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IBD(炎症性腸疾患)センター
-消化器内科-

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はじめに

炎症性腸疾患とは

潰瘍性大腸炎・クローン病は10-20才代に発症し再燃(再び病状が悪化すること)と寛解(症状が落ち着いて安定した状態) を繰り返し慢性に経過する腸疾患で、総称して炎症性腸疾患(IBD:Inflammatory Bowel Disease) といいます。潰瘍性大腸炎は主に大腸に慢性炎症をきたし、粘血便、下痢、腹痛などを主訴としますが、重症例では発熱、貧血の進行などにより全身状態が悪化することもあります(図1)。クローン病は大腸のみならず小腸を中心とした消化管全体に炎症をきたす疾患で、下痢、腹痛、体重減少などの症状を呈することもあります。病状が進行すると消化管に狭窄・瘻孔(ろうこう)・膿瘍を形成し手術を要することも少なからずあり、クローン病が発症してから最初の10年で約半数の症例で手術を要することが知られています。さらに約1/3の患者さんは肛門に膿瘍や瘻孔を形成し、排便困難、肛門痛などがみられ、生活の質が妨げられることが多いのが問題点です(図2)。

  • 原因は不明だが何らかの免疫の異常が原因といわれている
  • 発症のピークは20-30代
  • 主に大腸にのみ炎症をおこす
  • 粘血便、下痢、腹痛、発熱などの症状
  • 再燃と寛解を繰り返す
  • 治療に難渋して手術を要することもある
  • 1932年に「回腸に炎症をおこす」病気としてアメリカで報告
  • 原因は不明だが何らかの免疫の異常が原因といわれている
  • 小腸と大腸を中心に炎症をおこす
  • 発症のピークは10-30代
  • 腹痛・下痢・発熱・貧血などの症状
  • 再燃と寛解を繰り返す
  • 約1/3の症例で肛門病変を有する

 図1.潰瘍性大腸炎の症状

 図2.クローン病の症状


増加する炎症性腸疾患

近年潰瘍性大腸炎、クローン病ともに患者数は増加の一途をたどり、現在潰瘍性大腸炎は約16万人、クローン病は約4万人の患者さんが存在するとされています。患者数増加の原因は病気の発症が食事や腸内細菌などの環境因子が関係しており、近年食事内容は脂質、たんぱく質など摂取量が増加したことと関連していると考えられています。治療法についても病因・病態に応じた治療法が開発され、実用化されています。慶應義塾大学病院(以下、当院)では従来の基本的な治療法と新規治療法をバランス良くおこない、再発や入院、手術となる患者さんを減らすべく努めています。詳細は当院のIBD(炎症性腸疾患)センターホームページ外部リンクやKOMPASの潰瘍性大腸炎クローン病のページを参照ください。

慶應義塾大学病院IBD(炎症性腸疾患)センターの特徴

総合病院の強みを生かした診療体制

これまで我々は約2,500名のIBD患者さんの診療を行なって参りました。IBDは内科が診療に携わることが多いですが、手術を要する症例、肛門病変を有する症例など外科医との連携は重要になります。
また潰瘍性大腸炎患者さんの約半数、クローン病患者さんの約1/3は女性であることより、患者さんが妊娠・出産する症例も多くありますが、妊娠の経過中に再燃した場合の治療法の選択、妊娠・出産の管理は豊富な経験を有したIBDの専門医と産婦人科医との連携が重要になります。さらに日本において小児のIBDを専門に診療している施設は少ない点、メンタル面の問題を管理できる精神科医や専門的な知識が備わった看護師、薬剤師、栄養士の存在も必要になってきます。
以上より、我々IBDの診療に携わるチームは、一人の患者さんを診療する際に他部門にわたる包括的治療が可能なセンターが必要と考えました。多数の診療科の結集した総合力を活かした診療体制を効果的に患者さんにお届けするために、2016年7月にIBD (炎症性腸疾患) センターを開設しました。
IBD(炎症性腸疾患)センターは消化器内科、消化器外科、小児外科、小児科、産婦人科(産科)の総合力を最大限に活用して、関連する診療科が綿密に連携することで、患者さんの若年化と高齢化、挙児希望、ワクチン摂取、栄養管理、成長管理など個々のニーズに対応したサービスを確立いたします。

新たな治療法の開発推進

また、当院は厚生労働省から臨床中核拠点病院に認定された総合病院であり、すでに組織されている免疫難病疾患に対応する免疫統括医療センターとも密接に連携して、標準治療だけでなく新規の治療薬候補の臨床開発、臨床治験を推進して参ります。現在我々は、クローン病に対するOCHという経口薬を用いた医師主導試験、抗TNFα抗体製剤効果不十分例の潰瘍性大腸炎に対するタクロリムスの上乗せ効果に関する試験、難治性潰瘍性大腸炎に対する生薬の臨床試験などを行っています。我々は、常に未来を見据え、患者さんに希望を与えることのできるチーム医療を実践して参ります。

患者さんの笑顔を目指したチーム医療

IBDセンターは全国に多数存在しますが、当院のIBD(炎症性腸疾患)センターの特徴は同じ病院で複数の科の診療が可能なことです。病院によっては外科手術が必要な場合や妊娠中の合併症があると別の病院へ転院する必要がありますが、当院ではその必要がほとんどありません。当院では内科と外科が同じ病棟で診療しているため、診療科の垣根なく治療に専念することが可能です。また当院の産科は不妊治療では日本有数の実績を有しているだけでなく、IBD患者さんの妊娠管理や分娩が可能な数少ない施設の1つです。小児専門の集中治療室(NICU)があることも強みのひとつです。またIBDは関節症状や皮膚症状などを呈することもありますが、当院ではこれらの腸管外合併症に精通したリウマチ内科、皮膚科の診療を受けることが可能です。

また病院診療日であれば 毎日専門医の診察が可能です。本センターでは7名のIBD専門医が診療にあたります。IBD専門の医師が常駐することにより、緊急時や再燃時にもスムースに治療判断が可能となります。病院診療日の土曜日にも4名の医師が診療に、2-3名の医師が内視鏡検査に従事しており、仕事や学業をなるべく妨げることなく治療をおこなうことができます。また週1-2回のカンファレンス(症例検討会) で情報を共有しており、医師による治療の差が少ないセンターです。

図

本センターは患者さん個別の状態に合わせた診療を目指して発足しました。患者さんが笑顔で社会生活を送れることを目標に診療に努めてまいります。

左から2番目:金井隆典(内科学教室(消化器)教授、IBD(炎症性腸疾患)センター長)、左から3番目:筆者

左から2番目:金井隆典(内科学教室(消化器)教授、IBD(炎症性腸疾患)センター長)、左から3番目:筆者

文責:消化器内科外部リンク

執筆:長沼 誠

最終更新日:2017年2月1日
記事作成日:2017年2月1日

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