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鼠径ヘルニア、陰嚢水腫

そけいへるにあ、いんのうすいしゅ

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概要

小児の場合、大多数が外鼠径ヘルニア(がいそけいへるにあ)です。開存した腹膜鞘状突起(ふくまくしょうじょうとっき)内に腹腔内臓器の一部が入り込んだ状態をいいます。腹膜鞘状突起は、胎生3か月目に腹膜の一部が内鼠径輪へと突出することにより発生する小さな袋状の出っ張りです。腹膜鞘状突起は出生までに閉鎖するのですが、鼠径ヘルニアではそれが開存し、過剰腹圧や腹腔内液体成分貯留などにて発症すると考えられています。腹膜鞘状突起が部分的に閉鎖したり、穴が非常に小さいときには水がたまって男児の場合には陰嚢水腫、女児の場合にはNuck管水腫となります。
鼠径ヘルニアは生後1年以内に全体の3分の2が発症します。また両側にある場合は8%との報告があります。男児が女児より多く、右側が左側よりも多くみられます。

症状・診断

腹圧が加わったときなどに表面平滑で柔らかい鼠径部のふくらみとして発見されます。陰嚢水腫では、陰嚢内で透光性を持つふくらみに触れます。

鼠径ヘルニアでは、非常に慣れた手によると鼠径部皮下の肥厚したヘルニア嚢がすれる感覚があります(これをシルクサインと呼びます)。ヘルニアでは特に入浴後の起立時、または啼泣(ていきゅう)時に膨隆がよくみられます。ヘルニアの大半は腹圧がとれると自然にお腹に戻りますが、腸がはまり込み戻らなくなった状態を嵌頓(かんとん)と呼びます。嵌頓は放置しておくと腸の血流障害から腸が腐ったりするので手で戻します。

治療

基本的には鼠径ヘルニアの自然治癒は生後4か月以降はほとんどみられないためにこれ以降は手術治療となります。鼠径部に皮膚壁に沿って2cm大の横切開をおいて最終的にヘルニアの袋をなるべく出口近く(高い位置)にて縛ります。男児の場合、ヘルニア嚢と精巣動静脈、輸精管が伴走しているためこれを剥がして縛らないといけません。女児の場合は円靭帯とヘルニア嚢と伴走しますが、これはまとめて縛っても問題ありません。女児の場合、卵管が常に出ているスライディングヘルニアの場合が時々みられますが、この場合卵管を押し込んで縛るというやや特殊な方法を用います。嵌頓にて腸がどうしても戻らない場合には腸管が壊死に陥る可能性があり、緊急手術が必要です。

陰嚢水腫の場合、乳児の腹膜と腹膜鞘状突起に明らかな交通のない、非交通性陰嚢水腫だと約90%は自然治癒します。しかし1~2歳にても変化のないもの、明らかな交通性があるものは手術の適応となり、手術法は鼠径ヘルニアと同様です。ヘルニア、陰嚢水腫ともに慶應義塾大学病院での入院加療は原則、手術前日に入院、手術翌日に退院とします。

慶應義塾大学病院での取り組み

両側ヘルニアは8~10%にみられるため、手術側のヘルニア嚢に5mmの内視鏡を挿入し、反対側の内鼠径輪から腹腔鏡を使って精査することで反対側ヘルニアを診断しております。反対側にも発見された場合は両側手術を行い、正確な治療を目指しています。

文責: 小児外科外部リンク
最終更新日:2020年10月21日

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