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小児小腸移植

しょうにしょうちょういしょく

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概要

小腸移植とは、障害を受けた小腸あるいは疾患のある小腸を摘出し、提供された健康な小腸に置き換えることです。 移植をしなければ改善することのない腸管(小腸)不全の患者さんには、小腸移植が必要となります。腸管不全とは、腸が消化や吸収ができなくなった状態を指し、大きく以下のように分類されます。

  1. 短腸症候群: 血流不全・感染・外傷・腫瘍などの病態によって小腸の大部分が外科的に切除された状態(中腸軸捻転・腹壁破裂・外傷・壊死性腸炎・腸閉鎖・腫瘍・その他)
  2. 運動機能障害: 小腸の壁にある筋肉を効果的に動かすことができないために食べ物を効率よく運ぶことができない状態(ヒルシュスプルング病・ヒルシュスプルング病類縁疾患・慢性特発性偽性腸閉塞・その他)
  3. 消化・吸収障害: 腸管が存在するにもかかわらず、水分や栄養素を十分に吸収できない状態

腸から栄養が摂取できない患者さんは、静脈からの栄養摂取により生存が可能となりましたが、長期にわたると敗血症や肝障害などの危険があるばかりでなく、静脈からの血管確保が難しくなり、静脈栄養を継続することができなくなります。また人間の生きる楽しみの1つである食事を摂ることができません。移植が成功すると、中心静脈栄養が不要となり、食事制限や水分制限もなくなることが期待されます。十分に機能した小腸によって今よりも健康な状態を手に入れることが可能になります。

小腸移植には、脳死体ドナーからと生体ドナーからの2種類の移植方法があります。小腸移植は、全世界においてこれまでに約3,000人の患者さんに対して行われています。そのほとんどは脳死体ドナーより提供を受けています。日本では2018年12月までに27例に対して30回の小腸移植が施行されています。そのうち、生体小腸移植は13回、脳死小腸移植は17回行われています。
小腸移植術後には、タクロリムスとステロイドを中心とする多剤併用免疫抑制療法が必要となります。

治療後経過

我が国における移植成績は欧米の成績より優れていますが、1年生存率89%、5年生存率72%、10年生存率54%となっております。(2018年12月の時点)
小腸移植はほかの臓器移植に比べて拒絶反応が起こりやすく、移植後は、頻回の内視鏡検査、グラフトの組織検査を行い、拒絶反応のモニタリングが必要です。移植後2~3年で経過良好と判断されると、人工肛門が閉鎖されます。移植手術によって、食事の制限がなくなり、高カロリー輸液が不要となると、生活の質は格段に上がります。免疫抑制剤の内服は一生涯必要ですが、感染症や拒絶反応などに留意しつつ、ほぼ通常の社会生活ができるようになります。

文責: 小児外科外部リンク
最終更新日:2020年10月15日

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