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痛風・高尿酸血症

つうふう・こうにょうさんけつしょう

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概要

血液中の尿酸が通常よりも濃い、すなわち尿酸値が高い状態を高尿酸血症といいます。遺伝子DNAの原材料の1つにプリン体という物質があり、作られたプリン体が不要となってできた老廃物が尿酸です。そして、プリン体や尿酸がからだの中で過剰に作られたり、プリン体や尿酸を腎臓から十分に排泄(はいせつ)できない場合に高尿酸血症となります。日本では前者(尿酸合成過剰型)が約20%、後者(尿酸排泄低下型)が約60%、両者の混合型が約20%を占めています。
高尿酸血症では、尿酸の一部が溶けきれなくなり尿酸が結晶化することがあります。この結晶化した尿酸が痛風の原因物質であり、関節にたまって炎症をおこすと痛風発作という関節の痛みや腫れ(はれ)を起こします。また、腎臓にたまって腎臓の働きが悪くなる痛風腎(つうふうじん)や、腎臓・尿管結石(じんぞう・にょうかんけっせき)をおこすこともあります。一般的に尿酸値は女性のほうが低い傾向にあり、痛風は圧倒的に男性に多い病気です。

高尿酸血症の原因は、一般的に生活習慣の乱れによるものが大半です。食事ではアルコールは重要であり、特にビールのとりすぎは高尿酸血症の原因としてよく知られています。また、肉類にかたよった食事内容でも尿酸値が高くなります。このような食生活を送られている方は、体重が増え気味なことが多く、結果として高尿酸血症は肥満の患者さんに合併する傾向があります。生活習慣の乱れ以外の原因としては、薬物(おもに利尿薬)、腎不全(じんふぜん;腎臓の働きが悪い状態)、白血病などの悪性疾患が挙げられます。また極めてまれですが、生まれながらに尿酸の代謝が不十分な病気もいくつか知られています。

高尿酸血症は痛風を引き起こすだけではなく、動脈硬化(どうみゃくこうか)による大血管障害(狭心症(きょうしんしょう)、心筋梗塞(しんきんこうそく)、脳梗塞(のうこうそく)など)の危険因子としても知られています。高尿酸血症の患者さんは、肥満とともに高血圧、高血糖、脂質代謝異常症を同時に合併していることが多く、動脈硬化予備群であるメタボリックシンドロームと診断される人も少なくありません。したがって高尿酸血症の場合は、尿酸値だけでなく、肥満、血圧、脂質、血糖といった他の動脈硬化の危険因子にも目をむけ、適切な治療をすすめていく必要があります。

診断

高尿酸血症は、血液検査で診断します。当院では尿酸値が7.0mg/dl以上の場合に高尿酸血症と診断しています。
痛風は、症状や腫れ具合をみながら慎重に診断をすすめていきます。痛風による関節の痛みや腫れは、足の親指の付け根のところにおこりやすいのが特徴です。足あるいは足首の関節、時には膝(ひざ)関節におこることもあります。突然の激痛ではじまり、じっとしていても痛く、また痛みの強いところは皮膚が赤くはれ上がり(発赤)、熱っぽい感じ(熱感)をともなっています。以前から高尿酸血症があったかどうかが痛風の診断のポイントですが、まれに尿酸値が正常上限くらいでも発作をおこすケースがあります。

痛風の発作は、しばしば食生活がきっかけになることがあります。肉類を中心とした過食やアルコール(特にビール)の飲みすぎはその1例です。いずれも尿酸値を短期間に大きく変動させ、これが痛風発作を誘発することがあります。

痛風発作に似た他のまぎらわしい病気があります。その1つが偽痛風(ぎつうふう)です。おもに膝を中心とした大きな関節の痛みを特徴とします。尿酸の結晶ではなくピロリン酸カルシウムという物質が関節にたまって炎症を起こすのが原因です。レントゲン写真や関節内の液体の成分を調べることによって診断します。

糖尿病や動脈硬化の強い患者さんでは、まれに足に蜂窩織炎(ほうかしきえん)という皮膚のばい菌感染を合併することがあります。痛みや「はれ」、皮膚の発赤、熱感をともないますので、痛風との区別に迷うことがあります。腎臓内分泌代謝内科ならびに皮膚科で協力して診断・治療にあたります。

治療

(1) 痛風発作の急性期(痛風発作がおきてしまった場合)

痛みに対しては、痛み止めの薬を使います。痛みは尿酸値の大きな変動によって悪化しますので、一般的に尿酸の薬を新たに始めることはありません。ただし、発作前から尿酸の薬を飲んでいる場合は、薬の中止あるいは量の変更をせず、そのまま続けて内服していただきます。
痛風発作を繰り返している患者さんの中には、発作の予兆を感じられる人がいます。その場合は、コルヒチン®という薬が発作の予防に有効とされています。しばしば下痢などの副作用が問題となります。

(2) 痛風発作の寛解(かんかい)期(痛みがおさまったあと)
(3) 痛風発作をおこしたことのない高尿酸血症の場合

いずれも尿酸値6.0mg/dl未満を目標として生活習慣の改善をお勧めし、場合によっては薬物療法も行います。

a) 生活習慣の改善
食事療法:プリン体を多く含む食品をとり過ぎないように気をつけます(表1)。
アルコール:特にビールの飲みすぎは禁物です。
減量(肥満の方):肥満は高尿酸血症の危険因子の1つですので、適切なカロリー摂取を心がけ、徐々に体重を落としていきましょう。
水分をよくとる:お水やお茶の類は、血液の尿酸を薄めてくれるとともに、体の外への尿酸の排泄をうながします。

b) 薬物療法
尿酸の薬は、大きく2種類に分けられます。

  1. からだの中で尿酸が作られすぎるのをおさえる薬
    尿中に尿酸がたくさん排泄されているにもかかわらず尿酸値が高い場合に使用します。

  2. 尿中への尿酸の排泄をうながす薬
    尿中への尿酸の排泄が悪い場合に使用します。ただし、過去に腎・尿管結石を経験されたことのある方にはお勧めできません。まれですが肝障害をおこすことがありますので、慎重に経過をみます。また、腎臓に石が出来にくくなるよう、尿をアルカリ性に保つ薬を一緒に処方することがあります。

 表1 プリン体の多い食品と少ない食品の代表例

極めて多い

鶏レバー、マイワシ干物、イサキ白子、あんこう肝酒蒸し、カツオブシ、ニボシ、干し椎茸

多い

豚レバー、牛レバー、カツオ、マイワシ、大正エビ、マアジ干物、サンマ干物

少ない

ウナギ、ワカサギ、豚ロース、豚バラ、牛肩ロース、牛肩バラ、牛タン、マトン、ボンレスハム、プレスハム、ベーコン、ツミレ、ほうれんそう、カリフラワー

極めて少ない

コンビーフ、魚肉ソーセージ、かまぼこ、焼ちくわ、さつま揚げ、カズノコ、スジコ、ウインナーソーセージ、豆腐、牛乳、チーズ、バター、鶏卵、とうもろこし、じゃがいも、さつまいも、米飯、パン、うどん、そば、果物、キャベツ、トマト、にんじん、大根、白菜、ひじき、わかめ、こんぶ

(高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン ダイジェスト版p15、表17より転載許可を得て引用)

慶應義塾大学病院での取り組み

腎臓内分泌代謝内科では、高尿酸血症・痛風の的確な診断ならびに適正な治療の提供を心掛けています。

さらに詳しく知りたい方へ

  • KOMPAS病気を知る「痛風」(リウマチ内科)

文責: 腎臓・内分泌・代謝内科外部リンク
最終更新日:2017年3月22日

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