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関節リウマチのリハビリテーション

かんせつりうまちのりはびりてーしょん

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概要

関節リウマチでは、複数の関節に痛みや腫れ、熱感がみられ、症状が進行してくると関節が変形したり、動きが制限されて、日常生活にも支障を来すようになります。関節リウマチは女性に多く、30~40歳代に発症のピークがあり、良くなったり悪くなったりしながら徐々に進行します。関節の障害の進み方は患者さんによって差があり、手足の比較的小さな関節に限局する場合、膝や股関節などの大きな関節も障害される場合、全身の関節が著しく変形してしまう場合があります。また、関節の変化だけでなく、しばしば貧血や微熱などの全身の症状も起こります。関節の痛みなどを原因として、家事を含めた日常生活に様々な影響が及ぶようになるため、変形が進行しないように関節を保護しながら生活する方法を身につけることが大切になります。

診断

関節リウマチのリハビリテーションは、痛みや変形の原因となる炎症の程度、すなわちリウマチの活動性を目安にして、保護的に行うか、積極的に行うかを決定します。活動性が高い場合には、痛みが増したり変形が進行しないように、関節を守り、安静を保ちながら日常生活を送れるようにすることを目標にします。一方、炎症が落ち着いていれば、関節の運動や筋力増強訓練などを施行します。リウマチの活動性は、朝のこわばりの持続時間、疼痛・腫脹関節数、握力、歩行速度、CRP・赤沈などの血液検査での炎症反応、消炎鎮痛薬などの使用状況、自覚的な痛みの程度などで判定されています。
リハビリテーションを具体的に計画するためには、個々の患者さんが日常生活において、痛みや腫れがある関節をどのように使用しているかを評価しなくてはなりません。仕事や家事動作で一方向に力が加わる手作業を行っていたり、長い時間、立ち仕事をしなくてはならない場合には、関節の変形や腱の断裂を予防するための生活指導や補装具の検討が必要になります。すでに変形を来している場合には、変形が進まないように関節を保護しながら、目的とする動作や作業を行えるように自助具や装具の処方を行います。

治療

  1. 炎症活動期のリハビリテーション
    リウマチの活動期におけるリハビリテーションの原則は、疼痛の鎮静と変形の予防です。しかし、全く動かさないでいると、関節が固まってしまったり、筋力や体力が落ちてしまいますので、関節を保護しながら生活の中で手足を使うことが重要です。
    • 関節保護の方法: 炎症が強く、動かすことで痛みを引き起こしてしまうような関節には、動かないように固定するための装具を作製します。最もよく用いられるのが手首を固定するための装具です(写真1)。足の痛みに対しては、膝装具や靴型装具、杖などの歩行補助具を併用して、体重がかかる時に痛みが和らぐようにする工夫が必要になります。
    • 関節可動域の維持:関節が動く範囲、すなわち関節可動域を保つことは、生活機能を保つためにとても大切です。一般に、朝のこわばりが取れてから、関節の曲げ伸ばしを痛みが残らない程度に自分で手伝いながら、1日2~3回行うようにします。
    • 筋力の維持:関節を動かさないでいると筋力が低下し、その状態で運動をすると逆に関節に負担をかけてしまう可能性があります。したがって、筋肉の力を保つことが必要になりますが、筋力をつけるために関節を動かすと、痛みが生じて力が入らず、そのまま無理に行うと関節を痛めてしまう危険もあります。そこで、リウマチの患者さんには、最も痛みを感じない位置で、関節を動かさないように固定し、曲げる方向および伸ばす方向に力を入れる運動、すなわち筋肉の長さが変化しない等尺性収縮(とうしゃくせいしゅうしゅく)による運動を指導しています。
    写真1

    写真1

  2. 炎症非活動期のリハビリテーション
    リウマチの活動性が落ち着いている時期には、関節の動きや筋力を回復させるためのリハビリテーションを行います。関節の変形を誘導してしまわないように、正しい運動の方法と生活における関節の使い方を身に付けます。
    • 関節可動域訓練: 関節可動域に制限があれば、関節面に負荷がかからないように少し引っ張りながら、ゆっくりと曲げ伸ばしします。動かす時に痛みを感じるようであれば、温めたり、逆に冷やしたりすることで痛みを和げてから行うと効果的です。
    • 運動療法: 関節手術の後には、手術した関節の機能を高めて、生活機能の改善に結びつけられるように運動療法を行います。プール内での運動は、足に加わる力を減らし、リラックスした全身運動を実現できます。
      リウマチ体操は、関節可動域と筋力を改善するために棒やゴムチューブなどを用いて行う体操です。筋力をつけるための運動は、活動期と同様に等尺性収縮を用いて安全に行うことができるように工夫されます。それぞれの患者さんで改善するべき関節運動に的を絞り、体操としてメニューを組むことができるので、自主的に毎日行うことが可能です。
      最近では、リウマチの患者さんでもスポーツのような運動を行うことで、体力を高めるだけでなく、関節破壊を予防できる可能性があることが報告されています。
    • 自助具とは、日常生活における動作を助けるために用いる道具の総称です。リウマチの患者さんでは、手指の変形や肩・肘関節の動きの制限によって、つまんだり、腕を伸ばしたりすることが難しくなることが多いので、それぞれの動作を助けるための道具を作製します。例えば、手指の変形によってうまくつまめない場合には、スプーンの柄を太くして食べ物をすくいやすくしたり、ボタンエイドという道具を利用して着替えを行えるようにします(動画:ボタンエイドの利用)。腕を伸ばす範囲が制限されて手が届かない場合には、フックを備えたリーチャーと呼ばれる棒や、靴下を履きやすくするためのソックスエイドが用いられます。
    • 上肢装具
      親指以外の指が小指側に曲がる、白鳥の首のように指が変形するなどのリウマチに特徴的な手の変形に対しては、変形予防とつまみや握り動作の改善を目的とした上肢装具がを作製します(写真2)。
    • 靴型装具(リウマチ靴)
      足の関節痛や足の裏の痛み、足首や足趾の変形には、靴型装具が効果的です。靴型装具はリウマチの患者さんによく用いられるので、一般にリウマチ靴と呼ばれています(写真3)。リウマチ靴を作製する際には、足首を床面に対して垂直に保つこと、足の裏にできやすい胼胝(べんち)と呼ばれる硬い部分をパッドなどで除圧すること、足趾に負担がかからないように靴の先を大きめにして、なおかつ靴の中で足が動かないようにすることが大切です。リウマチでは扁平足になりやすいですが、そのまま歩いていると絶えず母趾に力が加わって、外反母趾変形を生じやすくなります。したがって、靴の皮革や土踏まずを支持する足底板を柔らかな素材でゆったりと作製し、足の変形が進まないように早期から予防することが大切です。この他、踏み返しを容易にする舟底形の靴底などが処方されます。
      体重を乗せた時に生じる痛みや日常生活における動作の問題をリウマチ靴が改善することは、臨床研究によって確認されています。その効果として、柔らかく、くるぶしより低い短靴よりも、側革が高くてしっかりと足を支持する靴の方が有効であることが報告されています(動画)。一方で、リウマチ靴の使い始めには違和感がある時期があり、また、しっかりと支えることで痛みが和らいだとしても、患者さんは柔らかい素材のものを好む傾向があります。
    • 杖(リウマチ杖)
      杖は、歩く際に足にかかる力を減らして、痛みを緩和するために用いられますが、リウマチの患者さんでは、手や指の痛みや変形で杖の持ち手を支持できなかったり、肘を伸ばすことができない場合があります。そこで、肘を曲げたまま前腕部分で体重を支える肘台付杖(ひじだいつきつえ)が用いられ、別名、リウマチ杖とも言われています。前腕受けの高さは、杖先を足先の前方・外方15cmの位置に置き、肘関節屈曲位で前腕の高さに一致するように調整します。
    • 関節保護と環境設定: 関節の痛みや変形は、毎日の日常生活での動作の反復によって進行します。リウマチの患者さんがなりやすい変形を予防するために必要な関節保護手技を患者さん自身が習得し、日常生活で実践することが大切です。例えば、指を小指側に捻る動作をなくすために、蛇口やドアノブに長柄のレバーを取り付けたり、重たいものを運ぶ時には前腕で支えるなどの動作を習慣づける必要があります。また、関節リウマチでは、頭を支える頸椎が亜脱臼を起こしていることがあり、その場合には枕の高さを低くすること、起き上がりの際などに首に負担をかけないようにゆっくりと行うことなどの注意が必要です。
      関節リウマチは一生付き合う病気ですので、専門の医師や療法士の指導を受けて機能の低下をできるだけ抑えるようにしていくことが大切です。

動画:ボタンエイドの利用

写真2

写真2

写真3

写真3

動画

慶應義塾大学病院での取り組み

  • 慶應義塾大学病院では、年2回、先進リウマチ医学研究会を開催しており、内科・整形外科・リハビリテーション科の医師やスタッフが集まって、最新の治療法に関する研修や症例についての検討会を行っています。
  • リハビリテーション科の外来では、理学療法・作業療法を処方するとともに、補装具が必要であれば専門外来で診療します(装具を参照)。
  • 理学療法では、下肢関節手術後の機能回復や歩く能力を高めるための運動療法を行います。
  • 作業療法では、上肢装具や自助具の作製、関節保護の指導を行い、日常生活の質を高めるための治療を行います。

さらに詳しく知りたい方へ

  • 患者さんのための関節リウマチ治療ガイドライン / 日本リウマチ財団編
    東京 : 医歯薬出版, 2006.3
    リウマチに関する知識を正しく理解できるように患者さん向けに書かれた治療ガイドライン。
  • リウマチ情報センター外部リンク
    リウマチに関係する情報が集約され、リウマチ体操などを含めて分かりやすくまとまっています。

文責: リハビリテーション科外部リンク
最終更新日:2018年3月1日

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