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痛風(gout)

つうふう

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概要

痛風(gout)は、男性や閉経後の女性における頻度の高い炎症性関節炎です。西洋においては紀元前から記載があり、帝王病、ぜいたく病などと呼ばれ、中年以降の男性に多い病気として知られてきました。我が国では明治になって初めて報告され、戦後に本格的に増加しました。近年は過食、過飲の若年肥満者でもみられる傾向にあります。一方、血清尿酸値の測定が一般化し、早期から高尿酸血症(hyperuricemia)が治療されるようになってからは、軽症化しているとされています。

尿酸値は女性の方が低い傾向にあり、痛風は圧倒的に男性に多い病気です。高尿酸血症の状態では、体液中で一部の溶け切れなくなった尿酸が結晶化することがあります。この尿酸塩が痛風の原因物質で、関節にたまって炎症をおこすと痛風発作という関節の痛みや腫れを起こします。高尿酸血症が長期に持続する場合や、血清尿酸値の高い方ほど、痛風を起こす頻度が上昇します。また、腎臓にたまって腎臓の働きが悪くなる痛風腎(gouty kidney)や、腎結石・尿管結石を起こすこともあります。

症状

  1. 関節炎症状
    痛風発作と呼ばれ、足の親指(母趾基関節など)の付け根などの下肢の関節の1か所に関節炎を起こすことが特徴です。歩くことが困難なほどの痛みと腫れ、熱感を自覚して、炎症をおこしている関節は赤く腫れ上がります。一般的には7~10日で自然に改善して、次の発作が起きるまでは全く無症状です。高尿酸血症を放置してしまうと、関節炎を起こす頻度が上がり、多数の関節に痛みが出るようになります。

  2. 腎症状
    高尿酸血症が持続すると、腎臓の髄質というところに炎症(間質性腎炎)をおこすようになります。痛風腎といわれています。高尿酸血症の方の治療を行うと、腎機能は改善する例もあります。

  3. 生活習慣病の合併
    国内の痛風の方の約半数以上に、内臓脂肪が過剰であることが指摘されています。脂質異常症、高血圧症なども高頻度に合併し、動脈硬化症も多いといわれています。

診断

高尿酸血症で、急速に出現した単関節炎が生じた際には痛風が疑われます。

以下はアメリカリウマチ学会(American College of Rheumatology: ACR)の提唱した分類基準です。
痛風分類基準(ACR、1977)
 a) 尿酸塩結晶が関節液中に存在すること
 b) 痛風結節の証明
 c) 以下の項目のうち6 項目以上を満たすこと

  1. 2回以上の急性関節炎の既往がある
  2. 24時間以内に炎症がピークに達する
  3. 単関節炎である
  4. 関節の発赤がある
  5. 第一中足趾節関節の疼痛または腫脹がある
  6. 片側の第一中足趾節関節の病変である
  7. 片側の足根関節の病変である
  8. 痛風結節(確診または偽診)がある
  9. 血清尿酸値の上昇がある
  10. X線上の非対称性腫脹がある
  11. 発作の完全な寛解がある

a,b,cのいずれかを満たすこと。

この基準のc)の項目を6項目以上満たすような、臨床症状からの診断が日常的には多いです。しかし、偽痛風、回帰性リウマチ、化膿性関節炎、反応性関節炎など、ほかの関節炎との区別に苦慮する場合もあります。そのような場合、採取可能であるならば、関節液中の尿酸塩結晶の存在を確認することによる診断が望まれます。レントゲンでは関節内の尿酸結晶を判別することは困難ですが、関節エコーによる検査では痛風を起こした関節の軟骨表面に石灰化が沈着している像(図1、矢印)が見られ、有用な情報となり得ます。なお、関節炎の代表的な疾患である関節リウマチは、痛風とは合併しにくいと報告されています。

図1

図1

また、フロセミドやサイアザイド系などの利尿剤、エタンブトールやピラジナミドといった抗結核薬、さらにシクロスポリンやタクロリムスは、血中の尿酸値を上げる作用があり痛風発作を起こす可能性があるので、それらの使用がないかを確認します。

治療

  1. 生活習慣の改善
    高尿酸血症、痛風の方が生活習慣の改善を行うことは重要です。食事療法、飲酒制限、運動の推奨がされています。

  2. 関節炎発作時の治療
    非ステロイド抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drugs: NSAIDs)やコルヒチンの有効性に関しては、これまでに無作為化プラセボ対照試験で確認されています。コルヒチンに対してはメタ解析やプラセボを対照とした無作為化試験があり、痛風発作の発症後なるべく早く投与した方がより有効性が高いことが示されています。このコルヒチンの重要な役割として、痛風発作の前兆の時期に1錠(0.5mg)だけ使用して、発作を抑える効果が期待できます。関節炎症状のピーク時期に大量に服用すると副作用が出現しやすいといわれていますので、発作の極期には比較的多量のNSAIDsが短期間用いられます。

    また、痛風発作は高尿酸血症によって引き起こされますが、一度発作が起きてしまうと血清尿酸値を下げても発作は止まらず、むしろ症状を悪化させてしまうことがあります。そのため、発作中には尿酸降下薬の投与を新たには始めません。既に尿酸降下薬を使用している場合は継続します。

  3. 高尿酸血症の治療
    「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版」(日本痛風・核酸代謝学会、2012)では、血清尿酸値の定義とされる血清尿酸値が7㎎/dl以上である場合には、まず生活指導が推奨されます。痛風関節炎や痛風結節がある方、または、血清尿酸値が8mg/dl以上で腎障害、尿路結石、高血圧、虚血性心疾患、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの合併症がある場合には薬物治療の対象となります。また、合併症がない症例でも血清尿酸値が9mg/dl以上の場合には薬物治療の対象となります。

これらの薬物治療として使用される尿酸降下薬は、尿酸生成抑制薬アロプリノール(商品名:ザイロリック®)、フェブキソスタット(商品名:フェブリク®)、尿酸排泄薬ベンズブロマロン(商品名:ユリノーム®)の3種類が主に挙げられます。

  1. アロプリノール(商品名:ザイロリック®)
    尿酸生成抑制薬であり、その代謝物であるオキシプリノールとともに尿酸合成過程の最終段階であるキサンチンオキシダーゼを阻害することで、尿酸生成量を低下させます。腎臓から排泄されますので、腎機能の低下している方などでは、この薬物の血中濃度が上昇しやすく、重篤な副作用がでることがあるため、用量調整して使用します。また、ワルファリン、アザチオプリン、シクロフォスファミド、シクロスポリンなどの併用薬がある場合は、それらの併用薬の作用が増強することがあるので注意が必要です。

  2. フェブキソスタット(商品名:フェブリク®)
    2011年から国内で発売されるようになった新薬です。阻害される酵素はアロプリノールと同様で、尿酸生成を抑えますが、この薬物は肝臓で代謝された後に糞中と尿中にバランスよく排泄されるため、腎機能が低下した患者さんでも服用しやすいとされています。作用を増強してしまうためアザチオプリンやメルカプトプリンとの併用は禁止されていますが、アロプリノールよりも相互作用で注意が必要な薬剤の種類は少ないです。

  3. ベンズブロマロン(商品名:ユリノーム®)
    頻用されている尿酸排泄促進薬です。効果が強く、薬剤相互作用も少ないといわれています。注意が必要なのは肝障害で、使用開始後の半年間は血清尿酸値と肝機能を毎月確認していくことが推奨されています。また、尿中に尿酸が排出され、尿路結石を生じるリスクが高まるため、腎結石や高度の腎障害がある場合は使用禁止となっています。相互作用を及ぼす薬剤の種類は比較的少ないですが、ワルファリンの作用を強めるため注意が必要です。

生活上の注意

高尿酸血症の方は次のことにご留意ください。

  • 肥満の解消(食事療法、摂取エネルギーを適正化する、高プリン食を控える、BMI<25目標)
  • アルコール飲料の制限(日本酒1合、ビール500mlまたはウィスキー60mlまでに)
  • 十分な水分摂取(尿量2000ml/日以上を目安に)
  • 週3回程度の軽い運動(有酸素運動)
  • ストレスの上手な発散

慶應義塾大学病院での取り組み

急な関節の痛みがあり、高尿酸血症、痛風発作が疑われている方に対して適切な診断、治療を提供できるよう心がけています。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: リウマチ・膠原病内科外部リンク
最終更新日:2024年9月9日

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