概要
一般的に「バリウム検査」と呼ばれている検査で、造影剤を口から飲む、あるいは肛門から注入して、消化管のX線画像を撮影します。
所要時間
検査の目的や内容によって異なります。通常の検査では、上部消化管(食道・胃・十二指腸)は10-20分、小腸は60-150分、大腸は15-25分です。
検査を受ける前に
・前処置
食道、胃や小腸の検査では、前日夜21時以降の禁飲食となります。
大腸の検査では、通常は、前日の夕食を消化の良いものを早めにとっていただき、当日朝から腸管洗浄剤を飲みます。便秘気味な方や前処置薬の種類によっては、前日までに下剤の服用や注腸食摂取などを行うこともあります。
・鎮痙剤
食道・胃や大腸の検査では、蠕動(=食物を移動させるための腸の収縮運動)を抑える目的で、検査の5分ほど前に鎮痙剤として抗コリン薬(ブスコパン)を筋肉注射することがあります。症例によりグルカゴンに変更したり、注射せず検査を行うこともあります。
検査の実際
食道~小腸までの検査では口から造影剤(バリウム)と発泡剤を飲んで、体位変換(体を回したり向きを変える)をしていただきながら撮影します。大腸の検査では肛門から挿入した細い管から造影剤と空気を注入します。造影剤として最近は微細病変の描出能に優れた高濃度硫酸バリウム製剤のものを用います。患者さんによっては、消化管に狭窄があるために造影剤が滞留しても固まることがなく、また消化管外に漏出して問題が起きないヨード系造影剤(ガストログラフィン)を使うことがあります。
検査台の上で術者の指示に従って体位変換を行いながら、消化管の壁に万遍なく造影剤を付着させ10-20枚程度のX線画像を撮影します。
検査後の注意
いつもより水分を多めに取っていただき、腸の中に残存したバリウムが固まらないようにしてください。お渡しした下剤を検査終了後、あるいは食後にお飲み下さい。お食事は他の検査がなければすぐに召し上がっていただいて構いませんが、鎮痙剤を使った場合には腸の動きが止まっているため一度に沢山召し上がると吐き気や嘔吐を生じることがありますので、6-8分目に控えてください。
当院の特徴
最新鋭の機器を導入し、医師や技師が検査します。X線被曝量の低減に努め、診断的意義の高い鮮鋭な画像が得られることを心がけています。また、静止画像だけではなく、動画を用いて、咽頭の嚥下運動・食道の蠕動運動の評価や、胃食道逆流の評価なども行うことがあります。
図1
よくある質問
質問1 内視鏡検査があるのに何故バリウム検査もするのですか?
回答1 内視鏡検査が普及・発達してきた現在でも、消化管造影は消化管を広い範囲で観察でき、病変の大きさや存在する部位を客観的に評価できる点で優れています。これらの情報は、外科手術の術前検査や、化学療法の治療効果判定に不可欠な検査となっています。また消化管に穴が開くなどの合併症のリスクがなく、内視鏡挿入困難例でも施行可能で、スクリーニング検査としても有用です。
質問2 妊娠の可能性があるときに検査を受けて大丈夫?
回答2 消化管造影はX線を用いた検査であるため、妊娠可能な年齢の女性では、妊娠の可能性が無い時に受けてください。ただし消化管造影検査後に妊娠が判明した場合でも、広島の原爆の追跡調査から、基本的には消化管検査の被曝量では胎児に奇形等の影響を及ぼさないことが判明していますので、通常は心配ありません。(ご心配な場合は個別相談可能です。)
原理
硫酸バリウム造影剤は、水に混ざっている硫酸バリウムの細かい粒子が消化管を通過するときに粘膜面に付着させてX線で撮影することより、粘膜の微細な凹凸が表れた画像が得られます。この画像を詳細に観察することによって、腫瘍や潰瘍などの診断ができます。
文責:
放射線診断科
最終更新日:2015年7月16日