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閉塞性肥大型心筋症に対するカテーテル治療 - 経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)

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概要

閉塞性肥大型心筋症は、肥大型心筋症という心臓の筋肉が特に理由がなく肥大する病気(高血圧などは心臓の筋肉が肥大する原因となるが、そのような原因がないという意味)の中で、左心室から大動脈への血液の通り道(左室流出路と呼ばれる)が、心臓が収縮する時に狭くなってしまう病気です(図1)。心臓が収縮する、すなわち血液を送り出す時に血液の通り道が狭くなってしまうので、血液を送り出すのに心臓は非常に強い力を必要とします。結果、左心室、左心房に負担がかかり、息切れ、胸の痛み、失神(意識を失う)、動悸などの症状が起こってきます。

図1.肥大心筋と左室流出路狭窄

図1.肥大心筋と左室流出路狭窄

治療法

治療法は、薬物療法が基本であり、適切な薬物療法により、かなりの患者さんの症状軽減をはかることができます。ただし、"適切な"薬物療法が行われていない場合、薬物が症状を重くすることもありますので注意が必要です。適切な薬物療法が行われていても、息切れ、胸の痛みなどの症状があり、日常生活がままならない患者さんがいるので、そのような患者さんのための治療法の1つとしてカテーテルによる治療があります。具体的には、血液の通り道を狭くしている部分の心臓の筋肉を栄養としている血管(左冠動脈前下行枝の枝である中隔枝であることが多い)にエタノールを注入して、血液の流れを妨げている部分の筋肉を壊死させることにより、血液の通り道を広げようとするものです(図2A、B)。このような治療法は、「経皮的中隔心筋焼灼術」と呼ばれています。

薬物療法抵抗性の患者さんに対してはカテーテル治療以外にも、外科治療として、開胸のうえ、心筋を切除する「中隔心筋切除術」やペースメーカー治療があります。以前はペースメーカー治療が盛んに行われていた時期もありましたが、効果が安定しておらず、現在では、薬物療法でも十分な症状改善効果が得られない患者さんに対しては、治療が可能な施設での「心筋切除術」や「経皮的中隔心筋焼灼術」を行うことが一般的とされています。慶應義塾大学病院では大学病院という特徴を生かし、不整脈グループおよび心機能室(心臓エコーを担当)の医師と密な連携をとりながら、患者さんにとってベストな治療法を選択します。つまり、経皮的中隔心筋焼灼術を目的にほかの病院から御紹介いただいても、1)薬物療法のみ、2) 経皮的中隔心筋焼灼術、3)中隔心筋切除術、4)ペースメーカー治療(不整脈グループが担当)のうち、どの治療法が患者さんにとって一番良い治療なのか、十分時間をかけて検討させていただいています。

図2A.標的心筋を栄養する左冠動脈前下行枝にエタノールを注入している様子(イメージ)

図2A.標的心筋を栄養する左冠動脈前下行枝にエタノールを注入している様子(イメージ)

図2B.経皮的中隔心筋焼灼術前後の肥大心筋の退縮と左室流出路閉塞解除の様子(イメージ)

図2B.経皮的中隔心筋焼灼術前後の肥大心筋の退縮と左室流出路閉塞解除の様子(イメージ)

慶應義塾大学病院での経皮的中隔心筋焼灼術

カテーテル治療担当医が数人の医師とともに、心機能室(心臓エコー担当)の医師の立ち会いのもと、治療を行います。術中の正確な心臓エコー所見の解釈が、治療の成否に関わりますので、心臓エコー専門医の見解を術中に聞くことができる状態で治療が可能なのは慶應義塾大学病院の強みと考えています。カテーテル治療は基本的には局所麻酔で行い、治療に要する時間は2時間強です。治療を行う前に、事前に1週間弱の検査入院をしていただいている関係上、治療当日は事前の検査結果を参考に治療を行います。治療に伴う入院期間は1週間強です。カテーテル治療の成否は、治療終了時の左心室と大動脈の圧較差で判定します (圧較差:左心室から大動脈への血液の通りやすさを反映します。安静時に圧較差が30mmHg以上あれば「閉塞性」と判断します。値が大きいほど、血液が通りにくく、病気の程度は重症と判断します。カテーテル治療後は治療が成功した患者さんでは圧較差は10mmHg以内にまで減少します。) (図3)。カテーテル治療後は、閉塞性肥大型心筋症外来にて、心臓超音波、心臓MRIおよび心肺運動負荷試験などを施行させていただき、治療効果の判定および評価を行います。

動画1.経皮的中隔心筋焼灼術前

動画2.経皮的中隔心筋焼灼術後

心臓エコー動画
経皮的中隔心筋焼灼術前後の左室流出路閉塞解除の様子
経皮的中隔心筋焼灼術前には左室流出路にカラーモザイク(乱流)を認めるが、術後にはほぼ消失している。

図3 当院で施行した経皮的中隔心筋焼灼術前後の左室 - 大動脈圧較差の実際

図3.当院で施行した経皮的中隔心筋焼灼術前後の左室 - 大動脈圧較差の実際

閉塞性肥大型心筋症の患者さんは、突然死のリスクが若干高いと考えられています。当院ではカテーテル治療の前後に突然死のリスクを評価したうえで、リスクが高いと判断した患者さんには植え込み型除細動器(ICD)の植え込みを行っております。

当院では火曜日、担当医 安西淳の外来にてカテーテル治療を含めた閉塞性肥大型心筋症の治療に関してマネージメントさせていただきます。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: 循環器内科外部リンク
最終更新日:2024年5月27日

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