慶應義塾大学病院KOMPAS

HOME

検索

キーワードで探す

閉じる

検索

お探しの病名、検査法、手技などを入れて右のボタンを押してください。。

関節リウマチの生物学的製剤による治療

戻る

一覧

関節リウマチとは

関節リウマチは、免疫の異常によって関節に炎症が起こり、腫れや痛みが生じる病気です。男女比では、4倍程度女性に多く、我が国には60~100万人の患者さんがいるといわれています。原因は分かっていませんが、遺伝的な要因に、出産や喫煙、感染症など環境の要因が重なって起こると考えられています。関節リウマチはただ痛いだけではなく、無治療のままでは関節の中の骨や軟骨、腱が破壊され、関節が変形していきます。かつては治らない難病とされていましたが、現在は抗リウマチ薬の進歩によって、「寛解」という関節の痛みや炎症がない状態へとコントロールすることが可能となってきました。

関節リウマチの治療薬には、痛みを和らげるための薬と免疫異常に働きかける抗リウマチ薬があります。従来は、最初は痛み止め、次いで抗リウマチ薬、効果不十分であればほかの薬剤追加または変更といった1つ1つの段階的な治療の強化を、明確な指標なく半年や1年など長い時間をかけて行っていました。しかし、関節リウマチの関節破壊は発症2年以内に急速に進行することが分かり、現在は寛解という明確な治療目標と指標のもとに、早期から積極的かつ強力に抗リウマチ薬によって治療することが推奨されています(図1)。抗リウマチ薬には、大きく分けて免疫抑制(修飾)薬と、生物学的製剤、分子標的合成薬があり、ここでは生物学的製剤について説明します。

図1

図1.

生物学的製剤(参照:関節リウマチの内科的治療

生物学的製剤とは、化学的に合成した薬剤ではなく、生物から産生される物質(蛋白質)を応用して作られた治療薬の総称です。様々な研究によって、関節リウマチではサイトカインと呼ばれる免疫に関わる物質が通常よりも増えて、関節に炎症を起こし破壊を進行させることが分かりました。そして、これらサイトカインの働きや、それを産生する細胞の働きを抑える生物学的製剤が開発されたのです。現在日本で使用可能な生物学的製剤は8種類あり、投与法、投与間隔、抑えるサイトカインや細胞の種類などにそれぞれ特徴があって選択する際に考慮します(表1)。いずれの薬剤も関節炎を抑え、痛みや腫れを軽減し、寛解を維持し、そして最も大切な関節破壊を抑制するという高い効果を発揮します。関節破壊を抑制するということは、将来の関節変形や日常生活の困難を防ぐことができるということです。効果は、有効が8~9割、中でも著効が3~4割の方に認められます。寛解の状態が続いた患者さんの中には、生物学的製剤を中止しても寛解を維持することができる方もいます。これら薬剤によって破壊された関節が修復されることがあることも分かっています。

表1. 現在日本で使用可能な生物学的製剤

薬剤名

一般名

治療の標的

投与法

投与間隔

レミケード®

インフリキシマブ

TNF

点滴

4-8週毎

エンブレル®

エタネルセプト

TNF,LTα

皮下注射

1週間に2回

ヒュミラ®

アダリムマブ

TNF

皮下注射

2週毎

シンポニー®

ゴリムマブ

TNF

皮下注射

4週毎

シムジア®

セルトリズマブ

TNF

皮下注射

2週毎

アクテムラ®

トシリズマブ

IL-6

点滴

4週毎

ケブザラ®

サリルマブ

IL-6

皮下注射

2週毎

オレンシア®

アバタセプト

T細胞

点滴

4週毎


図2 赤で囲まれた骨びらんがTNF阻害剤開始2年後に修復されています

図2.
 赤で囲まれた骨びらんがTNF阻害剤開始2年後に修復されている。


生物学的製剤は大変優れた薬ですが、副作用や課題もあります。免疫の働きが抑制されますので、肺炎や結核などの感染症に注意が必要です。発疹やアレルギー反応を起こすこともあります。すべての方に効果があるわけではなく、効果のない方もいます。また、健康保険の3割負担で月数万円程度と値段が高いことが最大の課題かもしれません。

慶應義塾大学病院免疫統括医療センター

生物学的製剤による治療を受けている方は年々増加しています。製剤によっては関節リウマチのほかにクローン病眼ベーチェット病乾癬、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎などにも使用することが正式に認められています。慶應義塾大学病院では、これら免疫難病に対する最先端の治療をよりスムーズに安全に行うため、2010年9月より免疫統括医療センターを開設しました。免疫統括医療センターは、リウマチ・膠原病内科、消化器内科、皮膚科、整形外科、眼科と看護部門、薬剤部門が協力し合い、エキスパートを集結したユニットです。本センターで生物学的製剤治療や自己注射指導を行い、より多くの患者さんに快適かつ安全に治療を受けていただくことができるよう、力を注いでおります。

図3 滅菌操作で点滴調剤を行っています

図3.
 滅菌操作で点滴調剤を行っています。


図4 リクライニングチェア14台、ベッド3台で治療を行っています

図4.
 リクライニングチェアやテレビのあるカーテンで区切られた個別スペースで治療を行っています。


図5 専用スペースで自己注射指導を行っています

図5.
 専用スペースで自己注射指導を行っています。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: リウマチ・膠原病内科外部リンク
最終更新日:2019年7月25日

ページTOP