概要
国内において保険診療で使用できる人工聴覚器とは1) 人工内耳、2) 人工中耳、3) 植込型骨導補聴器を指します(2023年4月時点)。これらを難聴者の方に手術的に埋め込むことで、聴力を改善することができます。また、近い将来には、骨導インプラントと呼ばれる新しい人工聴覚器が使えるようになる予定であり、人工聴覚器は今後も進歩していく可能性のある治療選択肢の一つです。
1) 人工内耳
難聴の多くは内耳による障害です。きこえのセンサーである内耳の細胞は一度障害されると、ほとんどの場合で再生しません。人工聴覚器のひとつである人工内耳を挿入して内耳のかわりを果たします。人工内耳の埋め込み手術は補聴器を使っても会話が難しい方が対象になります。詳しくは、「人工内耳」をご参照ください。
1-a) 残存聴力活用型人工内耳
一般的な人工内耳以外に、低い音域のみ聴力が残っている難聴者に対して、補聴器と人工内耳を組み合わせた残存聴力活用型人工内耳という治療を選択することが可能になりました。
詳しくは、あたらしい医療「残存聴力活用型人工内耳(EAS:Electric Acoustic Stimulation) -耳鼻咽喉科-」をご参照ください。
2) 人工中耳
慢性中耳炎(癒着性中耳炎などを含む)や耳硬化症など、きこえのセンサーである内耳の機能は残っているものの、鼓膜から内耳に音が伝わりにくい難聴(伝音難聴と呼びます)に対して、従来の聴力改善手術や各種補聴器(気導、骨導、軟骨伝導)装用で聴力の改善が困難な難聴者が対象となります。
軟骨伝導補聴器について詳しくは、あたらしい医療「軟骨伝導補聴器~軟骨で音を伝える世界初の補聴器~ -耳鼻咽喉科-」をご参照ください。
3) 植込型骨導補聴器
骨固定型補聴器と骨導インプラントがあります。骨固定型補聴器は、耳の後ろ側の骨にチタン製のねじを埋め込み、その上から音を振動に変換する機器を接続します。骨に埋め込まれたねじを通して、音の振動が内耳の骨に伝わる(骨導)ことで音を伝えます。MRI撮影への影響がほとんどないことが特徴です。骨導インプラントは皮膚の下に音を伝える機器を埋め込みます。皮膚に突出するねじがない事が特徴ですが、磁石を使用している為、MRI画像への影響が出ます。
文責: 耳鼻咽喉科
最終更新日:2023年5月1日