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混合性結合組織病 (mixed connective tissue disease: MCTD)

こんごうせいけつごうそしきびょう

概要

混合性結合組織病は、膠原病の一つです。英語でmixed connective tissue diseaseといい、略してMCTDと言われます(以下MCTDと表記します)。全身性エリテマトーデス強皮症多発性筋炎/皮膚筋炎の3つの膠原病のうち、2つ以上の症状が混在し、さらに血液検査で抗U1-RNP抗体という自己抗体が高値陽性となる病気です。
男女比は1:13と女性に多く見られます。発病年齢は35歳前後が最も多いですが、幅広い年齢で見受けられます。厚生労働省では、原因がわかっていない難病とされるいくつかの病気について、国の事業として年1回調査をし、医療費の補助を行っています。そのような調査の対象になっている病気のことを「特定疾患」と呼んでおり、MCTDは特定疾患の一つです。2009年に行われた調査では、全国に約9,000人の患者さんがおり、年間に約300~500人程度新たに診断されているといわれています。2013年には10,500人を超える患者さんが登録されています。
病気の原因については、他の膠原病と同様に未だわかっていませんが、遺伝やウイルス感染などの何らかの環境要因の関与が考えられています。

症状

MCTDの症状は、多くの患者さんがもつ共通症状、全身性エリテマトーデス・多発性筋炎/皮膚筋炎・強皮症を思わせる症状が混ざって出現する混合症状、MCTDに特徴的な合併症の3つに大きく分けられます。どの症状が現れるかは個人差があります。

共通症状

・レイノー現象

寒いときや精神的に緊張したときに、指先が白くなり、その後紫色に変色し、赤くなってもとの色調に戻る症状です(図1)。MCTDのほぼ全例で見られ、初発症状であることが多いです。指先の細い血管が一時的にけいれんして細くなるもので、その結果、指先の血のめぐりが悪くなり、しびれや冷感を伴います。指先に潰瘍ができることもあります。

図1.レイノー現象

図1.レイノー現象

・手の腫れ

手の甲や指が腫れぼったくなり、指輪が入りにくくなったりします。MCTDの約70%と、高い頻度で見られます。手の腫れはレイノー現象とは異なり夏でも持続しています。同様の手の腫れは強皮症でも初期にみられますが、MCTDでは全経過を通してみられることが多いです。

混合症状

・全身性エリテマトーデス様症状

多発関節痛、顔面紅斑(こうはん)(全身性エリテマトーデスの頁参照)、発熱、リンパ節の腫れ、肺や心臓を包む膜の中に水がたまる胸膜炎・心膜炎があります。腎臓の障害(蛋白尿や血尿)が起こることもありますが、腎不全などの重い状態にはなりにくいといわれています。多発関節痛は頻度が高く(約8割)、初期は関節リウマチと間違えやすいこともあります。関節リウマチのような破壊を伴う関節炎がみられることがあります。

・多発性筋炎・皮膚筋炎様症状

手足の体に近い筋肉の筋力低下が起こります。その結果、階段の上り下りがつらい、疲れやすい、重い荷物が持ち上げられなくなった、しゃがみ立ちができないといった症状がでます。MCTDでは、寝たきりになるほどの重症な状態はまれといわれています。

・強皮症様症状

強皮症のように皮膚が硬くなることがありますが、ほぼ手や指にとどまります。食道の機能が低下することもあり、食物(固形物)が飲み込みにくくなったり、胸焼けを感じるようになったりします。間質性肺炎(肺線維症)といって肺が硬くなる合併症も生じることがあり、空咳や息苦しさを感じるといった症状が出ます。

合併症

・肺高血圧症

MCTDの5~10%に見られる重い合併症です。肺高血圧症は安静時の平均肺動脈圧が25mmHg以上の病態です。心臓と肺を結ぶ肺動脈という血管の中が狭くなり、心臓に負担がかかります。自覚症状として動悸、動いた時の息苦しさ、胸の痛みがあります。症状が出たときはすでに高度の肺高血圧症が存在することが多いため、症状がない時から心臓超音波検査を行い、早期に診断・治療できるようにします。

・無菌性髄膜炎

MCTD患者さんがイブプロフェンなどの解熱鎮痛剤を使用すると、感染によるものではない無菌性の髄膜炎を誘発することがあります。理由は不明で、頻度も多くはないですが、MCTDと診断された場合は、イブプロフェン等を含む解熱鎮痛剤の使用については主治医とご相談ください。

・三叉神経障害

頻度は少ないですが、他の膠原病ではほとんど見られない比較的特徴的な症状です。顔面の神経を支配する三叉神経が障害され、顔の一部がピリピリする知覚障害がみられます。初発症状のこともあります。

検査

診断、病状把握のために下記の検査項目を行います。

・血液検査

白血球、赤血球、血小板という血液の中にある細胞が比較的高頻度に減少します。CK、LDHといった筋肉が壊れたときに上昇する数値は、筋炎症状があるときに高値となります。炎症の程度をCRPという数値でみることもあります。自分の体の成分に対する抗体を自己抗体を言いますが、抗核抗体・抗RNP抗体といった自己抗体がMCTDでは陽性になります。

・尿検査

蛋白や潜血をみて、腎臓に障害がないか調べます。

・X線検査・CT検査

間質性肺炎や胸膜炎・心膜炎について検査します。

・心電図検査

肺高血圧症があると、心臓の右半分に負担がかかっている所見が得られます。

・呼吸機能検査

呼吸機能の障害を調べます。間質性肺炎では肺の弾性力が低下するため、拘束性障害(肺活量の低下)がみられます。

・心臓超音波検査

肺高血圧症等の評価を行います。MCTDの患者さんでは症状がなくても、心臓超音波検査で肺高血圧症の有無をチェックすることが望ましく、また疑わしい場合には右心カテーテル検査などを行うこともあります。
また、病状に合わせてここに記載していない詳細な検査をする場合もあります。

診断

診断には厚生労働省研究班により作成、改訂された以下の診断基準(表1)が用いられています。1.レイノー現象、指ないし手背の腫脹、肺高血圧症の共通症状、2.免疫学的所見、3.全身性エリテマトーデス、多発性筋炎・皮膚筋炎、強皮症様症状の3つが基本になっています。

表1.MCTD診断基準(2004年 厚生労働省)

I. 共通所見

  1. レイノー現象
  2. 指ないし手背の腫脹
  3. 肺高血圧症

II. 免疫学的所見

  • 抗U1-RNP抗体陽性

III. 混合所見

  1. 全身性エリテマトーデス様所見
    1. 多発関節炎
    2. リンパ節腫脹
    3. 顔面紅斑
    4. 心膜炎または胸膜炎
    5. 白血球減少(4,000/μl以下)または血小板減少(10,000/μl以下)
  2. 強皮症様所見
    1. 手指に限局した皮膚硬化
    2. 肺線維症、拘束性換気障害(%VC=80%以下)
      または肺拡散能低下(%DLco=70%以下)
    3. 食道蠕動低下または拡張
  3. 多発性筋炎様所見
    1. 筋力低下
    2. 筋原性酵素(CK)上昇
    3. 筋電図における筋原性異常所見

診断

  1. Iの1所見以上が陽性
  2. IIの所見が陽性
  3. IIIのA、B、C項のうち、2項以上につき、それぞれ1所見以上が陽性

以上の3項を満たす場合を混合性結合組織病と診断する


治療

MCTDでは個々の患者さんで症状が異なるので、内臓病変の広がりとその重症度をきちんと評価することが重要です。そして、それに応じた薬物療法が治療の基本になります。

レイノー現象

寒い環境やストレスを避けるようにします。薬剤としては、ビタミンE製剤、血管拡張作用のあるカルシウム拮抗薬、アンギオテンシンII受容体拮抗薬、プロスタグランジン製剤などが循環改善薬として使用されます。

関節炎

消炎鎮痛剤やステロイドを使用します。破壊性の関節炎がみられる場合には関節リウマチの治療に準じて生物学的製剤を使う場合もあります。

内臓病変

軽症のものから重症のものまで、ステロイド薬の使用が中心になりますが、病状によって使用する量が異なります。胸膜炎・心膜炎などの場合は、プレドニゾロン30mg/日程度を使用し、腎炎や間質性肺炎の急性増悪(症状の悪化)、重症筋炎、血小板減少症など重症例に対してはプレドニゾロン1mg/kg/日(40~60mg/日)程度の大量ステロイド療法を必要とします。効果が不十分な場合はステロイドパルス療法を行います。またステロイドに加えて免疫抑制剤を使用する場合もあります。

肺高血圧症

MCTDの肺高血圧症の治療は、基本的には特発性肺動脈性肺高血圧症の治療を行い、肺血管拡張薬であるプロスタサイクリン製剤やエンドセリン受容体拮抗薬、ホスホジエステラーゼ5阻害薬を使います(「肺高血圧症・肺性心」の項参照)。MCTDの肺高血圧症では免疫抑制療法に効果がある場合があります。免疫抑制療法が効きやすい症例として、肺高血圧症の診断時あるいは増悪時に発熱、紅斑、腎炎、低血清補体価など疾患活動性を伴う、もしくは、肺高血圧症が進行性の時が知られています。
程度が重く、心不全を起こした場合は、酸素療法や強心薬、利尿薬が使われます。

生活上の注意

  1. 禁煙しましょう。タバコ中のニコチンは血管を収縮させて血のめぐりを悪くし、レイノー症状を悪化させます。また、タバコは肺の症状も悪化させます。
  2. ストレスや寒い環境は、レイノー症状を悪くさせるので避けましょう。寒い時は手袋や靴下で保温しましょう。
  3. 紫外線を避けましょう。
  4. 飲み込み時のつかえ感があったり、検査で食道運動が低下していると言われたときは、なるべく消化のよいものを食べるようにしましょう。
  5. 疲労やストレスが病気の勢いを悪化させることがあります。規則正しい生活を心がけましょう。
  6. ステロイドをはじめ、内服薬は決められた用法で確実に内服しましょう。
  7. 外来は定期受診を怠らないようにしましょう。
  8. ステロイドを内服されている方は、感染にかかりやすくなっておりますので、手洗いうがいを心がけましょう。

慶應義塾大学病院での取り組み

  1. 肺高血圧症については、心臓に負担のかかる合併症であることから、当科では特に重視しています。循環器内科の専門医と共同で精密検査を行い、個々の患者さんの病状に応じた最適な治療法を選択いたします。
  2. 自己抗体や血小板減少については、大学病院という特徴を生かし、通常の医療機関ではできない、研究室レベルの専門的な検査法を行うこともあります。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: リウマチ・膠原病内科外部リンク
最終更新日:2017年2月23日

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