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羊水検査

ようすいけんさ

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概要

妊娠が成立された喜びと同時に、胎児が妊娠中も出生後も健康に育っていくかは両親にとって、常に心配事です。羊水検査は出生前診断の代表的な方法で、妊娠中の比較的早い時期に胎児の情報を知ることで、その病態を把握し、来たるべき分娩後の胎児の最も良い成育環境を整備するために行う技術です。

羊水検査とは

羊水は、胎児や胎盤などに対する外部からの圧迫を防ぎ、胎児の発育を助け、母体への衝撃をやわらげる働きをしています。また、出産時にはお産をスムーズにする役目があります。羊水中には胎児の皮膚や粘膜などから剥がれ落ちた細胞が含まれています。妊娠15~18週に羊水を採取し、胎児由来の細胞から胎児の染色体情報や特定の遺伝性疾患の有無を調べるのが羊水検査です。

羊水検査で調べる染色体とは

ヒトの体は60兆個の細胞からできているといわれ、その細胞ひとつひとつに染色体があります。染色体は遺伝子が集まったものであり、ヒトの設計図にあたる遺伝情報が含まれています。染色体は父親から半分、母親から半分引き継いだものが2本で1対となっています。22対の常染色体と1対の性染色体で合計46本あります(図1)。まれに染色体数が45本や47本であることや(数的異常)、染色体の構造の変化(構造異常)が認められます。構造異常とは、転座といわれる染色体の一部が正常の位置から別の位置やほかの染色体へ移動している状態や、染色体の一部が欠けていたり(部分欠失)、過剰になっていたりする状態をいいます。

図1

図1

羊水検査の目的

羊水検査は、胎児由来の細胞から胎児に染色体の変化(染色体異常)があるかどうかを調べるための確定診断検査として実施されます。また、特定の遺伝性疾患の有無を調べる目的で遺伝子変異や酵素の変化を調べることもあります。この検査は、任意の検査であり、すべての妊婦に提供されるべき必須の検査ではありません。以下のいずれかに該当する場合に希望があれば検査可能です。

  1. 夫婦のいずれかが、染色体異常の保因者である場合
  2. 染色体異常症に罹患した児を妊娠、分娩した既往を有する場合
  3. 高齢妊娠の場合
  4. 夫婦のいずれかが、胎児が新生児期もしくは小児期に発症する可能性のある重篤な遺伝病の素因を有していることが分かっている場合
  5. その他、胎児が重篤な疾患に罹患する可能性のある場合

羊水検査の方法

方法として、超音波断層法で胎児の位置、胎盤の位置を確認し、安全な部位から細い穿刺針を用いて羊水を吸引する羊水穿刺を行って検体を採取します。この際に皮膚の局所麻酔を施して痛みを軽減します。羊水は、胎児が羊水を飲み、排尿することで一定の量が保たれるようになっていますが、その中に胎児由来の細胞が浮遊しており、羊水中の胎児細胞を回収し、培養したうえで染色体分析を行います。詳細な分析結果を得るまでに3週間以上の期間を要します。実施の時期は妊娠15~18週です。

図2

図2

羊水検査の安全性

羊水検査では以下のような合併症が生じうるとされています。

  1. 一般に、羊水検査の実施後に0.1~0.3%の確率で検査に関連する流産が起こるとされています(文献1)。
  2. 検査後の感染症(絨毛膜羊膜炎)の出現が、1/1000以下の頻度で観察されたといわれています(文献2)。
  3. 胎児の受傷も起こり得ますが、超音波を当てながら羊水穿刺を行った場合、胎児に針が刺さったことはなかったと報告されています(文献3)。

合併症を防止するために、羊水穿刺日に子宮収縮や出血のないこと、子宮頸管が短縮していないことなどの確認が必要で、不安定な状態での穿刺は望ましくありません。穿刺後は、しばらく休養し、当日・翌日は安静を心がけるほうが望ましいです。また、感染予防のために抗生物質や子宮収縮抑制のために薬の内服も一助になると考えられます。

羊水検査以外の出生前診断

出生前に行われる検査には、確定診断を目的とする検査と非確定的な検査があります。
羊水検査は、特に染色体の数・構造の変化を伴う染色体異常に対する確定的検査として実施されます。同様に確定的検査として実施される検査として絨毛検査があります。胎盤を形成する組織の一つである絨毛は受精卵に由来しているため、染色体検査に利用できます。妊娠10週から12週に超音波検査によって胎盤の位置を確認しながら、絨毛を採取します。採取した絨毛を培養して得られた細胞や直接抽出したDNAを用いて、胎児の染色体や遺伝子を分析します。早く診断ができる一方、流産のリスクが高くなるといわれており、一般的に3%前後といわれています。

一方、非確定的な検査として、母体血清マーカーテスト(トリプルマーカーテストやクアトロテスト)や母体血に胎児の細胞から溶け出したDNAを調べることによって胎児情報を調べるNIPT(母体血を用いた新しい出生前検査)などもあります。母体血清マーカーテストもNIPTも母体の採血のみのため、胎児へのリスクは生じません。しかし、確定診断ではなく、得られる情報は染色体の一部(トリプルマーカーテストは原則として21番染色体に関する情報のみ、クアトロテストでは18番染色体に関する情報も含みます。NIPTは21番、18番、13番染色体に関する情報のみ、と日本産科婦人科学会の「母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針」ではなっております)に留まる限定的な検査です。また、検査陽性と判定されたにも関わらず、実際には児が病気ではないと判明する事例や、検査陰性と判定されたにもかかわらず、実際には出産後に児の病気が判明する事例も一定の割合で存在します。あくまで、母体血清マーカーテストもNIPTも羊水検査を受けるべきかを考慮するための検査と捉えてください。検査の実施時期は、母体血清マーカーテストは妊娠15~17週、NIPTは10~14週が推奨されています。

また、親がすでに重篤な遺伝性疾患の保因者である場合には、受精卵から診断する着床前診断という方法が選択肢になることもあります。
羊水検査で異常が認められなかったとしても、胎児の病気がすべて否定できるわけではありません。羊水検査は任意の検査になりますが、検査を受ける前にお二人でも検査を受ける目的や検査結果を知ったときにどのようにしていきたいかを考えておくことをおすすめします。
羊水検査で得られた結果から染色体異常などが検出された場合は、結果から推定される胎児の状態や予後について詳しい説明を受けていただきます。羊水検査で得られた結果を理解し、お二人がより良い選択ができるように検査前も検査後も臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーがサポートしていきます。

参考文献

  1. Practice Bulletin No. 162: Prenatal Diagnostic Testing for Genetic Disorders. Obstet Gynecol. 2016 May;127(5):e108-e122. doi: 10.1097/AOG.0000000000001405.
  2. Cunningham FG: Williams obstetrics. 24th edition., xviii, 1358 pages, McGraw-Hill Medical, 2014.
  3. Randomised controlled trial of genetic amniocentesis in 4606 low-risk women. Tabor A, Philip J, Madsen M, Bang J, Obel EB, Nørgaard-Pedersen B . Lancet. 1986 Jun 7;1(8493):1287-93. doi: 10.1016/s0140-6736(86)91218-3.

文責: 産科外部リンク
最終更新日:2022年2月8日

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