慶應義塾大学病院KOMPAS

HOME

検索

キーワードで探す

閉じる

検索

お探しの病名、検査法、手技などを入れて右のボタンを押してください。。

脊椎腫瘍

せきついしゅよう

戻る

一覧

概要

脊椎腫瘍はいわゆる脊柱(せぼね:骨)にできる腫瘍(できもの)です。原発性脊椎腫瘍と転移性脊椎腫瘍(悪性腫瘍(がんなど)の転移)に分類されます。原発性脊椎腫瘍は種類も豊富で若い方からお年寄りの方までの幅広い年齢層にみられますが、頻度は高くありません。一方で転移性脊椎腫瘍は、中・高齢者に多い傾向にあります。肺がん、乳がん、前立腺がん、胃がん、甲状腺がん、腎細胞がんなどが頻度の高い原発巣です。発生部位により頚椎(くび)、胸椎(せなか)、腰椎(こし)、仙骨(でん部)腫瘍に分類されます。

症状

初発症状は疼痛やしびれが最も多くみられます。脊椎腫瘍では腫瘍によって骨が壊されることで脊椎の支持性(体を支える機能)が失われたり、腫瘍が神経を圧迫することにより症状が出現します。頚椎腫瘍では主に頚肩腕部の痛みやしびれ、胸椎腫瘍では側胸部痛、上腹部痛に続いて脊髄症状(脊髄神経が圧迫されることで生じる神経麻痺症状)を呈す頻度が高い傾向にあります。脊髄症状は下肢の運動障害(筋力低下)や知覚障害(感覚麻痺)をきたし、進行すると完全麻痺(全く下肢が動かず感覚の分からない状態)になります。一方、腰椎腫瘍では下肢痛やしびれで発症することが多く、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症と誤診されることもあります。

診断

すでに癌の診断と治療を受けている場合は、その転移巣の可能性を考慮しつつ全身の検索を行います。一方、原発巣が不明の場合は、転移巣の病理組織所見や種々の画像検査所見を参考に原発巣の検索をおこないます。画像所見においては、椎体の骨破壊像やそれに伴う病的骨折、椎弓根が破壊されている場合は椎弓根消失像(winking owl sign, pedicle sign)が観察されます。前立腺癌などの一部の転移性腫瘍では、骨硬化(骨が硬くなる)像がみられることがあります。腫瘍の局在や神経の圧迫程度の評価にはMRIが最も有用です。また、原発性脊椎腫瘍では画像によるある程度の組織診断後に、生検術を行い最終的な組織診断を得ます。

鑑別診断

骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折や化膿性脊椎炎などの感染性疾患との鑑別が重要です。鑑別にはMRIやCTが有用です。

治療

腫瘍の種類、占拠部位、病期などを総合的に評価して治療法を選択します。一般に手術療法と化学・放射線療法などの補助療法を併用します。術式は神経除圧術や腫瘍切除術が用いられ、時に脊柱再建術が併用されます。近年では悪性腫瘍に対する全脊椎切除術(Total en bloc spondylectomy)などの根治的手術も症例によっては可能となり、治療成績の著しい向上が得られています。原発巣や単・多発性により治療方針は異なりますが、一般に進行性の神経麻痺を呈している症例では、全身状態や生命予後を充分に考慮した上で至急に神経除圧術を施行します。痛みや無症候性の場合は、化学療法や放射線療法などの補助療法を行うことが一般的です。原発性脊椎腫瘍では、腫瘍の種類により経過観察から外科的治療を要するものまでさまざまなので、主治医の先生とご相談ください。

慶應義塾大学病院での取り組み

原発性および転移性脊椎腫瘍など、技術的に困難な手術治療も積極的に手がけております。可能であれば腫瘍を一塊として摘出する脊椎全摘術(Total en bloc spondylectomy:TES)などの根治的手術を積極的に施行することにより、患者さまの長期生命的予後や運動機能の獲得を目指しています。摘出が不可能として他院で手術を断念された患者さんにも可能であれば腫瘍の全摘術を行う場合もありますので、主治医の先生にご相談ください。

文責: 整形外科外部リンク
最終更新日:2018年1月15日

ページTOP