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精神科薬物療法

せいしんかやくぶつりょうほう

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概要

現代の精神科医療では、様々な種類の薬剤が悩みや疾患に応じて用いられます。治療の中心的な役割を担うことも少なくありません。

一般的に薬物療法を行う際は、最小用量から開始し、副作用が問題にならないことを確認しながら、効果が出るまで少しずつ用量を増やします。薬の量が増えたからといっても、病状が重くなったわけではありませんので、ご安心ください。一部の薬では定期的に採血を行い、血中の濃度を測定しながら用量を調整する必要があります。

薬は処方された量を内服してください。症状が良くなっても、薬をやめると再発する可能性がありますので、薬をやめるタイミングは医師とよくご相談ください。特に、突然服薬を中断することは危険を伴いますので絶対におやめください。

薬によっては他の薬と相互作用をもつ可能性がありますので、他に内服している薬がある場合や、新しく薬が処方された場合は、医師にお伝えください。アルコールは薬の体への影響を増大させるため、飲酒は控えてください。

胎児、乳児に影響を与える場合があるため、妊娠や授乳にあたっては必ずご相談ください。眠気やふらつきを引き起こす場合があるため、車の運転にあたっても医師にご相談ください。

治療で使われるくすり

抗うつ薬

うつ病では、セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンなど神経伝達物質の活性が低下することが報告されています。抗うつ薬はこのような神経伝達物質を活性化させることで効果を発揮します。薬の効果には個人差がありますが、服用を始めてから効果が現れるまで少なくとも1~2週間ほどの時間がかかります。

・SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
セロトニンに選択的に働く抗うつ薬です。一般的な抗うつ作用を比較的安全にもたらすため、第一選択薬の一つとして用いられます。副作用として、嘔気、下痢、性機能障害が現れることがありますが、服用初期の胃腸症状は数日で自然に落ち着きます。強迫性障害、社会不安障害、パニック障害など他の疾患の患者さんに処方されることもあります。

・SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
セロトニンとノルアドレナリンの両方に働く抗うつ薬で、SSRIと同様に、一般的な抗うつ作用を比較的安全にもたらすため、第一選択薬の一つとして用いられます。副作用として、頭痛、排尿障害、頻脈が現れることがあります。慢性的な疼痛をもつ患者さんに対して処方されることもあります。

・NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)
ノルアドレナリンとセロトニンの両方に働く抗うつ薬です。幅広い抗うつ作用をもち、第一選択薬の一つとして用いられます。特に不眠や食欲低下に対して効果的であること、比較的効果が早く現れることが特徴です。胃腸症状や性機能障害は現れにくい一方、眠気や体重増加が副作用として現れることがあります。

・三環系抗うつ薬
従来用いられてきた抗うつ薬で強力な抗うつ作用を有します。一方、口渇、便秘、立ちくらみなどの副作用が多いため、注意を要します。

・四環系抗うつ薬
マイルドな抗うつ作用を有します。眠気を催すこともありますが、その他の副作用は少ないです。睡眠作用を期待して処方されることもあります。

抗精神病薬

統合失調症では、神経伝達物質であるドパミンの働きの異常によって、幻覚や妄想などの陽性症状、感情の鈍麻や引きこもりといった陰性症状が現れると考えられています。抗精神病薬はドパミン受容体に働き、このような症状を改善させます。うつ病や双極性障害など他の疾患の患者さんに、それぞれの症状を軽減させる目的で処方されることもあります。

・非定型抗精神病薬
幻覚や妄想に対する効果をもちながら、陰性症状に対しても一定の効果が報告されています。身体のこわばり、ふるえ、ムズムズ感など錐体外路症状と呼ばれる副作用が少ないこともあり、現代では統合失調症治療の第一選択に用いられています。薬によっては副作用として、性機能障害、生理不順、耐糖能障害、体重増加が現れることがあります。

・定型抗精神病薬
従来用いられてきた抗精神病薬で、幻覚や妄想に対する効果が評価されています。副作用として錐体外路症状や生理不順が多いため、注意を要します。

気分安定薬

双極性障害は、気持ちが上がる躁状態と落ち込むうつ状態をくりかえす疾患です。気分安定薬は、そのような患者さんの躁状態とうつ状態の波を安定させる効果をもちます。定期的に採血をして薬の血中濃度を測定しながら、用量を調整します。副作用として、吐き気、口渇、指の震え、眠気、皮膚症状などが現れることがあります。うつ病など他の疾患の患者さんに処方されることもあります。

抗認知症薬

アルツハイマー型認知症は、神経細胞の変性などにより認知機能が低下する疾患です。抗認知症薬は、神経細胞の賦活化などにより、認知機能低下の進行を遅らせます。認知機能を元に戻すわけではなく、変わらないでいることが服薬の効果です。悪心、頭痛、めまいなどが副作用として現れることがあります。レビー小体型認知症など他の疾患の患者さんに処方されることもあります。

睡眠薬

睡眠薬は、様々な疾患で起こる不眠症状を改善させます。従来ベンゾジアゼピン系睡眠薬が広く用いられてきましたが、近年様々な種類の薬が開発されています。薬によっては、耐性(徐々に効果が現れにくくなってしまうこと)や依存が問題になることがあります。有効な最小量を必要な期間だけ内服するよう心掛けることも大切です。

抗不安薬

抗不安薬は、様々な疾患で起こる不安やイライラ感を改善させます。ベンゾジアゼピン系抗不安薬が広く用いられています。睡眠薬と同様に、薬によっては耐性や依存が問題になるため、有効な最小量を必要な期間だけ内服するよう心掛けることも大切です。

抗てんかん薬

てんかんとは、大脳の異常な興奮により、発作的に痙攣をくりかえす疾患です。抗てんかん薬はそのような大脳の興奮をおさえ、痙攣を少なくさせます。定期的に採血をして薬の血中濃度を測定しながら、用量を調整します。副作用として、眠気や皮膚症状などが現れることがあります。

精神刺激薬

ドパミンやノルアドレナリンに働く覚醒効果が強い薬で、ナルコレプシーなどの睡眠障害や注意欠如多動性障害(ADHD)に用いられます。薬によっては依存性が高いため、指定された状況でしか処方を受けることができません。

文責: 精神・神経科外部リンク
最終更新日:2017年1月24日

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