているか評価をすることも重要です。そのため、全身の画像検査(CT、MRI、超音波検査など)や脳脊髄液の検査を行います。

【治療】

白血病の治療は主に化学療法からなります。化学療法は抗がん剤を経口、静脈点滴、筋肉注射して行います。白血病細胞は脳や脊髄にまで浸潤しますが、脳や脊髄のまわりの髄腔内には上記の投与法では抗がん剤が届きにくく、再発のリスクが高いために抗がん剤を背中から注射して直接髄腔内投与をおこないます。抗がん剤は白血病細胞の増殖を止め、白血病細胞を死滅させます。その一方で、抗がん剤は白血病細胞のみならず細胞増殖の早い正常の細胞にも作用するため、正常血液細胞、粘膜の細胞、皮膚や髪の毛に影響をもたらします。そのため、骨髄で白血病細胞が減少しても、正常な赤血球、白血球、血小板の増殖を妨げ、貧血、感染症にかかりやすい、出血傾向や口内炎、吐き気、脱毛などの副作用がみられます。

造血幹細胞移植は化学療法よりも治療後の晩期合併症が高頻度におきるため、難治性の白血病に限られ、その適応は化学療法の進歩とともに年々限られてきています。

治療期間は、急性リンパ性白血病で入院治療約半年から1年+外来治療1年から2年、急性骨髄性白血病で入院治療約半年から1年、造血幹細胞移植を行う場合は移植後合併症によりさまざまですが、1年前後が目安となります。

慶應義塾大学病院での取り組み

  • 白血病の治療は基本的に、白血病の種類や発症時年齢、白血球数、染色体・遺伝子の異常によって決められますが、未だ完成した治療にはなっていません。患者さん・ご家族の同意が得られれば、臨床試験に参加して、治りにくい白血病には新薬の導入や造血幹細胞移植を行ったり、治りやすい白血病にはより副作用の少ない治療を行ったりします。臨床試験に参加できない場合やより適切と考えられる治療法がある場合には、諸外国の治療法を参考に治療を行うこともあります。つねに患者さんにとって最もよいと考えられる治療法を、患者さん・ご家族と相談して選択しています。
  • 白血病をはじめとする小児がんは以前よりも治る確率が高くなったことで、最近、成長障害や性腺機能障害(不妊症、第二次性徴の遅れ)などの晩期合併症が問題になっています。慶應義塾大学病院では、白血病が治ったあとも、晩期合併症の早期発見や治療のために、小児の内分泌代謝、心臓、神経、腎臓、呼吸器、精神保健などの専門医と協力して、長期フォローアップを行っています。
  • 治療するうえで、患者さんとご家族が十分な病気と治療の理解を得ることが必要不可欠であると考えますので、患者さんご本人も含め、病気・治療の説明を十分に行うことを重視しています。また、入院中や外来治療期間でも免疫力が低く幼稚園や学校に通えない間は、訪問学級や保母さんと過ごす時間を通して社会的発達を支援できるよう心がけています。

さらに詳しく知りたい方へ

  • 「小児白血病―君の病気について知ろう」(南山堂)
    低学年の患者さんでも理解できるよう絵本形式で病気や治療の説明が書かれています。

  • 「君と白血病―この1日を貴重な1日に」(医学書院)
    病気の説明、治療や検査の効果と副作用がわかりやすく記載されています。

  • 難病情報センター外部リンク」、「がん情報サイト外部リンク
    患者さん向けのページで は病気や治療による合併症について詳しい情報を得ることができます。

文責: 小児科外部リンク
最終更新日:2024年2月29日

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