概要
指または趾(足のゆび)が通常に比べて多い状態です(図1)。
図1.おやゆびの多指症
胎児においては「しゃもじ」型をした手掌原基(しゅしょうげんき:体が作られる時に、手のひらの基になる組織)に裂け目が生じることによって、独立した指が形成されます。こうした変化は胎生の14~16週ごろに起こりますが、余剰に裂け目が生じると指(趾)数は増加します。この結果多指症が発生します。この現象を引き起こす原因に関しては現在のところ不明とされています。
手では拇指(親指)に、足では小指に多く、約90%を占めます。発生頻度は1,000ないし2,000出生に1例であり、男女比は男:女=3:2です。
症状
前述したように、元来一枚の手掌原基(体が形成される段階で、手の基になる組織)に、過剰分離が生じたことが多指症の原因とされています。分離の状況は個々の症例においてさまざまであるので、それに応じて症状も異なります。
一般的に余剰指の基部が中枢に近く、かつ骨や関節で共有される部分が多いほど症状が重いとされています。例えば拇指多指症においては、程度の軽いものとしては、余剰指が末節骨に存在しかつ骨成分を含まない場合があります。このようなタイプでは機能障害はほとんど存在しません。しかし、余剰指が基節骨や中節骨に基部をもち、かつ関節が他指と共有されているタイプでは屈曲・伸展の機能障害があることが多いとされています。
治療
手術方法
症状に応じて手術方法を決定します。余剰指が小さく、かつ残すべき指とで骨または関節の共有が少ない場合には、余剰指の切除を行うのみで十分です。しかし2本の隣り合う指がほぼ同じ場合には、双方を半分ずつにし、左右であわせることにより拇指を再建する場合もあります。
このように、どの指を切除すべきか、余剰指の組織をどの程度利用するかは症例に応じて異なっており、個別に判断を行います。
手術時期
手指は露出部であり、整容上顔面部に次いで重要な意味を持つ部位であるといえます。加えて、手を握る動作は幼児にとって、両親をはじめとする大人とスキンシップを取る上で極めて重要です。したがって社会的因子の観点から見ると早期に手術を行うことが望ましいと言えます。
また、手指の正常な運動パターンを身につける上でも、早期に矯正を行うことが理想的です。このような理由で、両親はできるだけ早い時期の治療を希望する場合が多いようです。
しかし手術および麻酔が患児に及ぼす影響を考えると、ある程度成長を待ってから手術を行うのが有利です。また、後述するように症例によっては関節形成や腱移行が必要な場合も存在します。その場合、手指がある程度成長してから手術を行った方が解剖学的な位置関係を把握しやすく、正確な機能の再建を行うことができます。そのため、個々の症例に応じて詳細に検討してから治療時期を決定する必要があります。
当院においては主に1歳以後に手術を行っています。
足趾の多趾症に関しては機能的な意味が少なく、かつ靴下によるカバーも可能です。このため両親もそれほど早期の治療を希望しない場合が多く、多指症に比較するとやや手術年齢は遅くなる傾向があります。
術後の問題点
関節形成や腱移行が必要とされる症例(特に手の多指症)においては、術後指がわん曲する、いわゆる"Z変形"がみられる場合があります。
指の変形についてご相談のある方は、まずは下記外来にてご相談ください。
担当:荒牧典子(水曜午前)
さらに詳しく知りたい方へ
よくわかる子どものための形成外科 / 中島龍夫編 大阪 : 永井書店, 2005.3
文責:
形成外科
最終更新日:2017年1月23日