症状
高齢者の眼のまわりや鼻、耳の周囲などに好発する黒色から灰黒色の盛り上がりで、ゆっくり増大するとともに中央が崩れて潰瘍(深くえぐれたような状態)をつくるようになります(図1)。また、辺縁では灰黒色のつぶ(小結節)が真珠の首飾り状に配列するのが特徴とされます。以上のような症状は悪性黒色腫でもみられるため、視診だけでは区別が困難な場合もあります。転移は非常にまれで、原則としてまず転移しないとされています。統計では基底細胞がん全体の0.01~0.1%に転移がありますが、転移するのはほとんどが再発例や巨大な腫瘍の場合です。しかし、放置すると周囲に広がって組織を破壊していくため、治療が必要となります。
図1.鼻の背に生じた基底細胞がん
診断
基底細胞がんは多くの場合、医師が診ただけで見当がつきますが、診断を確定するために生検を行う場合もあります。また、前述のダーモスコピーが診断に有用で、様々なパターン解析がなされ診断精度が向上しています。
治療
治療法は外科療法が標準です。腫瘍の外側3mmを切除し、皮下脂肪組織も含め十分な深さまで切除した上で、キズを直します。皮膚がんの内、最も予後(病気の見通し)はよいとされています。初回で完全に切除できれば再発率は非常に低くなります。
生活上の注意
基底細胞がんは日光にあたることで引き起こされる場合が多いので、日にあたることを避ける、紫外線防止用の衣類を着用する、日焼け止めを使うなどの予防策が取れます。
慶應義塾大学病院での取り組み
当科では、ダーモスコピーおよび細胞の検査(病理組織検査)の結果に基づいて正確に診断し、外科的治療を中心に患者さんの病態に合わせた治療法を選択していただけるよう努めております。
さらに詳しく知りたい方へ
- 皮膚悪性腫瘍ガイドライン(日本皮膚科学会)
日本における基底細胞がんの治療ガイドラインも閲覧可能です
文責:
皮膚科
最終更新日:2017年3月24日