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脂質異常症

ししついじょうしょう

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概要

更年期以降の女性に起こりやすい生活習慣病の一つで、以前は高脂血症といわれていました。基本的に脂質代謝異常は、家族性高コレステロール血症などの遺伝的な原因とともに、加齢、食事・運動など生活習慣に起因すると考えられていますが、更年期の女性は血液中の脂質異常が起こりやすく、そのため動脈硬化による病気も起こりやすくなっていることにも注意が必要です。女性に特化しない脂質代謝異常症については生活習慣病の項にあります。
女性ホルモンの一つであるエストロゲンが、脂質の代謝に深く関わっていることが分かっており、閉経すると体内のエストロゲンの量が急に減り始めます。これに伴って、血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)やトリグリセライド(中性脂肪)は急に増えていきます。LDLコレステロールは閉経前より20%くらい高くなり、60歳頃には女性の平均値は男性を上回ります。

脂質異常症では自覚症状を起こすことはほとんどなく、検診により指摘されて受診するケースがほとんどですが、動脈硬化の重要な危険因子であり、これにより脳血管障害や虚血性心疾患など動脈硬化性疾患を合併し、生命に危険をもたらす要因となります。また婦人科領域では、手術による卵巣摘出や放射線照射による卵巣機能不全も要因の一つとなります。

図1

(Kannel WB, Hjortland MC, McNamara PM, et al. Ann Intern Med 85 :447-452,1976)

図KO-31

診断

脂質異常症は、空腹時のLDLコレステロール・HDLコレステロール(善玉コレステロール)・トリグリセライドの値で診断されます。

表1

(動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2017年度版 より)

脂質異常症は、高LDLコレステロール血症・低HDLコレステロール血症・高トリグリセライド血症に大別され、どのタイプも動脈硬化を促進しますが、最も問題になるのは LDLコレステロール値が高い場合です。実際はLDLコレステロールとトリグリセライドの両方の値が高いケースが多く、さらに動脈硬化が早く進むため心血管疾患のリスクが増します。

治療

病院で治療を受けなければならなくなる前に、日頃の健康管理が大切です。定期健診を受けて脂質異常症の原因となるコレステロールと中性脂肪の値をチェックしておきましょう。ほかの病気が原因である二次性の脂質異常症の場合もあるのでほかの数値もチェックして、早期治療を心がけることが大切です。そして、脂質異常症の予防だからといっても、むやみに食事制限をしたりして抵抗力の低下を招いたり、過激な運動で心臓や足腰に負担をかけすぎるのは避けましょう。

食事療法: コレステロールの多い食品や動物性脂肪を控え、食物繊維を十分に摂ります。
運動療法: 適度な運動として散歩やサイクリング、水泳など週3回30分以上を目標とします。
生活習慣: 禁煙や、節酒を目標とします。
薬物治療: スタチン系(クレストール®、メバロチン®)、フィブラート系(べザトール®)、小腸コレステロールトランスポーター阻害薬(エゼチミブ)などの薬剤が用いられます。

表1

慶應義塾大学病院での取り組み

当科では更年期の諸症状の治療とともに脂質異常症の診療を月曜日の午後の健康維持外来にて行っています。脂質異常症のスクリーニング検査を主に行い、治療が必要と思われる患者さんに関しては内科など専門各科とも相談して行います。詳しくは担当医にお尋ねください。

文責: 婦人科外部リンク
最終更新日:2022年5月24日

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