概要
血管造影検査は血管内に2㎜程度の太さのカテーテルという管を通して造影剤を注入し、血管や病変部位の影(かげ)を造り、その流れをX線で撮影する検査です。最近はCTやMRIの進歩により、低侵襲な方法で血管や病変の情報を得ることが可能となってきたため、血管造影検査の必要性は減少しています。しかしながらCTやMRIでは捉えきれない微細な血管の病変を評価する必要がある場合、石灰化や金属を伴う病変の評価が必要な場合、そして血流動態(流れの向きや流速)を知りたい場合などには、血管造影検査が行われます。
当院では血管造影装置とCTが一体となったIVR-CTが導入されています。この装置の使用により、詳細な血流動態や病変位置の評価をすることが可能となります。IVR-CTを使って、より安全かつ効果的な検査、カテーテル治療を行っております。
検査の流れ
- 検査前
- 外来検査も可能なことがありますが、原則検査の前日までにご入院いただきます。
- 検査前の食事は食べられません。点滴をいれて水分、栄養を補います。
- 検査中の排尿を補助するため、尿道からカテーテルをいれたり、採尿用のバッグを装着したりします。
- 足の付け根からカテーテルを入れて検査を行う場合には、下腹部・陰部近傍・大腿部の毛を剃ることがあります。
- 検査中
- 検査に要する時間は1〜2時間程度です。検査に引き続いてカテーテル治療を行う場合はさらに数時間が加算されます。
- 検査台に仰向けで寝て頂き、消毒後滅菌された布を被せます。足の付け根もしくは肘に局所麻酔を施し、引き続いてカテーテルをいれます。
- 目的とする血管までカテーテルをすすめて造影剤を注入し写真を撮ります。
- 造影剤注入に伴い、体の一部が暖かくなりますが、正常な反応ですので、心配いりません。ただし、検査中、痛み・吐き気・気分不快などがありましたら、遠慮なく担当医師や看護師にお知らせ下さい。
- 検査後
- 出血を防ぐため、針を刺した部位を医師が約10分用手的に圧迫止血します。その後、再出血を防ぐためにテープで圧迫固定を行います。
- 検査後は数時間(3-6時間)仰向けの姿勢で安静にしていただきます。その際は寝返りや足を曲げたりすることも禁止となりますのでご留意ください。
検査に伴って起きるまれな合併症
以下に検査に合併する好ましくない変化を列挙しますが、いずれも非常にまれな合併症です。
- アレルギー反応
人によっては薬剤に対し過敏な反応を呈することがあります。使う薬は検査により異なりますが、通常はキシロカイン(局所麻酔用)とヨード造影剤が使用されます。 - 腎機能障害
元々腎機能があまり良くない方にヨード造影剤を使用した場合、腎機能障害が生じることがあります。検査前には腎機能を確認し、必要に応じて予防策や別の方法を提示させていただきます。 - 血管損傷・塞栓症
カテーテルなどの操作で血管を傷つけることがあります。そのときに塞栓症という合併症が生じることがあります。これは傷つけた血管壁にあったコレステロールや血栓が血液の流れに沿って流れ、下流の細い血管を塞いでしまうことです。塞がれた血管から栄養されていた部分に血液が通いにくい状態となり、脳梗塞、足の潰瘍など、様々な状態を引き起こします。 - 出血、皮下血腫
術後にカテーテル挿入部から出血し、血腫を形成することがあります。 - 被ばく
被ばくは、近年話題に上ることが多く、気になる言葉ではありますが、血管造影検査での被ばく線量で重い障害を生じることはありません。検査に引き続く治療が長引いた場合、まれに皮膚の発赤などを生じることがあります。
予め知っておいていただきたいこと
- 尿道カテーテル
検査中・検査後の排尿のため必要に応じて尿道にカテーテルを入れることがあります。 - 痛み
血管にカテーテルを挿入するため、血管に針を刺します。前もって局所麻酔を十分に行いますが、軽い痛みを感じることもあります。 - 検査・治療中、および終了後の安静
検査・治療中はもちろん、検査終了後にも病棟のベッドでカテーテルを抜去した部分を圧迫したまま安静にしていただきます。なお、挿入したカテーテルの太さにより安静時間は異なりますが、おおむね3-6時間の安静となります。
医師・看護師へ事前にお申し出ください
- テープかぶれ
検査終了後に圧迫固定を行う際、通常テープを用います。もし前もってテープでかぶれてしまうことが分かっていればその旨をお申し出ください。 - ヨード造影剤アレルギー
以前に行われた造影CT検査などでアレルギー反応が出たことがある場合、その時のことについてお知らせください。必要に応じて、事前の予防策をとらせていただきます。 - その他のアレルギー歴
その他、何らかのアレルギーを持つ方は教えてください。
文責:
放射線診断科
最終更新日:2015年7月24日