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口腔機能ケア

こうくうきのうけあ

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概要

口腔機能は摂食、嚥下、構音などで成り立っており、これらの機能を維持するには口腔内の状態を良好に保つことが重要となります。口腔機能ケアとは、病気そのものが原因、あるいは病気の治療が原因で起こる口腔機能障害を、予防、早期発見、早期治療することで生活の質(クオリティーオブライフ)の向上を目指す医療のことです。
実際に行っている治療は、口腔清掃とその方法の説明、口腔内の保湿、粘膜炎の予防や治療、歯周病の初期治療などがあります。

症状

口腔機能障害は代表的ながん治療の副作用のひとつに挙げられています。例として、がん化学療法や放射線治療に伴う口内炎や、がんの骨転移で用いるBMA製剤の影響による顎骨壊死などがあります。

がん化学療法中の患者さんは、全身および局所の感染防御機構の低下によって口腔常在菌のバランスが崩壊し、菌が繁殖しやすくなります。そのため、口腔内の慢性病巣(根尖病巣、智歯周囲炎、歯周病など)が急性化して、歯肉の腫脹、疼痛といった炎症症状が発現します。がん化学療法を受ける患者さんの約40%に口内炎が起こるという報告があります。
また、口腔がんなどのために口腔に放射線治療を行った患者さんのほぼ100%に口内炎が発生するとされています。初期症状は、粘膜の発赤と熱感で、照射線量の増加とともに、びらん、潰瘍へと進行していき、症状が重篤になると放射線治療を中断せざるを得ない場合もあります。また、抗がん剤の併用で口内炎が著明になることもあります。

BMA製剤とはBone-Modifying Agents の略で骨の修飾作用を有する薬剤のことです。がんの骨転移に伴う疼痛や骨折といった骨関連事象のリスク軽減に有効な薬剤ですが、顎骨に刺激が加わる治療(抜歯、口腔インプラント手術、歯周外科など)を行った場合、数%の確率で顎骨壊死といわれる骨の露出や痛みを伴う病変が発生することがわかってきました。そのためBMA製剤を投与し始める前に口腔内を診察し、治療する必要性があるう蝕(むし歯)や歯周病の有無を診断することが重要になります。

図1.がん化学療法による広範囲の口内炎

図1.がん化学療法による広範囲の口内炎

図2.BMA製剤投与後に見られた顎骨壊死(1)

図2.BMA製剤投与後に見られた顎骨壊死(1)

図3.BMA製剤投与後に見られた顎骨壊死(2)

図3.BMA製剤投与後に見られた顎骨壊死(2)

口腔機能ケアの目的と方法

口腔機能ケアの主な目的は以下の通りです。

  1. 病態の悪化を防止する。
  2. 口腔内の細菌繁殖を抑制し、二次感染を予防する。
  3. 唾液の分泌を促し、自浄作用を促進する。
  4. う蝕や歯周病を予防する。
  5. 口腔内の不快感を除去し、食欲の亢進を図る。

これらの目的を達成するために、エックス線写真による口腔内感染病巣のスクリーニング、感染病巣の除去(口腔衛生指導、歯石除去、う蝕治療、感染根管治療、義歯調整、抜歯など)、保湿剤や特殊な歯磨剤を用いた口内環境維持方法の指導、口内炎の治療(うがい薬や局所ステロイド薬の使用)などを行っています。

慶應義塾大学病院での取り組み

慶應義塾大学病院では大きな手術、がん化学療法、造血幹細胞移植術を実施する患者さんを主な対象とし、歯科・口腔外科が中心となって口腔機能ケアを行っています。造血幹細胞移植術を受ける患者さんや、大きな手術でICUに入院中の患者さんに対して歯科医師と看護師が協同して口腔ケアを行っております。歯科・口腔外科外来や病室で主に診察を行っておりますが、外来化学療法中の患者さんは3号館北棟4階腫瘍センターに併設されている口腔機能ケア外来でも診察をしています。

文責: 歯科・口腔外科外部リンク
最終更新日:2017年2月10日

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