アルコールと薬の相互作用について
アルコール摂取時にくすりを服用してはいけないの?
よく、アルコールを飲用していると「麻酔がかかりにくい」とか「薬物の効きが悪い」などどいわれています。また逆に感冒剤を服用すると薬が効きすぎることが報告されています。
アルコールの摂取によって作用が増強または減弱したり、予期せぬ副作用が現れる可能性があるため、薬を服用する際には、アルコール類は避けてください。
どうして?たとえばどんな薬?
アルコール(エタノール)の代謝と薬の代謝
- 肝臓においてアルコールの代謝と薬の代謝が競合する場合があります。
体内に取り込まれたアルコールの90~98%は、肝臓においてアルコール脱水素酵素(ADH)およびアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)によって代謝されて、炭酸ガスと水になり主に尿中に排泄されます。しかし、一部は、非アルコール脱水素酵素系であるミクロソーム-エタノール酸化系(MEOS)により代謝され、アルデヒドになります。MEOS系は、アルコールの常飲により強まります。MEOS系には、薬物の代謝系と同様のチトクロームP450という物質が関与しており、アルコールはこのチトクロームP450を介する薬物の代謝を抑制するといわれています。したがって作用が増強されます。また、アルコール常飲者の場合や代謝物に薬効がある場合などは、逆に作用が減弱する場合もあるので、注意が必要です。 - アルコールの代謝を阻害し、二日酔い状態になります。
一部のセフェム系抗生物質や抗酒剤は、アルコールの代謝酵素のアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)を阻害します。その結果、血中にアセトアルデヒド(二日酔いの原因)が蓄積し、顔面紅潮、心悸亢進、血圧降下等の不快な症状(ジスルフィラム症状)を起こします。これらの症状の発現は用量依存的に起こります。15mlのエタノール摂取でも発現し、これ以上の摂取は致死的となります。 - アルコール自体の作用(中枢神経抑制作用や血管拡張作用)により、作用が増強されます。
催眠鎮静剤、抗不安剤、抗精神病剤、抗ヒスタミン剤(めまい、頭痛、呼吸の抑制等)
降圧剤(たちくらみ、起立性低血圧誘発) - そのほかに血糖降下剤は血糖値が下がりすぎて、昏睡状態になったり、精神障害を起こし、鎮痛剤は胃腸の出血を起こしやすくなることがあります。
アルコール含有製品
一般的にアルコールというと、ビール、ウイスキー、ワイン、日本酒のことを想起しますが、このような酒税法の課税対象になる酒類はエタノールを1%以上含むものをいいます。しかしその他にもアルコールを含む物があり、無意識のうちにアルコールを摂取してしまいますので注意が必要です。特に、医薬品として市販されているドリンク剤は課税対象除外のため、比較的高濃度のアルコールを含有しているものがあります。
文責:薬剤部
最終更新日:2018年3月5日