概念
「めまい」は、平衡機能障害に分類される症状の一つで、いろいろな原因で起こるため、どの診療科を受診すべきか悩む症状です。めまいを主訴に受診する診療科は耳鼻咽喉科のほかにも脳神経内科、脳神経外科、循環器内科、救急救命科と多岐にわたっています。そのため、めまいに対するアプローチも多く存在しますので症状の精査はとても大事です。
症状の表現の仕方も様々で、後述する回転性のめまい、浮動性のめまい、ふらふらする感じなど、いろいろなめまいがあります。また、めまいが続き原因が分からないと、不安な気持ちからめまいがさらに悪化するという悪循環になることもあります。必要な検査を受け、そのめまいの原因が何かを確認すること、あるいははっきりとした原因が特定されなくても、めまいが命に関わるような重大な症状ではないことを確認することは重要です。
脳腫瘍など脳に存在する原因が主な原因となる中枢性めまいと、脳が支配している別の器官や神経が原因となる末梢性めまいに大分されますが、そのほかにも前庭機能の障害や心理ストレスが先行した後、症状が残存していると知覚される状態(機能性疾患)へ移行する場合もあります。
症状
どのようなめまいであるかをはっきりとさせることが重要です。めまいの感覚は患者さん自身にとっては非常につらいものですが、これを医師に正確に伝えることは大変難しいので、次のように自分のめまいの症状を整理しておくとよいでしょう。
- いつからめまいがするか
- どのようなめまいか
- 世界が回っているようなめまい(回転性)
- ふわふわするようなめまい(浮動性)
- ふらつくようなめまい など
- 特定の行動をとるとめまいが起こることが多いか、特にめまいが起こる行動はないか
- 頭を動かしたり寝がえりを打ったりしたとき
- 電車で外を見ているとき
- 複雑な模様を見たとき
- 商品の陳列棚を見たとき など
めまいの原因となる病気とその治療
耳鼻咽喉科領域において代表的な病気について説明します。本内容に示す病気以外に可能性があるものについても調べる必要があります。
良性発作性頭位めまい症
最も多いめまいは、良性発作性頭位めまい症(BPPV:Benign Paroxysmal Positional Vertigo)です。持続時間は30秒以内と短時間で、寝たり起きたり、寝返りを打つなど、頭を急に動かしたときに回転性のめまいを感じます。めまいには吐き気を伴います。回転性のめまいは短時間ですが、患者さんにとっては恐怖で不安を感じます。
診断では、頭位変換眼振検査という、わざとめまいを起こさせてその際の眼の動きを確認する検査を行います。このめまいの治療は自然軽快することも多く、治療の過程で頭をなるべく動かすことが効果的とされています。薬はめまい自体にはあまり効果的ではありませんが、めまいによる吐き気などの不快感に効果があります。
メニエール病
きこえやめまいの症状が反復して起こる場合はメニエール病の可能性を考える必要があります。きこえについては、時々耳がふさがった感じになったり、圧迫感を感じたりする症状が主です。めまいについては、世界が回っているようなめまい(回転性)を認めることが多いといわれています。
メニエール病の確定診断には造影MRIが有用ですが、メニエール病の症状は現在でも治療の難しい症状です。早期発見、早期治療が大切といわれています。治療には生活指導のほか、浸透圧利尿薬などが用いられます。
前庭神経炎
激しい回転性めまいが続く病気です。めまいはほとんどの場合1日以上続き、トイレに行くときにもつたい歩きが必要なほどふらふらします。吐き気も強く、食事が1日取れないこともあります。入院になることが多いですが、軽い場合には通院で治療することもあります。病気の後遺症として、ふらふらしためまいが長い場合には数か月程度続くことがあります。特に高齢の患者さんは長引く傾向がありますので、転ばないように注意して歩くことが大切です。
持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)
ふわふわするめまいやふらつくめまいなどが、3か月以上にわたってほとんど毎日存在し、立っている状態や電車などに乗車している状態、複雑な模様や動きがある映像を見ている状態で増悪する場合、PPPDの可能性を考える必要があります。現時点で証明されている特徴的な検査所見はありませんが、この病気が強く疑われる場合は投薬治療やリハビリテーションを検討することがあります。
原因不明
患者さんの中には通院中に症状が改善し、治癒することがあります。そのようなときには診断名をつけることが難しい場合も少なくありません。もし再びめまいが起きたときには、その都度、病院を受診して精査を進めていくことが重要となります。
さらに詳しく知りたい方へ
文責: 耳鼻咽喉科
最終更新日:2023年3月13日