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小児歯科疾患

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虫歯

虫歯は、正式には齲蝕(うしょく)といいます。ミュータンスレンサ球菌という細菌が、歯垢(デンタルプラーク)を形成し、主に砂糖(ショ糖:シュークロース)を栄養とし、酸を産生し、歯を溶かす(脱灰する)ことで虫歯になります。ですから、食べ物に気を付け、歯垢を除去し、歯を強くすれば、虫歯を防ぐことができます。


虫歯予防

【歯磨きはいつから始めるのでしょうか?】
生後6~8ヶ月頃、歯が生えてきます。その頃はまだ歯が少ししか出ていませんので、歯ブラシを当てると歯肉に当たってしまい痛がります。この頃は、清潔なガーゼハンカチなどで拭くだけで良いでしょう。ガーゼや、指の感触に慣れるように、優しく笑顔で触ってあげましょう。歯ブラシを使い始めるのは、上下の前歯が4本ずつ生えそろってからで良いでしょう。小さく柔らかい歯ブラシを使って磨きます。図1に保護者による後磨き用の歯ブラシを示します。齲蝕の原因菌である、ミュータンスレンサ球菌が、赤ちゃんの口から検出されるのは、9ヶ月以降という報告もあります。この頃になると、前歯4本が揃ってくるお子さんもいます。ですから、4本前歯が揃ったら歯磨きを始めましょう、というのは、理にかなっていることになります。

それから、この頃は歩き始めの時期です。歯ブラシをくわえたまま遊んでいると、転んで口の中を怪我します。歯磨きの時間と遊ぶ時間とはしっかり分けてください。1歳半頃になると奥歯(第一乳臼歯)が生えてきます。臼歯の溝の部分は虫歯になりやすいですから、歯ブラシをしっかり当てましょう。

歯磨きをなかなかさせてくれないお子さんもいます。3歳くらいになって話が分かるようになるまでは、よくあることなので、笑顔で根気強く続けてください。


図1後磨き用歯ブラシ

図1. 後磨き用歯ブラシ


【食生活と虫歯】
一般的に離乳食を開始するのは6ヶ月前後といわれています。以前は離乳食の開始前に果汁を与えることもあったようですが、アメリカ小児科学会は、生後6ヶ月未満の乳児に果汁を与える栄養学的な適用はないとしています。離乳食としては鉄分が多い食物が推奨されます。鉄分を充分摂取していれば、鉄の吸収を促進させるために、果汁の形でわざわざビタミンCを補給する必要がないということなのです。

また、果汁はコップから飲める乳児のみに与えるほうが良いとしています。歯が、果汁の中に含まれる糖類に長時間さらされることは、虫歯の原因になりかねません。アメリカ小児科学会と小児歯科学会は、果汁はコップで与え、哺乳びんをくわえたまま寝かさないように注意を呼びかけています。果汁の入った哺乳びんやパック入りの果汁入り飲料を1日中持ち歩く習慣は良くありません。また、果汁の取り過ぎにも注意を促していて、乳児にはつぶしたり、裏ごししたりした果物そのものを摂取することを推奨しています。

離乳食を始めるときは、どろどろの形態から始めて、口の動きやお子さんの食べる様子をみて、徐々に舌と口蓋(上顎)で押しつぶせるもの、左右の顎でつぶせるもの、噛める物へと移行していきます。最近の厚生労働省の報告では、離乳の完了は生後18ヶ月頃と、以前より遅くなり、お子さんの発達をみながらゆっくり進めることが推奨されています。

1回の食事が充分取れて、1日に3回で充分なら良いのですが、まだ離乳の完了した頃は、1回の食事で足りない分を補う必要があるかもしれません。いわゆるおやつとか間食とかいわれるものです。おやつというとお菓子や甘いものを思い浮かべてしまいますが、間食とは1回で食べることのできない食事量を補う捕食と考えてください。

また、離乳食を進めるときに、スプーンで水分を飲ませる練習をして、やがてはコップで飲めるように練習しましょう。上唇で飲食物を摂るときに、固形物と水分では異なる捉え方をしています。その違いを覚えさせてあげましょう。図2は、初めて離乳食をあげるときの、スプーンの一例です。黄色がペースト食用で、ピンクが水分用です。なお、離乳の完了に伴い哺乳びんをやめるためには、コップでしっかり飲めるようになる必要があります。1歳半を過ぎても哺乳びんを使用していると、哺乳びん齲蝕という状態になってしまうことがあります。さらに、哺乳びんに果汁や清涼飲用水、スポーツドリンクを入れて飲ませていると、この哺乳びん齲蝕の危険性が高まります。


図2スプーンの一例

図2. スプーンの一例


【歯を強くする】
フッ素が虫歯予防に有効であることはよく知られています。保健所の1歳半健診や3歳児健診等において無料で塗ってくれるところもあります。でも虫歯予防の基本は、食生活と歯磨きです。フッ素を塗ったからといって安心しないでその後も食生活に気を配り、口のケアを忘れないようにしましょう。


口唇口蓋裂があると虫歯になりやすいのですか? 

確かに口唇口蓋裂のお子さんの顎裂部付近に生えてくる歯は、歯の外側のエナメル質という部分が弱く、エナメル質形成不全と呼ばれる状態になっていることがあります。一方、唇顎口蓋裂児チーム医療の一環として、早期に口腔ケアを始めたお子さんは、他のお子さんより齲蝕が少なかったという報告もあります。食べ物に気をつけ、歯垢を除去すれば、たとえ歯の質が弱くても虫歯を予防することができるのです。



そのほかに口の中で気になることはありませんか?

乳歯の早期萌出

早期萌出とは、何らかの原因で正常な萌出時期よりも、早い時期に歯が出てくることをいいます。乳歯は、一般に6~8ケ月頃に下顎の前歯(乳中切歯)に始まるとされていますが、出生時すでに萌出している歯を出産歯、新生児期(生後1ヶ月以内)に萌出している歯を新生歯といい、総称して先天歯と呼んでいます。


【どのくらいの赤ちゃんにみられますか?】
先天歯の発生頻度は、0.02~0.19%であるとされています。ですからそれほど多いものではありません。多くが下顎の前歯(乳中切歯部)にみられます。本来そこにあるべき乳歯が早く出てきてしまった場合と、余分な歯(過剰歯)の場合があります。

一方、口唇口蓋裂児における、早期萌出歯の出現頻度は、比較的多いとされています。海外の調査では、生後3ヶ月未満の1,019名の唇顎口蓋裂児の調査の結果、両側唇顎口蓋裂児で10.6%、片側唇顎口蓋裂児で2.02%との報告があります。その多くが上顎の割れている部分に出てきて、やはり本来あるべき乳歯と、過剰歯の場合とがあります。


【乳歯、余分な歯の区別はどうやってわかりますか?】
早期萌出乳歯が、本来の乳歯が萌出したものか、過剰歯(余分な歯)なのかの判断は、X線撮影により確認するか、あるいはほかの乳歯が萌出するまで待つことになります。多くが未成熟のまま出てきた本来の乳歯であるという報告もあります。しかしながら、口唇口蓋裂児の場合、過剰歯ができることが多いといわれており、その区別は難しく、成長を待たなくては分からないことが多いようです。


【治療】
誤飲・誤嚥や、周りの歯ぐきへの炎症を考慮して、抜歯することがあります。特に下顎乳切歯に関しては、授乳障害(赤ちゃん自身がうまく飲めない、あるいは母側の要因として授乳する時乳首をかまれて痛いなど)、リガ・フェーデ病(赤ちゃんの舌の裏側に傷を作ってしまうこと)を考慮する必要があります。一般に35mm以下のものは誤飲・誤嚥の原因になるとの報告があり、歯根が未完成で動揺している場合は、抜歯を選択した報告が多くみられます。また口唇口蓋裂児の場合は、顎矯正装置(ホッツ症)装着の妨げになるために抜歯することもあります。


上皮真珠

【症状】
生後数ヶ月の乳児の歯肉に、半球状で米粒大の独立した、あるいはいくつか並んで、種々の大きさの光沢のある白色あるいは黄白色の腫瘤がみられることがあります(図3)。真珠に似ていることから、上皮真珠と呼ばれています。これは、歯を作った組織の一部が吸収されずに残り、変化して出てきたものです。口蓋(上顎)正中部に現れるものは、エプスタイン真珠と呼ばれています。

ある調査の結果、その発生頻度は43.6%とされていますが、赤ちゃんの口の中をずっとみていくと、多くのお子さんに見られ、比較的発現頻度が高いようです。上顎の前の方にみられる場合や、下の奥歯の生えてくるところなどの分かりやすい場所に出てきたものや、大きいものは、養育者が気付かれると思います。口蓋の正中部にみられるものや、小さいもの、個数の少ないものは、養育者が気付かない場合もあります。


【治療】
臨床的には、ミルクが飲めない、痛みがあるなどの症状はありません。また数週間から数ケ月で自然に脱落しますので、治療も必要ありません。また、その後の歯の生え方にも影響はないので心配は要りません。


図3上皮真珠

図3. 上皮真珠



慶應義塾大学病院での取り組み

慶應義塾大学病院では、以前より口唇口蓋裂のチーム医療が行われており、形成外科には小児歯科専門医が勤務しています。ここでは子どもの口の中の疾患について説明しています。口唇口蓋裂を持つお子さんだけでなく、新生児期から乳幼児期にかけての口のなかのことを知りたい方はどうぞご覧ください。

小児歯科疾患についてご相談のある方は、まずは下記の外来にてご相談ください。
担当医: 久保田一見(木曜日の午前中)

文責: 形成外科外部リンク
最終更新日:2019年1月29日

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