概要
突然、一時的に意識を失うことを、医学的に失神と呼びます。Head-up Tilt Test(以下、ティルト試験)は、その失神の原因を調べるための検査の1つです。失神の原因の1つに自律神経の調節異常があり、ティルト試験はその異常が起こりやすいかどうかを確認する検査です。自律神経とは、主に全身の血管や心臓の働きを調節する働きを持つ神経です。例えば、緊張した時に血圧が上がったり、心臓の鼓動が速くなったりするのは自律神経の働きによるものです。
横になった状態から立った場合、血液は重力に従って足の方に移動します。その時、通常は自律神経の作用により足の血管が収縮し、心臓の鼓動が速くなることにより、脳に栄養を送る血流が減少するのを防ぎ、失神することはありません。しかし、自律神経の調節異常がある場合には、血圧・脈拍の調節がうまくいかず、一時的に脳に栄養を送る血液が減少して失神が起こります。例えば、学校の朝礼などで気分が悪くなって倒れてしまう場合や、採血などの強い緊張を受けた後に失神する場合は、この自律神経の調節の異常が関与しています。
ティルト試験では、患者さんに検査台の上に横になってもらい、検査台を起こして他動的に傾斜をつけることで自律神経の働きを検査します。
所要時間
検査時間は1時間程度です。ただし、薬物を投与して失神を誘発する検査を行う場合がありますので、その場合にはもう少し時間がかかります。
検査を受ける前に
検査は午前中に行うことが多いですが、検査中に気分が悪くなってしまう場合がありますので、前日夜もしくは検査前の数時間は食事を摂らないようにしていただきます。
また、内服薬に関しては、特に血圧を下げる薬などは検査の結果に影響することが多いので、中止することもあります。しかし、薬を飲んだ状態での評価が必要な場合もありますので、必ず主治医に確認するようにしてください。
検査の実際
- まず点滴を行います。点滴の中身は電解質を調整した水分です。点滴の第一の目的は、検査中に血圧が下がり過ぎた時など、万が一の時にすぐに治療をするための薬の投与経路の確保です。また、点滴から薬を投与して失神が起きるかどうかを確認する時のために必要です。点滴は検査中継続して行います。
- 次に検査台の上に横になってもらい、血圧計や心電図などのモニター類を装着します。
- その後、検査台が起き上がるので、それに身を任せるように起立します。自分で足踏みしたり体勢を変えたりはしないようにしてください。
- 血圧を繰り返し計測し、失神の兆候がないかどうかを判定します。気分が悪くなった時や、失神もしくはその前兆を自覚した場合にはすぐに申し出てください。
- 一定時間計測が終了、もしくは失神の兆候が認められれば検査は終了となります。ただし検査で症状が出なかった場合には、失神を起こりやすくする薬剤を使用して再度検査を行うことがあります。
検査後の注意
検査中に血圧が低下する場合がありますので、気分が悪くなることがあります。そのような場合、横になれば症状が改善する場合がほとんどですが、検査終了後も不快感が残ったり、めまいを感じるような時には必ず申し出てください。
文責:
循環器内科
最終更新日:2019年3月5日