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新生児の血液型

しんせいじのけつえきがた

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血液型は、血液の中の赤血球という細胞の型で決まります。血液型には種類が複数ありますが、一般的によく知られている血液型は、ABO血液型といわれるものです。ABO血液型は、赤血球側(おもて試験)と血漿(血液の液体成分)側(うら試験)の両方を検査し、その結果を照合して決定します。

赤血球側の検査は、赤血球膜上の抗原(こうげん)というタンパクを調べます。A抗原、B抗原の有無を検査しており、たとえばA抗原だけ検出されるとA型と判定されます。一方、血漿側の反応は抗体(こうたい)という免疫のタンパクを調べます。抗A抗体、抗B抗体の有無を検査しており、たとえばA型の人は抗B抗体のみ検出されます。このようにABO血液型の決定には、抗原と抗体両方の検査が必要なので、赤血球側(おもて検査)と血漿側(うら検査)をペアで行います。 

生後間もない小児は、まだ自分で十分な量の抗体をつくっておらず、かつ胎児期に母体から移行した抗体が沢山ある状態です。そのため、通常新生児では血漿側(うら検査)をせず、赤血球側(おもて検査)だけを行います。また、新生児では赤血球膜上のA抗原、B抗原の現れ方が弱く、成人の3分の1程度であり、2~4歳になって成人並みになるといわれています。したがって、「新生児の時に検査した血液型と大人になったときの検査結果が一致しない」場合があります。新生児期に赤血球側検査(おもて検査)だけ行われた場合に、赤血球膜上のA抗原、B抗原の反応が弱く、A型やB型なのにO型と判定されたり、「判定不能」という結果になったりする場合があるためです。

このように、新生児期の血液型検査の精度には限界があります。出生後間もなく大きな手術を受けなくてはならないような場合は、血液型の検査を複数回行い、かつ患者さんの血液と輸血用の血液を混合して異常な反応が無いことを確認し、輸血の安全性を担保するようにしています。

1990年代頃までは、分娩費用の一環として新生児の血液型検査を取り入れている分娩医療機関もありましたが、現在では前述のような理由で、診療上の必要性がなければ新生児期の血液型検査は行われません。では、いつ血液型の検査をするのがいいでしょう?

生後6か月は血液型の抗体が産生され始める時期、1歳は全ての小児に抗体が産生される時期、3歳は赤血球膜上のA抗原、B抗原の現れ方が成人並みになる時期です。したがって、正確な血液型の判定を求めるならば、4歳以上での検査が望ましく、できれば小学生になる頃に再検査を受ければよいと考えられます。「親として子どもの血液型を把握していないのは不安」と感じられる場合もあるかもしれませんが、お子さんに輸血が必要となる場合には、輸血を行う医療機関で前述のような輸血前検査が速やかに行われますのでご安心ください。なお、血液型検査は手術が必要などの場合を除いて、自費での検査になり、自己負担額は1,000~5,000円程度です。

文責: 小児科外部リンク
最終更新日:2024年1月12日

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