概要
回帰性リウマチは周期的に関節炎(関節の腫れ、痛み、赤み、熱をもつ)を繰り返す病気です。回帰性リウマチの患者さんの一部では一定期間の経過後に症状の完全消失が見られることもありますが、20~60%は典型的な関節リウマチ(rheumatoid arthritis: RA)に移行することが知られています。
回帰性リウマチは、正確な人口当たりの頻度を示した報告はなく、比較的まれな疾患であると考えられてきましたが、最近の報告では、以前に考えられていたよりも数が多いとするものもあります。回帰性リウマチの好発年齢は20~50歳代まで広く含み、男女差はありません。原因はいまだ不明ですが、回帰性リウマチの患者さんの一部では家族内発症(特定の家族内で多発する疾患)が確認されており、一部にはHLA-DR1やDR4といった遺伝子の関与も示唆されています。また最近の報告ではTNF-receptor1やPADI4の遺伝子多型が疾患に関与するという報告もあります。
症状
炎症を伴う疼痛発作は数時間でピークに到達した後に数日から1週間程度で消失し、発作のない時期が数日から数か月続きます。発作の頻度は年に数回から10数回というのが一般的であり、発作の間隔は一定していません。まれですが発作時に微熱を伴う場合もあります。
長期的には、回帰性リウマチの5~15%は自然に治癒しますが、20~50%は典型的な関節リウマチに、また、少数例では全身性エリテマトーデスなどのほかの膠原病に移行し、残りの患者さんは長年発作を繰り返すものの、ほかの病気には移行せずにそのまま経過するとされています。最近の20年以上の追跡調査では60例中40例が関節リウマチに移行したとの報告もあるため、慎重な経過観察が必要です。
突然発症し、通常は単関節炎(=1つの関節に炎症が起こる)の症状が出現します。経過とともに多数の関節に発作がみられる例では、同一の関節で繰り返されるというよりは症状が出現する関節は移動することが多いとされています。
回帰性リウマチでは発作の時間や期間が短い割に痛みが強いことが特徴的とされています。関節症状は基本的にどの関節にも起こり得ますが、手指関節、手、膝、肩、足の順で多く、脊椎や顎関節ではまれです。
回帰性リウマチでは基本的に非発作時の全身状態は良好であり、通常は何らかの障害が残ることはありません。関節外症状として関節に近い軟部組織に発赤や熱感、腫脹や痛みが出現することがあります。
また、手の腱や指腹に圧痛を伴う辺縁不明瞭な小さな皮下結節が一時的に生じることもあります。
診断
回帰性リウマチにおいては世界で標準的な診断基準は存在しませんが、特徴的な臨床症状や、関節レントゲン所見が正常であることに加えて、痛風や偽痛風、間欠性関節水腫などの他疾患を除外することによって診断されます。
検査
回帰性リウマチ患者さんの約半数は発作時にリウマトイド因子が陽性であり、一過性の白血球増多、軽度から中等度の赤沈亢進、血清CRP濃度の上昇など炎症反応性パラメータの上昇がみられることがありますが、明確な診断に至るようなものではありません。
リウマトイド因子が陽性の回帰性リウマチ患者さんでは発作の程度および頻度が重症であることが多く、リウマトイド因子が陰性の患者さんと比較して関節リウマチに約3倍移行しやすいとする報告や、関節リウマチに移行する時期にリウマトイド因子が陽性化するとの報告もあります。
発作時には関節エコーで滑膜炎が確認されることもあります。また、時に回帰性リウマチの症状は全身性エリテマトーデス(SLE)に類似しますが、SLEで陽性となる抗核抗体は回帰性リウマチでは陰性であること、SLEで低下する補体値も回帰性リウマチでは正常範囲であることから、全身性エリテマトーデスとは区別することができます。なお、回帰性リウマチでは発作を繰り返しても関節リウマチのような関節周囲の骨萎縮、関節裂隙の狭小化、骨破壊が生じないため、関節レントゲン上、特に異常はみられません。
治療
発作時には非ステロイド抗炎症薬がある程度有効であることが知られていますが、症状の軽減はみられるものの十分な効果が得られないことも多くあります。
ステロイド内服も症例によっては有効ですが、発作が短期間で軽快することや、基本的には関節破壊が見られない病気であること、ステロイドの副作用を合わせて考慮するとステロイド内服の適応はごく一部に制限されます。
繰り返す発作を予防する最良の治療法は現在のところ知られておらず、回帰性リウマチでは不定周期な発作を繰り返すため、発作を抑制する為の薬剤効果を評価することは困難です。抗リウマチ薬の効果についても明らかではありませんが、症例によっては抗リウマチ薬の効果が期待できる場合もあります。
生活上の注意
関節に炎症があるときは、無理に動かしたり負荷をかけたりすると炎症が悪化することがあります。しかし、身体を動かさないでいると、筋力が低下するうえに、関節が動きにくくなったり動かせる範囲が狭くなったりしますので、過度な負荷を避けながら、適度に動かすことが大切です。
慶應義塾大学病院での取り組み
回帰性リウマチでは関節リウマチをはじめほかの病気との鑑別が非常に重要であり、またほかの病気への移行もありうる病気です。慶應義塾大学病院ではこうした特性を重視し、ほかの病気が隠れていないかどうかということを含めて、全身を丁寧に診療しています。
さらに詳しく知りたい方へ
文責:
リウマチ・膠原病内科
最終更新日:2024年9月9日