概要
耳介は、胎生4~20週にかけて形成されます。複雑な癒合過程を経て作られるため、先天的に最も異常が表れやすい場所の一つです。
図1.耳介の発生
副耳
典型的にはイボのような突起が耳前部にあります(図2)。多くの場合、中には軟骨が含まれていて、その発生起源は耳そのものです。頬部や頸部にできる場合もあり、首にできたものを頸耳と呼びます。発生頻度はおおむね0.4~0.5%です。
軟骨を含まず茎が小さいなどの条件を満たすものは、生後すぐに糸で縛ります。手術による切除が必要なものは、1歳前後以降に行います。
図2.副耳
耳瘻孔
耳介周辺に穴があれば、まず本疾患が疑われます。典型的には耳前部に開口部があり、外耳道上縁へ向かって瘻孔が通じています(図3)。他にも様々な場所に開口している場合があり、瘻孔の長さや深さも様々です。発生頻度は5%前後とされます。
圧迫すると悪臭を伴った粥状の分泌物が出てくる場合があり、化膿することも頻繁にあります。化膿すると患部は赤く腫れあがりますが、最終的に自潰して排膿すると一旦は落ち着く場合が多いです。病院で切開排膿すれば、化膿はより早く落ち着きます。しかし、そのまま放置しても再度化膿を繰り返す場合が多いため、一度化膿した場合には手術を行うことが望ましいです。化膿している場合には、化膿を落ち着かせてから手術を行います。
手術は瘻孔の完全摘出を行います。少しでも瘻孔が残っていれば必ず再発するため、手術用ルーペで見ながら慎重に切除します。また化膿後の手術は再発率が上昇すると言われており、化膿する前の予防的切除も広く行われています。
図3.耳瘻孔
耳垂裂
耳たぶが分裂しているものを耳垂裂と呼びます(図4)。縦方向に分裂しているもの、横方向に分裂しているもの、それらの混合したものなど、様々です。手術により、分裂した耳たぶの再建を行います。
図4.耳垂裂
埋没耳
耳介上部が側頭部の皮下に埋没した状態になっているものです(図5)。発生頻度は400人に一人程度で、両側性のものが30%あります。メガネがかけられない、マスクができないなどの障害が出ます。
耳の軟骨や皮膚がやわらかい1歳以前は、専用の器具を用いた矯正を行います。これにより手術が回避できる場合があり、また手術が必要になる場合でも、手術が行いやすい状態になります。手術は一般に就学前の5~6歳で行います。耳の上や後ろの皮膚を用いて、埋没した耳介を引き出します。
図5.埋没耳
立ち耳
一般に耳介は20~30度聳立(しょうりつ:立っていること)しています。それ以上聳立していても必ずしも異常とは言えませんが、程度が著しい場合には立ち耳や聳立耳と呼ばれ、治療の対象となり得ます(図6)。手術は対耳輪形成と耳甲介側頭縫合をバランスよく行うことで、形態を改善します。
図6.立ち耳
小耳症
耳介の一部、または全部が欠損する先天異常です(図7)。耳の穴(外耳道)が閉鎖している場合もあります。約1万人に1人の発生頻度です。手術は8~10歳以降に胸の肋軟骨を用いた手術を行います。
図7.小耳症
慶應義塾大学病院での取り組み
基本的に上記全ての疾患に対応可能です。上記以外の稀な疾患についても、適宜ご相談させていただきます。お気軽にご相談ください。
耳介の形態異常についてご相談のある方は、まずは下記外来にてご相談ください。
担当:岡部圭介(木曜・金曜午前)
さらに詳しく知りたい方へ
よくわかる子どものための形成外科 / 中島龍夫編 大阪 : 永井書店, 2005.3
文責:
形成外科
最終更新日:2017年2月24日