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BMI療法
-リハビリテーション科-

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はじめに

BMI(Brain Machine Interface:ビーエムアイ)療法とは、脳と機械を連動させるシステム、Brain Machine Interfaceを用いた脳卒中片麻痺上肢機能障害の新しい治療法です。これまでの脳卒中後のリハビリでは有効な訓練を行うことが出来なかった、重度の上肢麻痺の患者さんを対象にした治療です。BMI療法は、約7年前から慶應義塾大学リハビリテーション医学教室を中心とするグループで研究されてきており、効果を示す論文を報告しています。

BMI療法をわかりやすく説明するためにはまず脳と運動のつながりについて理解する必要があります。通常、人が運動を行う際、運動に先立ち運動に関連する脳の領域が活動します。脳の活動から生じた運動の指令は神経を経て筋肉まで伝わり実際の運動が生じます。しかし、重度片麻痺患者さんのように損傷を受けた脳では運動の起点となる脳の活動が十分に認められないことがあります。 BMI療法では訓練中に麻痺してできなくなった運動のイメージをしてもらい脳の活動を促し、頭の表面に装着した電極で脳波を測定します。その際、正常な運動の際に起こる事象関連脱同期(ERD)という脳内の活動を検出し、それにあわせて電動装具により受動的に該当する運動を行わせます。これを繰り返すことで脳の活性化と脳の指令を受けて実際に手指の伸展に至るまでの経路を強化し、脳の機能回復ならびに麻痺した筋の筋活動の増加をもたらします。現在、当院では、手指伸筋群(手指を伸ばす筋肉)のBMI療法、肩関節屈曲筋群(肩関節を前から上に上げる筋肉)のBMI療法を行っています。

手指BMI療法

手指を伸ばす筋肉を対象としたBMI療法です。訓練は1日40分程、全10回の治療を行います。また入院中は通常の作業療法を行い、病棟では積極的に麻痺手を使用していただきます(図1)。

図1.実際の手指BMI療法の様子

図1.実際の手指BMI療法の様子

治療対象となる患者さん

手指BMI療法の治療対象となる患者さんは、次のような方です。

  1. 脳卒中による片側上肢の麻痺がある方
    ただし、四肢麻痺、失調は除きます。下肢に対しては行っていません。
  2. 手指はご自分の意志で曲げられても、伸ばすことができない方
  3. 座った状態で、麻痺した手を胸まで挙げることができる方
  4. コミュニケーション可能で研究内容が理解できる方
    (失語症などの障害は多少あっても構いません。)
  5. 重度の手指や手首の拘縮がない方
    * 拘縮(こうしゅく)とは、指や手首の関節がすでに固くなってしまって、他動的に動かそうとしても動かせない状態のことです。痙縮(けいしゅく:筋緊張の高まりによって動きづらい状態)とは異なります。痙縮はある程度強くても適応可能です。
  6. 歩行、身の回りの日常生活は自立している方
    (装具や杖を使っていても構いません。)
  7. 発症から6か月以上経過し、回復期のリハビリは終了し現在自宅で生活されている方。
  8. 中学生以上80歳以下の方

次の除外項目にあてはまる方はこの治療の対象となりません。

  1. 重篤な心・肺・肝・腎・内分泌系疾患の合併 急性の炎症性疾患への罹患や運動を妨げる整形外科疾患の合併
  2. 高度の認知障害、重度の精神疾患の合併
  3. ペースメーカーの使用、シャント術やクリッピング術などで体内(特に脳)異物を有する方
  4. てんかんを有する方・脳波に突発性異常を有する方

なお、最終的な治療適応は外来受診にて医師が総合的に判断をします。

治療および効果

治療期間:訓練は1日40分程、全10回の治療を行います。前後の評価期間を含めますと約2週間のご入院となります。

BMI療法の治療効果:これまでの患者さんの結果を総合すると、麻痺した上肢の運動機能が有意に改善することが明らかになっています。しかし、個人差もあり、改善がほとんどみられない方もいます。
具体的には、治療前には筋電図検査によって検出できなかった指を伸ばす筋肉の活動が治療後に検出できるようになる方は半数以上おられます。特に効果的だった方では、肉眼的に指が伸びるようになる場合もあります。さらに、指の機能だけでなく、肩や肘の機能の改善が明らかになっています。訓練が終わった後の効果の推移ですが、麻痺手の日常生活での使用を励行していただくことによって、治療終了後3カ月経過した時点でもほとんどの方で機能が維持できています。最新のデータでは、BMI療法後に7割の患者で治療前には認めなかった手指伸筋群の筋活動が認め、当院で行っているIVES療法またはHANDS療法へ移行できました。

副作用・有害事象:これまでに有害事象は生じていませんが、活動性のてんかん、あるいは入院前検査で異常な脳波を認める方は発作誘発のリスクがあると考えられており治療の対象とはなりません。

費用負担に関する事項:ここで行われるリハビリテーション、治療については、通常の健康保険内で行う慢性期入院リハビリテーションと同じ費用がかかるとお考え下さい。BMI装置の使用やそれを使っての訓練には、対価は発生しません。

肩BMI療法

上肢を挙げる筋肉を対象としたBMI療法です。日常生活で麻痺した手を活用できるようにするためには、指を伸ばす動作に加えて、上肢全体を挙げる動作が必要です。一方で、手指BMI療法では、上肢の挙がらない患者さんを治療の対象とすることができません。そこで現在、上肢が挙がらない患者さんを対象として、肩BMI療法の研究開発を行っております。これにより、将来的には手の重い麻痺の方には手指BMI療法、肩の重い麻痺の方には肩BMI療法というように、治療の選択肢が広がることが期待されます。

当院の担当の外来は、大高(月曜、火曜)、川上(月曜)、田代(土曜)です。

なお、BMI療法は、「AMED 脳科学研究戦略推進プログラム「BMI技術」、未来医療を実現する先端医療機器・システムの研究開発」の研究事業の一環として行っています。

リハビリテーション科

リハビリテーション科

文責:リハビリテーション科外部リンク

最終更新日:2016年8月1日
記事作成日:2016年8月1日

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