はじめに
慶應義塾大学病院に新しく設置された「予防医療センター」は、2012年8月1日から人間ドックを開始いたしました。
最新鋭の診断装置を導入し、大学病院の現役で活躍している医師や技師が検査・診断にあたり、他の検診施設よりも精度の高い検査と評価をいただけるように努めています。
最新の検査機器と検査内容をご説明し、人間ドックの概要をご紹介します。
検査機器と検査について
- 64列多列CT
CTによる胸部検査は、通常検診で使われている胸部単純X線写真よりもはるかに微細な所見を検出することが可能です。CTではX線による被曝が問題となっていますが、低線量撮影を行うことで、従来のCT検査の半分強の線量で撮影が可能となりました。
また、同時に腹部脂肪計測をCTで行っていますが、内臓脂肪量が計測できるので、腹囲計測よりも正確に脂肪の状態が検査できます。 - 高解像度内視鏡装置および高解像度X線TV装置(平面検出器)
上部消化管は内視鏡かX線を選択していただきます。
内視鏡装置は高精細かつ細径で、NBI(narrow band imaging)という特殊光による観察が可能です。とくに食道や咽頭の早期癌の診断に有用です。
X線装置は最近開発された平面検出器を装備したCアーム式寝台(血管造影検査用に開発されたもの)を使用しており、従来撮影が難しかった部位でも簡単に検査ができるようになりました。 - 超音波装置
腹部(肝臓や胆嚢、膵臓、腎臓など)、頸動脈、甲状腺や乳腺に使用する装置3台、心臓超音波検査用装置1台および経腟超音波装置1台があります。
腹部や乳腺などに用いる装置では臓器内の血流がわかるカラードップラー機能を具備しており、腫瘤が見つかった時はその腫瘍の血流が分かるので、より正確な診断が可能となります。 - MRI
最近、普及しつつある高磁場の3テスラのMRI装置と1.5テスラのMRI装置があります。
3テスラのMRI装置は主として脳の検査に用いますが、精密で鮮鋭な画像が撮れます。小さな脳動脈瘤もよくわかります。一方、腹部や骨盤などでは1.5テスラのMRI装置を用います。 - 骨密度装置
骨密度が低下すると骨折しやすくなります。通常の健診では指やくるぶしで検査することが多いようですが、正確に把握するためには背骨や骨盤で測定すべきです。私どもの装置では背骨などの骨密度を測定するとともに、全身を検査することによって、体組成(骨や筋肉、脂肪などの量や分布)がわかり、メタボリックシンドロームやアンチエイジングの診断に有用です。 - 乳腺X線装置(マンモグラフィー)
最近、開発されたデジタル装置で微細な所見が描出できます。 - PET-CT装置
当院ではPET-CTの造影剤であるFDGを院内で合成しているので、受診者に最適な薬剤の投与量や撮影時間を調整することができます。また、装置は現在販売されている中で最も短時間で鮮鋭な画像が撮影できる最新の装置なので、微細病変まで検出が可能です。薬剤を注入後しばらく安静にし、検査中は装置の上で寝ているだけでほぼ全身を検査することができます。
上記以外にも、脈波計測装置や肺機能装置、眼科の装置(眼底・眼圧・視力)、聴力装置、婦人科のコルポスコピー等いずれも最新の装置を導入しています。
また、検査データはすべて本院の電子カルテシステムに残り、他診療科の医師も見ることができるようになっています。
健診プログラム
基本コース(A)と、気になる部位や症状によって任意に併せて受けていただける専門ドック(B)、追加検査セット(C)および個別オプション検査(D)があります。なお、具体的な検査項目はホームページを参照してください。
(A)基本コース
4つのコースがあり、必ず1つを選択していただきます。皆様の健康状態を把握するためには、必ず基本コースを受けていただくというのが、当センターの方針です。
1)「標準ドック」は、上部消化管検査がX線か内視鏡かでさらに2つに分かれます。2)「消化器・肺がん検診ドック」は、検査の時間が取れないという多忙な方を対象に、日本人に多いがん(胃・大腸・肺・肝臓・胆管・膵臓など)の検査を1日で済ませることが可能です。3)「スーパーがん検診コース」は最新のPET-CT検査を組み合わせた、負担が少ない全身のがんをスクリーニングする検査です。
(B)専門ドック
本院の臨床各科の専門医師が診察や診断を担当します。
- 脳ドック(木・金):
脳血管疾患の早期発見のためのMRIや頸動脈超音波検査に加えて、脳の機能面を調べる高次脳機能検査を行います。ご希望に応じて、後日に専門医から説明を受けられます。
- 心臓・血管ドック(火・木):
心臓について詳細な検査をさせていただくとともに、背景にある動脈硬化など血管の異常も調べます。不整脈や胸痛、心臓病、動脈硬化が心配な方を対象としています。
- レディースドック(月・水・土):
乳がんや子宮・卵巣がんなど女性特有の疾患について詳細に調べます。
画像・検査の診断や結果の判定を専門医師が行うドック。異常が発見された方は専門医が面談させていただきます。
- メタボリックシンドローム・腎臓ドック:
「メタボ」を専門的に検査させていただくとともに、高血圧の原因となる腎臓疾患や内分泌疾患についても調べます。
- アンチエイジングドック:
老化度や老化を促進する危険因子を測定することで、若々しい人生を送っていただくためのお手伝いをします(80歳以下の方を対象)。
- 運動器(骨・筋肉・膝・腰)ドック:
これからの人生において、筋力の低下や関節の痛みなどで日常生活に支障が起きないようにチェックします。骨粗鬆症のリスクなども調べます。
上記 1.脳ドックおよび 3.レディースドックのメニューから、検査当日は医師の診察がなく、曜日に関係なく受診できる「画像のみ」のドックもあります。
- 脳画像ドック:
脳血管疾患を中心に検査いたします。青壮年の方に多い脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血を未然に防ぐことや脳動脈硬化などを調べます。
- レディース画像ドック:
乳腺および子宮卵巣などを画像によって調べます。
(C)追加検査セット
臓器や項目を限定して追加できる検査のセットです。
1)甲状腺セット、2)子宮頚がん検査セット(月・水・土限定)、3)乳がん検査セット、4)睡眠時無呼吸検査セット(簡易検査キット利用)、5)腫瘍マーカーセット、6)胃がんリスク検査セット
(D)個別オプション検査
当センターで行っている検査について個別に追加して選択していただくことも可能です。詳細項目についてはホームページをご参照ください。
テーラーメイドの健康管理
当センターでは「コーディネータ」という受診者をフォローする人員を配置し、人間ドックの受診を一度だけではなく、終生お受けいただきフォローアップを継続することで、受診者の健康管理をお手伝いいたします。受診者の情報やアフタケアをセンターのスタッフ全員がチームとして共有し、一般的な検診で行われているような機械的な健康管理ではなく、それぞれの方に応じた「テーラーメイド」の対応を目指しています。
また、受診される日は日常生活から離れてご自分の健康を見直すために、「非日常のリラックスできる空間」をご提供します。環境、システムともに、常に新しい試みを導入していく所存です。
慶應義塾大学病院予防医療センターは、大学病院の専門診療各科と緊密な連携を保ち、受診される方々の生涯「無病」を目指して、21世紀にふさわしい医療のあり方、高齢化の進展に合わせた「健康寿命の延伸」という課題に取り組んでまいります。
詳細はホームページや院内各所にあるパンフレットをご参照ください。直接ご来院いただくなり、電話をいただければ、詳しい説明やご相談にも対応させていただきます。
最終更新日:2013年3月4日
記事作成日:2013年3月4日