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腎ファブリー病

じんふぁぶりーびょう

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概要

ファブリー病(Anderson-Fabry病)は、ライソソーム(lysosome)蓄積障害のうちで最も発症する頻度が高い疾患です。男性8,454~117,000人に1人の割合で発症するといわれています。ライソソームは細胞内にあり、様々な物質の分解を行っていますが、スフィンゴ糖脂質の代謝に必要な酵素であるαガラクトシダーゼA(alpha-Gal A:GLA gene)という酵素が活性低下もしくは欠損しているためにスフィンゴ糖脂質が代謝されず、糖脂質であるGb3(GL-3, globotriaosylceramideグロボトリアオシルセラミド)が蓄積してしまうことにより、様々な症状が現れる疾患です。

このαガラクトシダーゼAという酵素の遺伝子[GLA]が、X染色体(Xq22.1)にあり、この遺伝子の変異により発症することから、X染色体遺伝の形式をとります。女性の場合はX染色体が2本あるため、ヘテロの遺伝子変異(X染色体の片方のみの変異)を保持することになりますが、無症状の場合がある一方で、男性と同様の症状が現れる場合もあるなど、その症状は人によって様々です。

症状

GLA遺伝子の変異によって糖脂質であるGb3が蓄積し、細胞毒性や炎症・線維化がひきおこされることにより様々な症状が現れます。

典型的な症状は、幼児期や学童期に鋭い手足の痛み、汗をかかない、おしりや陰部の赤紫色の発疹、頻回の腹痛や下痢などです。特に手足の痛みは、ストレス、高温や疲労によってひきおこされます。さらに治療をしないままで青年期や中年期になると、腎症状(蛋白尿、腎不全)、心症状(心肥大、不整脈)、脳の症状(脳梗塞、脳出血)が出現し、年齢とともに症状が重症化します。

一方、発症が遅いタイプ(late-onset variant)も存在します。このタイプでは、酵素活性がある程度残っているために、糖脂質が蓄積するスピードが典型的なタイプよりも抑えられますが、原因不明の左心肥大や心不全、不整脈、あるいは尿蛋白や腎機能低下、脳卒中などがきっかけとなり、成人になってから初めて診断されます。

症状が腎臓に限られる腎ファブリー病(Renal variant)も存在し、原因不明の慢性腎臓病の場合には、この疾患の可能性もあります。日本人の疫学研究では、維持透析患者さん514人を調べたところ、6人(つまり1.2%)にαガラクトシダーゼA酵素活性低下や遺伝子変異が認められたと報告されています(Kidney Int 2003)。また腎ファブリー病の場合にも、後になって心肥大など他の症状が出てくる可能性があります。

診断

これまで述べたような症状、家族歴が認められた場合、特に男性の場合には、αガラクトシダーゼA活性を測定することで診断が可能です。活性が低下している場合には、遺伝子検査によりGLA遺伝子の変異を証明できれば診断はより確実になります。女性の場合には、酵素活性が様々な値を示すため、遺伝子検査による診断となります。もしも既知の遺伝子変異が同定されなかった場合に、腎生検などの組織生検を行い、糖脂質の蓄積が認められるかを調べることもあります。

治療

ファブリー病の治療には、酵素補充療法、シャペロン療法、それぞれの症状に対応した対症療法があります。

  • アガルシダーゼアルファ(リプレガル®点滴静注用)2週間に1回
  • アガルシダーゼベータ(ファブラザイム®点滴静注用)2週間に1回

また、αガラクトシダーゼA蛋白の折り畳みの異常により、ライソソームまで届けられる前に分解されてしまうタイプの場合には、この折り畳みの異常を是正する内服薬(シャペロン療法)の効果が期待できます。この薬剤は2018年に承認されました。
・ミガーラスタット(ガラフォルドカプセル®123mg)隔日経口内服 2018年承認

慶應義塾大学病院での取り組み

当院腎臓内分泌代謝内科では、第2土曜日午後に遺伝性腎疾患外来を行っており、検査や治療について検討いたします。当院循環器内科のファブリー病外来や臨床遺伝学センターとも連携しております。酵素補充治療は、当院では3号館南棟(免疫包括医療センター)にて行っております。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: 腎臓・内分泌・代謝内科外部リンク
最終更新日:2021年6月1日

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