概要
経口胆道鏡(POCS:peroral cholangioscopy)とは内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP:endoscopic retrograde cholangiopancreatography)下に、胆管(や膵管)に細長い管状の内視鏡を挿入し、精細な画像を得る方法です。これまでは造影剤の分布や超音波像でしか確認できなかった胆管の内腔の精密画像によって多くの情報が得られます。特に胆道腫瘍については良性なのか悪性なのか判断するとき、また悪性であればどこまで病変が及んでいるか,さらには組織採取などに威力を発揮します。すなわち、手術を行うかどうかの決定に有用です。また後述のように巨大な総胆管結石などの従来の治療法では採石が困難であった症例において,この経口胆道鏡下に電気水圧衝撃波胆管結石破砕(EHL:Electronichydraulic lithotripsy)を用いることで結石の破砕および採石を行うことが可能になります.
所要時間
入院の上で施行します。鎮静剤を使用して内視鏡を施行し、検査時間は60分ほどです。
検査を受ける前に
朝食を食べず、空腹時に検査を行います。基本的にはERCPに追加する検査なので、検査前の注意事項はERCPの際の注意事項をご参照ください。
検査の実際
本治療は内視鏡透視室で行います。ERCP検査に引き続いて行われます。
1)デジタル経口胆道鏡(POCS)
ERCP検査を行い、胆管(や膵管)に選択的にカテーテルを入れた後、そのカテーテルを介してガイドワイヤーを留置します。さらにそのガイドワイヤーに細長い管状の経口胆道鏡をロープウエーのように通して、胆管(や膵管)に挿入します。必要に応じて,この経口胆道鏡を介して専用の生検鉗子を挿入し,組織を採取する場合があります。
図1.経口胆道鏡(POCS)による胆管内の観察
2)電気水圧衝撃波胆管結石破砕術(EHL)
上述のデジタル経口胆道鏡を挿入し,さらにこの経口胆道鏡下にEHL専用のプローベを挿入します.このプローベの先端から衝撃波を発生させることで胆石の破砕を行います.破砕された結石は従来通りバスケットカテーテルやバルーンカテーテルなどの採石器具で十二指腸へと除去されます. 大きい結石や硬い結石の場合は入院治療を何度か繰り返す必要があります
図2.電気水圧衝撃波胆管結石破砕術(EHL)による結石の破砕
3)起こりうる合併症
出血、穿孔、穿通、感染の悪化、膵炎などがあります。重篤な合併症が起こりうる治療法になります。患者さんの病状や施行する処置内容によって異なりますので、主治医から治療前に詳しい説明がございます。また基本的にはERCPに追加する検査なので、検査後の注意事項はERCPの項を参照してください。
慶應義塾大学病院での取り組み
治療困難な胆管・膵管結石に対しては体外式衝撃波破砕装置(ESWL:extracorporeal shock wave lithotripsy)が用いられていましたが、内視鏡を安全に挿入できる状況で結石を視認しながら治療できるためより有効性が高いと考えます。経口胆道鏡による検査および治療は高難易度の処置になります。当院では必要時にいつでも処置可能なように、最新のデジタル胆道内視鏡と処置具を常備しており、十分トレーニングされた内視鏡医が診断から内視鏡治療に携わります。また、本治療で十分な結石除去が難しい時は手術療法が必要となることもあり、内科・外科合同で密に連携を取り、垣根なく必要な治療を提示し対応いたします。
文責:消化器内科
最終更新日:2021年11月12日