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閉塞性動脈硬化症

へいそくせいどうみゃくこうかしょう

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概要

閉塞性動脈硬化症とは、種々の原因により動脈硬化が進み、動脈が詰まったり、狭くなったりして症状が出現する病気です。高齢の男性に多く、食生活の欧米化に伴い、増加傾向であり、危険因子としては高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、透析などが挙げられます。症状は病変部位によって異なりますが、以下に閉塞性動脈硬化症が起きやすい下肢の症状を説明します。

図1

図1.閉塞性動脈硬化症

症状

下肢の閉塞性動脈硬化症では、下肢の冷感や、歩くとふくらはぎのあたりが痛くなり、しばらく休むとまた歩けるようになる(間欠性跛行)というような症状がみられます。間欠性跛行は腰(腰部脊柱管狭窄症)からも生じることがありますが、検査によって見分けることができます。また、虚血の進行に伴い、安静にしていても下肢が痛むようになり(安静時痛)、さらに進行すると、潰瘍や壊疽が生じます(重症虚血肢)。

図2

図2.閉塞性動脈硬化症の症状

診断

身体診察として、足の付け根から足先までの動脈拍動の触知を行います。また虚血による皮膚色調の変化(蒼白、チアノーゼ)を観察します。検査では、まず血圧脈波検査(ABI検査)を行います。ABI (ankle brachial pressure index)とは、足関節収縮期血圧/上腕収縮期血圧比のことで、両側足関節と両側上腕の血圧の比で算出します。血圧を測定するだけなので、非侵襲的(痛みを伴わない)検査です。通常は下肢の血圧は上肢の血圧と同じか少し高いのですが、この比が0.9以下の時は、下肢の動脈に狭窄または閉塞が疑われます。

身体診察とABI検査で、下肢動脈に病変が疑われた患者さんは、下肢カラードプラ検査(超音波検査で下肢の血流を測定する検査)や、造影剤を使用したCT検査、MRI検査などで動脈病変部位を評価いたします。慶應義塾大学病院には血管を専門にみている血管診療技師(CVT: Crinical Vascular Technologist)が常勤しており、非常に専門的な検査を行うことができます。また、超音波検査は造影剤を使用せず、被ばくのリスクもないため非常に優れた検査となります。

治療

治療は病変部位や症状、患者さんの希望をお聞きしながら総合的に判断します。治療法には薬物療法、運動療法、カテーテルを用いた血管内治療、外科的バイパス手術などがあります。
また難治性の下腿潰瘍や足趾壊疽などの下肢病変に対しては、積極的にフットケア(専門の看護師が介助につき、足のケアのサポートを行うこと)を行っております。
閉塞性動脈硬化症に対する治療の1番の目的は、血流が低下した部位に対して血流を回復させることです。今までは外科的バイパス手術により血流を回復しておりましたが、近年はカテーテルを用いた血管内治療が多くを占めています。外科的バイパス手術には全身麻酔が必要であることが多いですが、カテーテル治療は局所麻酔で治療を行うことができます。そのため、術後は平均して2日で退院することが可能となっています。具体的な治療の方法は動脈硬化のために狭くなった病変部に、ガイドワイヤーという特殊なワイヤーを通し、それを介して病変部にバルーンカテーテル(風船)を送り込み、病変部を直接内側から膨らませます(図3)。 また、風船で病変部を膨らませた後などに、「ステント」という特殊な金属のつっかえ棒を内側に置くこともあります。最近では、特殊な薬剤をコーティングした風船やステントなどの様々なデバイス(機器)が登場しており、その結果、一定の病変に対してはバイパス手術に劣らない成績を示しております。当院でも適切な方法を選択することで、高い治療効果を認めております。更に成績が向上しています。

図

図3.カテーテル治療

このように閉塞性動脈硬化症に対する血管内治療は、患者さんに対してやさしい治療として爆発的に普及してきておりますが、残念ながら現段階では全ての患者さんに適応することはできません。無理にこの治療を行うことにより様々なトラブルが生じることが報告されており、場合によっては不必要な下肢の切断に至ることもあります。これらの不必要なトラブルを避けるためには、外科的バイパス手術と血管内治療それぞれの長所と短所をよく理解し、患者さんの状態と病変部の解剖および性状をしっかりと把握したうえで、治療のプランを立てることが必要です。

生活上の注意

症状が出現するような閉塞性動脈硬化症の場合、全身の動脈硬化が進んでいることが多く、狭心症などの虚血性心疾患や、脳梗塞などを合併することが少なからずあります。これらの危険因子となる高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、透析などの管理が重要であり、生活習慣の改善が必須です。特に喫煙に関しましては病状を進行させ、治療成績を悪化させるため絶対におやめください。

慶應義塾大学病院での取り組み

当科では、血管外科の専門医が外科的バイパス術と血管内治療の両方を行っており、各々の患者さんに見合った適切な治療法を提供することを目指しています。常に全身の血管管理を念頭に置き、他科とも連携しながら治療に取り組んでおります。また進行した閉塞性動脈硬化症による下腿潰瘍から糖尿病性の下腿壊疽など、重症の下肢病変に対するフットケアにつきましても、専門の看護師を中心に、複数の診療科で連携をとりながらフットケアチームとしてケアのサポートを行っております。より詳しい情報は外科血管班のWebサイト外部リンクをご参照ください。

文責: 一般・消化器外科外部リンク
最終更新日:2019年12月27日

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