症状
粉瘤(別名:表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)、アテロームとも呼ばれます)とは、ドーム状に盛り上がった半球状の腫瘍で、中央に黒点状の開口部を伴います。強く圧迫すると、開口部から臭くてドロドロした物質が排泄される場合があります。毛穴の入り口の部分に袋状構造物ができ、その中に古い角質(いわゆる垢)がたまる良性の腫瘍です。 "しぼうのかたまりが出た"といって来院される患者さんもいますが、正しく表現すれば"皮膚から出る垢のかたまり"であるのが粉瘤です。内部物質に細菌が侵入して化膿することがあり、これを炎症(化膿)性粉瘤と呼び、膿みがたまった状態(膿瘍)になり患部は赤く腫れ上がり、痛みを伴います(図1)。
図1.背部に生じた粉瘤
この例では2つの粉瘤が並んで存在しています。点線で囲んだ範囲が盛り上がっていて、皮下に袋が存在しています。
診断
ほとんどの場合、見ただけで診断することができますが、巨大な場合や病変が深くまで及んでいるときなどは、周囲との関係をみるために超音波検査やMRI・CTの検査を要する場合があります。
治療
(1)炎症を伴わない場合
粉瘤の袋状構造物(被膜)は薄い壁でできており中に垢状物質を入れています。治療を希望される場合は、その袋状構造物を外科的に切除する(手術を行う)必要があります。被膜(ふくろ)の一部は皮膚に癒着しており、その部分の皮膚は一緒に切除し再発を防止します。細菌感染がなければ被膜は周囲の組織から簡単にはがれてきれいに摘出できます。あくまでも良性腫瘍ですので、切除するか、しないかは患者さんの自由意志です。しかし、放っておくと、炎症を起こしたり、非常に大きくなったりする場合があります。
(2)炎症を伴う場合
この場合は(1)に比して周囲の壁構造が不明瞭となっているため、手術はできません。局所麻酔をした上で、速やかに表面の皮膚を少し切り、膿みを外に出し、抗生剤の投薬を要します。袋状構造の内部を洗浄する必要があり、連日病院に来ていただく場合があります。
慶應義塾大学病院での取り組み
炎症を伴わない場合の粉瘤は外来手術室で日帰り手術を行っています。炎症を伴わないが大きいもの、深いものに関しては入院の上での手術も行っています。
さらに詳しく知りたい方へ
- 日本皮膚科学会ホームページ 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)
全国の皮膚科医が参加して構成する学会組織の患者さん向けのホームページです。
文責:
皮膚科
最終更新日:2017年3月24日