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唾液腺腫瘍 (耳下腺腫瘍、顎下腺腫瘍など)

じかせんしゅよう、がっかせんしゅようなど

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概要

唾液腺腫瘍とは、唾液をつくる唾液腺に生じる腫瘍のことです。唾液腺には、耳下腺(じかせん)、顎下腺(がっかせん)ならびに舌下腺(ぜっかせん)の大唾液腺と、口腔内の小唾液腺とがあります。唾液腺腫瘍の80~90%は耳下腺と顎下腺に発生しますので、耳下腺腫瘍と顎下腺腫瘍が唾液腺腫瘍の代表的疾患です。

腫瘍には良性と悪性があり、その割合はおおよそ8:1〜9:1です。病理組織学的に多くの種類に分類されます。良性腫瘍では多形腺腫(たけいせんしゅ)、ワルチン腫瘍が多くみられます。悪性腫瘍(=がん)では粘表皮(ねんひょうひ)がん、唾液腺導管(だえきせんどうかん)がん、腺房細胞(せんぼうさいぼう)がん、腺様嚢胞(せんようのうほう)がん、多形腺腫由来(たけいせんしゅゆらい)がんなどが多く発生します。これらの腫瘍が生じる原因は分かっていません。

症状

唾液腺腫瘍の症状は、ほとんどが耳の周囲や顎の下のしこりです。しこりが急に大きくなる場合や、痛みや顔の麻痺を伴う場合は悪性腫瘍が疑われます。

悪性腫瘍は頸部リンパ節に転移することがあり、その場合は頸部のしこりも現れます。

診断

悪性腫瘍は硬く、可動性に乏しいといった特徴がありますので、耳鼻咽喉科医の触診は重要です。次に超音波検査(エコー)MRICTなどの画像検査を行います。
次に、皮膚から注射針を刺して腫瘍細胞を吸い取り、顕微鏡で腫瘍細胞を観察する穿刺吸引細胞診という検査を行います。良性・悪性の判断を大まかに行うことができます。検査結果が出るまで1週間程度かかります。最終的には、手術で摘出した腫瘍の病理組織検査によって診断が確定します(つまり良性か悪性かがはっきりします)。悪性腫瘍の場合、PET-CT検査を行い転移がないか全身の評価を行います。

治療

唾液腺腫瘍が良性であっても悪性であっても、薬で治すことはできません。全身麻酔下の手術が基本となります。悪性腫瘍が疑われる場合は速やかに手術を行います。良性腫瘍が疑われる場合は患者さんと相談し、治療方針を決めます。良性腫瘍が疑われる場合であっても、摘出してはじめて診断が確定すること、良性腫瘍でも徐々に増大すること、良性腫瘍でも悪性に転化する可能性があることなどから、基本的には手術をお勧めしています。もちろん、ご高齢の患者さんや重篤な持病があって全身麻酔・手術が難しい場合は例外です。

耳下腺良性腫瘍の場合は、耳の前方から耳の後ろ、首の横しわに沿って皮膚をS字状に切開し、顔面神経(顔の筋肉を動かす神経)を確認・温存しながら、腫瘍と周りの腺組織をわずかに付けて切除します。手術中に腫瘍細胞がこぼれると術後、再発の原因になりますので、腫瘍を被う膜を破らずに摘出することが重要です。最後に皮膚を丁寧に縫合しますので、術後3か月程度で傷あとは目立たなくなります。また、慶應義塾大学病院では顔面神経を温存するために、手術中に全例で神経刺激装置(Nerve Integrity Monitor; NIM)を用いています。

耳下腺がんに対しては、腫瘍とともに腺の部分切除あるいは全摘出を行います。また顔面神経にがんが入り込んでいる場合には神経も切除し、神経移植を行うこともあります。手術後に放射線治療や化学療法を行うこともあります。がんが腺の周囲に広がっている場合には拡大手術が必要です。リンパ節転移がみられる場合には、頸部のリンパ組織を取り除く頸部郭清術(けいぶかくせいじゅつ)を行います。

顎下腺腫瘍の場合は良性でも悪性でも顎下腺を全摘します。悪性腫瘍の場合、耳下腺がんと同様に術後に放射線治療や化学療法を行うこともあります。頸部のリンパ節転移がみられた場合は頸部郭清術を行います。

慶應義塾大学病院での取り組み

検査はすべて外来通院中に行います。手術の前日に入院していただき、入院期間は約1週間です。年間の手術件数は約40~50件です。

耳下腺良性腫瘍では顔面神経の温存が重要ですが、専任スタッフが中心となって手術を行いますので心配はいりません。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: 耳鼻咽喉科外部リンク
最終更新日:2023年3月6日

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