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もやもや病

もやもやびょう

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概要

もやもや病は、別名ウィリス動脈輪閉塞症とも呼ばれ、日本で発見された病気です。心臓から脳に向かう血管は、左右の内頸動脈と左右の椎骨動脈の4本からなります。これら4本の血管は頭蓋内に入ると、それぞれが交通し合う動脈の輪(ウィリス動脈輪)を作ります。もやもや病は、ウィリス動脈輪がゆっくりかつ進行性に閉塞して行く疾患です。この結果、脳血流が悪くなるので、自然の防衛策として側副血管と呼ばれる血流を補うための新しい血管が作られます。ウィリス動脈輪閉塞症の患者さんに脳血管撮影検査を行うと、この側副血管が「もやもやとした血管」に見えるため、もやもや病と呼ばれています。
人口10万人に対し1年間0.35~0.5人程度の発生率で、男女比は1:1.8で女性に多く、よく発症する年齢は10歳以下と40歳前後の2つのピークが見られます。もやもや病の原因は分かりませんが、家族発症は全体の10 %程度で、遺伝的関与が指摘されています。
厚生労働省より難病に指定され、原因や治療法の研究が精力的に進められています。

症状

発症の仕方には2通りあり、(1) 血流が不足して起こる虚血型、(2) 負担がかかった血管が破れる出血型とに分かれます。小児の場合は側副血管の発達が十分ではないために、(1) の虚血症状がほとんどであるのに対し、成人の場合は動脈硬化を生じることもあってほぼ半数が (2) の脳出血で発症します。
小児の場合、突然発症する片側の麻痺、知能低下、けいれん発作、頭痛などがよくみられますが、特に麻痺を起こす側が発作のたびに変わる時は、もやもや病を疑います。典型的な運動麻痺は数分から数十分後には改善する一過性の脳虚血発作です。特に、熱い麺類を食べるときのフーフーと吹く、あるいは楽器を吹く、など、短い時間に深呼吸を繰り返すと、一過性の脱力発作が誘発されるのが特徴です。5歳以下の乳幼児は脳梗塞発症が多く、重症が多いとされています。
成人の場合、3分の2は脳出血で発症しますが、出血を生じる場所によって、意識障害、運動麻痺、言語障害、精神症状、と見られる症状は変わります。残りの3分の1は小児と同様の虚血型で発症します。成人型の場合、死亡率は15 %に達します。

診断

脳出血や脳梗塞の診断は、CTやMRIで行います。この詳細はそれぞれの項目に譲ります。CTで脳の萎縮が目立つ、MRIでもやもや血管が点々と黒く抜けて見えるなどの所見からもやもや病を疑わせる症例もありますが、一般的には、もやもや病は血管の病気ですから、血管を調べる検査を行って診断をすることになります。
もやもや病には診断基準があります。脳血管を評価する検査として、MRAあるいは脳血管撮影、どちらかの方法で確定診断が可能です。所見としては、 (1) 頭蓋内内頚動脈終末部、前および中大脳動脈近位部に狭窄または閉塞がみられる、(2) その付近に異常血管網が動脈相においてみられる、(3) これらの所見が両側性にあることが特徴です。ただし、小児の場合では、片側であってももやもや病と確定診断されます。なお、特別な基礎疾患、動脈硬化、髄膜炎、腫瘍、ダウン症候群、レックリングハウゼン氏病、外傷、放射線照射などがみられないことが、前提条件となっています。
また、手術など治療法を決めるためには、もやもや病の確定診断だけでは不十分であり、より詳細な血管の評価や副側路の発達の評価を行うための脳血管撮影や、脳血流を調べることで虚血の程度が判定できるなどの検査も必要です。

図1

図1

治療

虚血症状がなく、頭痛や軽いけいれん発作しかみられない場合には、症状に応じた薬を飲んでいただいて、経過をみることもありますが、一般的には脳の血流不足を改善するための手術が必要です。手術には、(1) 血流が足りない頭蓋内血管と血流が足りている頭蓋外血管を直接縫い合わせて交通させる「直接血行再建術」、(2) 血流が足りている頭蓋外の組織を血流が足りない脳の表面と接触させて自然に新しい血管が生えるのを待つ「間接血行再建術」とがあります。
もやもや病が原因の脳出血に対する治療は、通常の脳出血と同様ですが、脳出血予防の治療として血行再建手術が有効かどうかは、現在臨床研究が進行中で、結果が待たれるところです。負担がかかった血管にできた動脈瘤から出血した場合には、動脈瘤に対する治療が必要となります。

(1) 直接血行再建術(頭蓋外・頭蓋内バイパス手術)

  • 全身麻酔で、主に頭部の皮膚や皮下組織を栄養している浅側頭動脈(せんそくとうどうみゃく)を脳の表面を走る中大脳動脈(ちゅうだいのうどうみゃく)に、手術用顕微鏡で確認しながら、縫い合わせて直接つなぐ(バイパスする)手術です。
  • もやもや病は、両側性の病気ですが、通常両方の脳に対して数ヶ月間、時期をずらして行います。
  • 子供にもこの手術は行いますが、子供の場合には、次の間接血行再建を行う施設もあります。成人は、間接血行再建の効果が乏しいので、直接血行再建を行います。
  • なお、頭蓋外・頭蓋内バイパス手術は、頭蓋内頸動脈狭窄症や頸部頸動脈閉塞症に対しても行われます。
図2

図2

(2) 間接血行再建術

  • 全身麻酔で、主に脳を包む膜である硬膜に、頭部の皮膚や皮下組織を、浅側頭動脈をつけたまま縫い合わせ、血流豊富な組織として脳の表面に接触させて、新たに血管ができて自然に交通する環境を整える手術です。
  • この方法はEDAS(イーダス:Encephalo-duro-arterio-synangiosis)と呼ばれています。
  • 接触させる組織として側頭筋を利用する方法もあります。
  • 直接血行再建術を行った症例でも、広い範囲の血行再建を行う場合には、この方法を組み合わせて行う場合があります。
  • 新しく血管のネットワークができるまで、数週間から数ヶ月かかります。
  • 主に小児で適応になる手術方法で、成人での効果は一般的に乏しいと言われています。

直接であれ間接であれ、良好な血行再建ができれば症状は1年前後で軽快してきますが、もう既に脳梗塞や脳出血など、脳の病変ができあがってしまっている場合には、症状の進行は予防できるものの、すでに完成してしまった症状が改善する可能性はありません。

図3

図3

慶應義塾大学病院での取り組み

  • 小児病棟スタッフと定期的なカンファレンスを行い、個々の症例ごとに患者さんに最適な治療法および管理法を検討しています。
  • 神経内科と定期的なカンファレンスを行い、個々の症例ごとに患者さんに最適な治療法および管理法を検討しています。
  • 麻酔科、小児科、小児外科と連携し、脳機能のみならず全身管理を重視した安全な術中管理を実施しています。また、手術中の脳機能モニタリングを駆使した安全な手術を行っており、良好な成績を収めています。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: 脳神経外科外部リンク
最終更新日:2018年3月23日

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