症状
皮膚表面にある表皮細胞ががん化したものです。最初は赤い斑や硬いイボ状のしこりとして始まり、増大するとただれたり、出血するようになったりします。悪臭を伴うこともあります。しこりがくずれて潰瘍(深くえぐれたような状態)を作る場合やカリフラワー状に隆起する場合もあり、色々な形を成します(図1)。
有棘細胞がんには様々な前がん病変(がんになる前の段階)が知られています。前がん病変としては熱傷瘢痕(やけどのあと)、慢性創傷(キズ)や褥瘡(床ずれ)、慢性放射線皮膚炎などが、早期病変としてはボーエン病 、光線(日光)角化症 、白板症などが、挙げられます。
図1.やけどの傷あと(瘢痕)から生じた有棘細胞がん
診断
有棘細胞がんは多くの場合、皮膚科の医師が診ただけで見当がつきますが、診断を確定するためには生検による顕微鏡の検査が必須となります。
治療
手術(外科的切除)による治療が第一選択です。目で見える病変から、取り残しのないように安全域(マージン)を取って切除します。顕微鏡の検査で取り切れていることが確認できれば、がんの治癒が期待できます。手術後は、手術した部位における再発や、リンパ節や肺など他の臓器への転移を生じていないか、定期的な通院や検査をします。
手術以外の治療法として、放射線治療があり、有棘細胞がんに対して効果があります。しかし、取り除く治療である手術に比べると、がん細胞が残ってしまったり、その結果として再発しやすかったりします。そのため、体の調子が良くないなど、手術ができない患者さんに対して行われたり、目の周りなどがんが発生した部位などの理由から手術が勧められない場合に実施されることが多いです。また、手術した結果、顕微鏡の検査で取り切れなかった場合に、再手術の代わりに放射線治療が行われる場合もあります。
病気がさらに進み、他の臓器に転移すると、治すことを目指した手術はできなくなります。治すことができない場合には、病気の進みを遅らせることを目標にした、抗がん剤による治療になります。 抗がん剤治療として、主にシスプラチン(カルボプラチン)とアドリアシン(エピルビシン)を併用するCA療法やC'A'療法のほか、CPT-11などが使用されています。しかし、有棘細胞がんに対する効き目が得られないこともあります
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生活上の注意
≪手術を受けたあと≫
手術による傷が落ち着くまでは、担当医の指示に従って傷の手当をしたり、運動などを制限したりします。また、有棘細胞がんが再発しないことを確認するため、定期的な通院をします。指示がなければ生活における注意はありません。
≪抗がん剤による治療を受けている間≫
抗がん剤は、薬による副作用が多く、重く出ることもあります。皮膚、胃腸や骨髄への副作用が生じやすいため、スキンケアや食事、服薬や感染予防など、担当医の指示に従うようにしましょう。
≪発症を防ぐために。早い段階で診断や治療につなげるために≫
過度の日光にあたることで引き起こされる場合が多いとされています。また、皮膚に何らかの異常が現れて数週間たっても消えない場合、皮膚科を受診することが必要です。前述した有棘細胞がんが発生しやすい素地がある場合は、特に注意が必要です。
慶應義塾大学病院皮膚科での取り組み
当科では、ダーモスコピーや病理組織検査の結果に基づいて正確に診断し、治療を行っております。病気の状態に応じた適切な治療を提案することが可能です。日帰り手術から入院での全身麻酔下手術まで、さらには放射線治療も提供可能です。手術が適さない状態の患者さんに対する抗がん剤治療や緩和治療も行っており、患者さんの病態に合わせた治療法を選択していただけるよう努めております。
その他、最新の治療法や治験など臨床試験の情報も提供可能です。
さらに詳しく知りたい方へ
- 皮膚悪性腫瘍ガイドライン(日本皮膚科学会)
日本における有棘細胞がんの治療ガイドラインも閲覧可能です。 - 臨床研究実施計画・研究概要公開システム
日本で実施している治験など臨床試験の情報が検索できます。「対象疾患名」に「有棘細胞癌」と入力します。
文責:
皮膚科
最終更新日:2020年1月27日