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Cogan(コーガン)症候群(Cogan's syndrome)

こーがんしょうこうぐん

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概要

Cogan症候群は、1945年に米国の眼科医David G. Coganによって「非梅毒性間質性角膜炎と前庭聴覚症状を有する症候群」として初めて報告された疾患で、2012年の新しい血管炎国際分類ではいずれのサイズの血管も侵襲しうる血管炎に分類されました。75%の患者において発症4か月以内に眼痛と難聴を伴う内耳症状を起こし、しばしば全身性血管炎を伴う病気です。我が国においては基幹病院においてもほとんど症例がないほどまれであり、正確な罹患率などの報告もありません。原因も不明ですが、炎症が持続することにより不可逆的な臓器障害へつながるため、診断がつき病気の勢いがある場合には早期の治療開始が望ましいです。

症状

眼症状として充血や眼痛、まぶしさ(間質性角膜炎)があります。内耳症状としてはメニエール病のような吐き気や嘔吐を伴うめまい発作や突然おこる聴こえにくさ(感音性難聴)があります。また全身性の血管炎症状を15%程度に来たし、発熱、だるさ、関節痛や筋肉痛、体重減少、腸からの出血(消化管出血)、皮疹(紫斑)、リンパ節がはれたりします。血管炎は様々なサイズの血管に生じる可能性がありますが、大きなサイズの血管炎症状として心臓弁膜症(特に大動脈弁逆流症)を伴うことがあり、その場合は息切れや胸痛、重症例では心筋梗塞や心不全がおこることもありますが患者さんによって症状は様々です。

診断

上記のような症状があり、特に進行する間質性角膜炎と聴力障害がある場合にこの病気を疑います。ですが同じような症状になる病気は、感染症やリウマチ性疾患、膠原病などでもおこるため、ほかの病気でないことをしっかりと確認することが重要です。

分類

1945年にCoganが報告した「典型的Cogan症候群」は以下の3つを満たすものです。

  1. 眼症状:結膜炎、結膜・結膜下出血、もしくは虹彩炎を伴うことのある非梅毒性間質性角膜炎
  2. 蝸牛前庭症状:メニエール病と似た症状(突然の吐き気・嘔吐・耳鳴・めまい)で、難聴は徐々に進行し通常1~3か月で聾に至る
  3. 上記の眼症状と蝸牛前庭症状が2年以内に出現

また、1980年のHaynesらの報告によると、以下の3つのうちいずれか1つを満たすものを「非典型Cogan症候群」と分類しました。

  1. 間質性角膜炎の有無は問わない炎症性眼症状(上強膜炎、強膜炎、網膜動脈閉塞、脈絡膜炎、網膜出血、乳頭浮腫、眼球突出、腱炎)が2年以内にメニエール病様症状を伴う
  2. 典型的Cogan症候群の眼症状が2年以内にメニエール病とは異なる蝸牛前庭症状を伴う
  3. 典型的Cogan症候群の眼症状と蝸牛前庭症状が2年以上離れて出現する

鑑別を要する疾患の例

クラミジア感染症、Lyme病、梅毒、Whipple病、サルコイドーシス、小柳・原田病、シェーグレン症候群、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、抗リン脂質抗体症候群、結節性多発動脈炎、多発血管炎性肉芽腫症、再発性多発軟骨炎、ベーチェット病、潰瘍性大腸炎、クローン病などの疾患はCogan症候群との鑑別を要します。

治療

間質性角膜炎や虹彩毛様体炎に対してはステロイド点眼薬が使われます。点眼薬で病気のコントロールがつかない場合や、進行する聴力障害があった場合には炎症を抑える作用のある副腎皮質ステロイド薬や、免疫を抑制する免疫抑制薬(メトトレキサートやシクロスポリン)が使われます。患者さんにより重症度が異なり、治療に対する反応により予後(病気の見通し)は変わります。眼病変については比較的、予後は良好で失明を来す症例は5%程度と報告されています。聴力障害は重篤であり25〜50%の症例で聴力を失う可能性があります。また重症な大動脈弁逆流症や大動脈瘤に対して外科的修復術が必要となることもございます。

生活上の注意

ステロイド薬や免疫抑制薬を服用されている場合、感染症に弱い状態になることが多いです。したがって、手洗い・うがいなどを心がけ、ストレスのかからない生活を送り、風邪などにかからないようにしましょう。また、薬の飲み忘れや、自己判断で中断することは病気の再発につながる可能性もありますので必ず主治医の指示にしたがってください。

慶應義塾大学病院での取り組み

この病気は非常にまれですが、大学病院という特徴を生かし眼科や耳鼻咽喉科・頭頸部外科、さらには神経内科、循環器内科、心臓血管外科ともしっかりとした協力体制を組み早期診断と治療にあたれるよう努めております。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: リウマチ・膠原病内科外部リンク
最終更新日:2024年8月9日

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