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アレルギー性結膜炎

あれるぎーせいけつまくえん

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概要

アレルギーとは、外から入ってくる異物に対して、体が過剰に反応することで起こります。アレルギーの主な症状はかゆみ、充血、浮腫です。清潔な環境になり、人体に備わった防御機構が本来の敵以外の物質に過剰に反応することが増えてきていることが、アレルギー性疾患が増加している原因のようです。アレルギー性結膜炎は何歳でも発症する可能性がありますが、好発年齢としては図1のように10歳代が最も多く、年齢が高くなり免疫が低下するに従って発症頻度が徐々に落ちていきます。結膜は直接空気と接していますので、様々な異物が飛び込んできます。眼のアレルギーを起こす原因物質としては、ハウスダスト、花粉などが代表的です。それぞれの原因により、予防方法や治療方法のポイントがありますので以下に述べます。

図1.アレルギー性結膜炎の年齢分布(文献1を一部見やすいように改変)

図1.アレルギー性結膜炎の年齢分布(文献1を一部見やすいように改変)

アレルギー性結膜炎の分類

  1. 花粉症
    花粉が原因で生じるアレルギーです。花粉症を起こす植物としては、春先に多いスギ、夏のイネ科の雑草、秋に多いブタクサなどが有名ですが、花粉そのものが毒性をもっているわけではありません。

    夏のイネ科の花粉や秋のヨモギやブタクサなどの雑草系の花粉は飛散距離が数十メートルですが、スギやヒノキ、シラカンバなどの樹木系の花粉は風に舞い上げられることで100㎞以上飛散します。したがって、花粉の種類によって予防や防御の方法を変える必要があります。

    花粉が体に入ってくると、「マスト細胞」が過剰に反応して、「ヒスタミン」などの化学伝達物質をたくさん放出してしまうことが花粉アレルギーの原因です。症状は眼のかゆみ・充血・異物感・目やになどです。花粉症では、毎年決まった季節に症状がみられることが特徴で、主な花粉の飛散時期は図2のようになります。

    図2.花粉の種類別飛散時期(文献2)

    図2.花粉の種類別飛散時期(文献2)

  2. ハウスダストによるアレルギー性結膜炎(通年性アレルギー性結膜炎)
    ハウスダストによる結膜炎も、原因や症状は花粉症と同様です(異物が花粉ではなく、ハウスダストであるという違いだけです)。しかし、ハウスダストは花粉と異なり、常に身の回りにあるので、一年を通して症状が慢性的にみられるのが特徴です。

    ハウスダストの中にもいろいろなものがあり、ほこりの中に混じって生きているダニ、ダニの死骸(しがい)や糞(ふん)、ヒトや動物のフケや毛、カビなども含まれます。これらが無数のほこりとなって空中に舞い上がり、結膜に付着すると結膜炎を引き起こします。この中で特に問題になるのがヒョウヒダニ属のコナヒョウヒダニやヤケヒョウヒダニです。ヒョウヒダニは、温度が約25℃、湿度が70~80%の環境がもっとも繁殖しやすいといわれています。最近の住まいは気密性の高い窓が多く、冷暖房設備が整っています。この通気性の悪い環境がダニにとっては好都合になるので、注意が必要です。したがって、掃除、ダニ除去、換気などの環境整備による抗原除去が非常に重要となります。

  3. 春季カタル
    春季カタルはアレルギー性結膜炎の慢性重症型です。従来は、10歳くらいまでの男児に多くみられ、10歳を過ぎると症状は軽くなり、自然治癒することが多かったのですが、アトピー性皮膚炎を合併することが多くなった最近では、20歳代でも強い症状がみられる人がいます。目のかゆみが非常に強いうえ、黒目(角膜)の表面に多くの小さな傷ができるために異物感が強く、光をまぶしく感じます。炎症が強いときは、角膜に白い混濁ができることがあります。ひどくなると、混濁部分で上皮が剥がれ落ちて「角膜潰瘍」という状態になることもあります。

  4. 巨大乳頭結膜炎
    巨大乳頭結膜炎とは、上まぶたの裏に、大きなボツボツとした結膜乳頭による隆起が多数発生し、炎症を起こしている状態です。コンタクトレンズについたタンパク汚れの変性物に対するアレルギー反応が原因で、汚れたコンタクトレンズで発生します。異物感、くもり、目やになどが出るほか、重症になるとコンタクトレンズが上方にずれやすくなります。

症状

アレルギー性結膜炎の症状は、まず目やまぶたがかゆくなります。目をこすったり、かいたりしていると次第に痛みが加わり、目がゴロゴロした感じになります。そしてそのまま放っておくと結膜が充血して、まぶたが赤く腫れてきます。さらに症状が悪化すると、角膜周囲が充血して、結膜にゼリー状の目やにが出てきます。悪化させないためには、このような症状になる前に対処することが重要です。まず、目にかゆみがでてきた段階ですぐに眼科医を訪れてください。

診断

アレルギー性結膜炎は、充血やかゆみなどの症状や結膜の状態から診断します。客観的に確定診断をするには、結膜上皮細胞を擦過採取し、顕微鏡で好酸球(アレルギーで出てくる炎症性細胞)がいるかどうかを観察する必要がありますが、実際の診療では涙液中、血清中の免疫グロブリンであるIgE量を測定して診断(準確定診断)します。採血をして血清中の抗原特異的IgE抗体濃度を測定することは、どの抗原に反応しているかを知ることができ、予防や治療の際に非常に有益な情報を得られます。

治療

抗アレルギー作用をもつ目薬を用いた治療が主に行われます。花粉症の場合、あらかじめ季節が判明しているときは、かゆみなどの自覚症状が出現する前に目薬をつけ始めることで、症状の出現を予防したり、軽くしたりすることができます。強い症状が出る前から花粉は飛んでおり、早めに点眼開始することで効果が高まります。また、かゆみを引き起こすスイッチ(ヒスタミン受容体)を減らすことのできる点眼薬も登場しましたので、初期療法に有効です。

抗アレルギー点眼薬にはヒスタミンH1拮抗(きっこう)点眼薬とメディエーター遊離抑制(ゆうりよくせい)点眼薬の2種類があります。ヒスタミンH1拮抗点眼薬はかゆみを引き起こすヒスタミンの作用を直接阻止するので、主にかゆみの強いときに処方されます。メディエーター遊離抑制点眼薬はヒスタミンなどを増やさないようにする作用がありますが、効果が現れるまで2週間くらいかかるため、症状が現れる前から使い始める必要があります。これらの抗アレルギー点眼薬は比較的副作用の少ない薬です。使用中は勝手に中断することなく医師の指示に従って使うことが大切です。また、重症になると副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン(ステロイド)点眼薬が用いられます。ステロイド点眼薬を使用するときは眼圧が上がってしまう場合があるので、必ず眼科で眼圧を測りましょう。

目薬だけで症状が治まらないときには、抗アレルギー薬を内服することもあります。前述した春季カタルなどの重症例では、2006年、2008年に登場した免疫抑制点眼、少量のステロイド薬を内服したり、結膜へのステロイド薬の注射などを併用したりすることもあります。以上の治療法は、症状を抑える「対症療法」といわれる方法です。

これらに対し、アレルギーのそのものを改善する方法として、従来減感作療法・脱感作療法と呼ばれていたアレルゲン免疫療法という治療が登場しており、ダニやスギ花粉その他の物質にアレルギー反応を起こさないようにする方法です。現在は舌下免疫療法製剤、皮下注射法製剤などがあります。

アレルギー性結膜炎の予防方法

花粉症の場合は、症状の出現しやすい季節にできるだけ花粉が目に入らないように工夫することが重要です。花粉防止用の眼鏡やひさしのある帽子の着用が効果的です。花粉が飛びやすい日は外出や洗濯物などを外に干すことを避ける、外出から帰宅したときには服についた花粉を十分に落とすことも有効です。洗眼も有効だと考えられていますが、カップ式の洗浄器具・洗眼剤は眼のまわりの汚れや原因物質をしっかり取り除いてから使用する、防腐剤の入っていないタイプを使用することなどを守る必要があります。防腐剤無添加の人工涙液を使い、洗い流すように数滴点眼するとよいでしょう。ハウスダストの場合は、部屋の清潔を心掛けたり、寝具を干したりするのも効果的です。また動物を屋内で飼うことは避けたほうがよいでしょう。

コンタクトレンズ装用は、アレルギー性結膜炎悪化の原因になるので可能な限り装用を中止し眼鏡を使用することが好ましいですが、頻回交換型(2week)などを毎日交換型(1day)にすることで症状が軽減されることもあります。

慶應義塾大学病院での取り組み

眼科アレルギー外来では、重症な春季カタル、アトピー性角結膜炎の患者さんを中心として診療を行っています。そういった重症のアレルギー性結膜炎は、短い期間で治療が終わるものではなく、長期間の継続した治療が必要になってきます。抗アレルギー点眼薬やステロイド点眼薬の治療では安定しない患者さんに対して、生活習慣の改善から指導し、免疫抑制剤点眼も組み合わせた治療を行っています。免疫抑制剤点眼の登場で頻度はかなり減少しましたが、点眼治療では改善しない進行性の巨大結膜乳頭に対しては手術で切除を行うこともあります。

さらに詳しく知りたい方へ

文献1)日本眼科医会アレルギー眼疾患調査研究班. アレルギー性結膜疾患の疫学. 日本眼科医会アレルギー眼疾患調査研究業績集. 大野重昭(編). 東京. 日本眼科医会. p.12-20(1995).

文献2)アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン編集委員会ほか. アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第2版). 日本眼科学会雑誌. 114巻10号. p.829-870(2010).
※図2は「追記2 原因抗体」を参照

文責: 眼科外部リンク
最終更新日:2024年2月29日

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