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肺がんに対する凍結融解壊死療法 -呼吸器外科・呼吸器内科・放射線診断科-

はじめに

凍結融解壊死療法(クライオアブレーション、以下凍結療法)は、局所麻酔下にがんに凍結針を刺し、がんを凍らせて壊死させる治療法です。慶應義塾大学病院では2002年から約230名の肺がんの患者さんたちにこの治療を行い、良好な治療成績を収めてきました。2012年より治療を一時休止していましたが、2014年10月より再開いたしました。凍結療法には、(1)体への負担や痛みが比較的少ない、(2)呼吸機能の低下がほとんどない、(3)放射線や化学療法が効きにくいがんにも効果が期待できる、(4)治療部位に再発した場合も繰り返し行うことができる、という特徴があります。

外来での窓口は、呼吸器外科になります。入院後の治療は、呼吸器外科、呼吸器内科、放射線診断科の連携のもとに、看護師、放射線技師、臨床工学技士からなるチームで担当いたします。また、それぞれの患者さんにとって凍結療法が最適な治療かどうかは、内科医、外科医、放射線科医で構成される「肺がんカンファレンス」にて入院前に検討いたします。

問い合わせ先: 呼吸器外科外来 (月曜 担当:大塚 崇、 火・水曜 担当:加勢田 馨)

凍結療法の対象となる患者さん

凍結療法の対象となるのは次のような患者さんです。

基本的に、従来のがん治療(手術、化学療法、放射線治療)を受けられない患者さんを凍結療法の対象としています。

  1. 原発性肺がんIA期(がんの最大径が3cm以下でリンパ節や遠隔臓器に転移がない状態)で、手術、放射線治療が受けられない患者さん
    例:放射線治療後の局所再発で再度の放射線治療ができない患者さん

  2. 転移性肺がんで、肺以外に病変がなく、がんの最大径が2cm以下、かつがんの数が5個以内の患者さん
    例:化学療法や放射線が効きにくいがんだが、呼吸機能的に肺を切除できない患者さん

がんの種類にもよりますが、サイズが大きいがんでは十分な治療効果を得にくいことが分かってきたため、上記のような患者さんを主な対象としています。凍結療法は局所麻酔下に行う治療ですが、合併症に対する手術が必要になった場合に備えて、全身麻酔をかけられる体力は必要です。また、転移性肺がんの患者さんは、当院で凍結療法を受けた後も元々治療を受けてきた病院への通院を継続していただきます。

凍結療法の有効性

手術不能の原発性肺がんIA期の患者さんに対する凍結療法では、3年局所制御率(3年間凍結部位にがんが再発しなかった患者さんの比率)97%、3年全生存率(凍結療法後に3年間生存された患者さんの比率)88%、3年無再発生存率(3年間全身のどこにもがんが再発しなかった患者さんの比率)67%、平均全生存期間62カ月、と定位放射線治療に匹敵する良好な治療成績を収めています。

転移性肺がんでは、がんの種類によって治療成績が異なります。一般的には、がんの最大径が20mm以下の比較的小さながんでは、3年局所制御率は70%と良好です。

凍結療法は、放射線や化学療法とは全く異なるメカニズムでがん細胞を壊死させるため、放射線や化学療法が効きにくいがんに対しても効果が期待できます。また、治療後に呼吸機能が低下しないことも特徴のひとつです。放射線治療との違いとして、凍結部位に再発を来たした場合に繰り返し治療が行えるというメリットもあります。

凍結療法の合併症

凍結療法は体への負担が比較的少ない治療法ですが、それでも以下のような合併症が起こり得ます。

  1. 気胸(頻度62%):
    凍結針を刺した肺の穴から空気が漏れて、気胸が起こることがあります。軽度の場合には経過観察を行いますが、中等度以上では胸腔ドレーンという管を胸の中に留置します(頻度18%)。それでも治癒しない場合には、癒着剤を胸の中に注入して穴を塞ぐ治療法(胸膜癒着療法)や手術を行います。

  2. 胸水・血胸(頻度71%):
    凍結療法後に胸の中に水や血液がたまることがありますが、ほとんどの場合は処置を行うことなく自然に胸水・血液が吸収されます。なかなか吸収されない場合や量が多い場合は、胸腔ドレーンを胸の中に留置して、水を体外へ排出します。

  3. 血痰(頻度37%):
    凍結療法中または治療後に血痰が出ることがあります。自然に止まることがほとんどです。

  4. 膿胸(頻度0.5%):
    非常に頻度は低いですが、治療後に胸の中に感染を起こす可能性があります。抗菌薬による治療や、胸腔ドレーンを留置します。

  5. がん細胞の播種(頻度0.4%):
    凍結針を刺した経路(胸壁など)にがん細胞がばらまかれてしまうこと(播種)が起こり得ます。その場合には、播種巣に対する手術や放射線治療を検討します。

  6. 空気塞栓:
    肺に針を刺すと、空気が血管内に吸い込まれることで脳梗塞や心筋梗塞が起こすことがあります。発生した場合には、頭の位置を低くした状態で安静にし、血管内の空気が溶けるのを待ちます。2014年9月時点で凍結融解壊死療法後に空気塞栓の発生はありません。

  7. その他の予期せぬ合併症:
    凍結融解壊死療法は新しい治療法であり、過去の経験からは予期できない合併症が起こる可能性もあります。その場合にも、各診療科と協力し最善の対処を行います。また、2014年9月時点で治療関連死亡(治療後1か月以内に患者さんが亡くなられること)はありません。

凍結療法の実際

凍結療法は通常4~5日の入院で行われます(気胸などの合併症で入院期間が延長する場合もあります)。

入院1日目(治療前日):
オリエンテーション等を行います。

入院2日目(治療日):
朝から食事を止めて、午後から治療を開始します。治療に要する時間は3~4時間です。治療は局所麻酔下に行いますが、少し気分が楽になるような薬を使用します。CT室の台の上に横になり、CTを撮影しながら凍結針をがんに刺します。凍結針が適切な位置にあることを確認したのち、約50分間かけてがんを凍結融解します(5~10分間凍結して、10分間融解させるというプロセスを計3回繰り返します)。治療後は病室に戻り安静にします。

入院3日目(治療翌日):
胸部X線写真、血液検査、胸部CT検査を行います。治療翌日から歩行や食事は通常通り可能です。

入院4~5日目(治療2~3日目):
胸部X線写真で問題がなければ退院になります。

図1 凍結療法中の様子

図1 凍結療法中の様子
CTを撮影しながら凍結針を留置している様子です。

図2 凍結療法中のCT画像

図2 凍結療法中のCT画像
【左】治療前:矢印が指しているのが肺がんです。【中央】凍結中:凍結針で貫かれたがんがアイスボールで包まれています。【右】治療終了後:凍結範囲に一致して白い影ができています(矢印)。数か月かけてこの影が小さくなっていき、最後に小さな影が治療後の傷痕として残ります。

凍結療法の費用

凍結療法は保険外診療のため、治療費は患者さんの自己負担になります。ご参考までにおおよその費用を以下に示します。

自己負担額=入院治療費:68万円(4~5日入院)+ 材料費:凍結針1本につき15万円
注:がんの数や大きさにより使用する凍結針の数は変わります。1病変当たり1~2本の凍結針を使用することが多く、これまで治療を受けた患者さんでは1回の凍結療法で平均2.4本の凍結針を使用してきました。

例として、凍結針を2本使用した場合は、治療費68万円+ 材料費30万円=計98万円の自己負担となります。また、個室をご希望の場合は個室料が別途発生いたします。

凍結療法後の経過観察

治療後は外来に通院していただき、3ヵ月ごとの胸部CTで凍結療法の治療効果を評価していきます。治療部位での再発や新病変を認めた場合には、再治療の適否を検討いたします。外来通院の医療費は健康保険でカバーされます。

おわりに

過去10年間の治療経験から、どのような患者さんに凍結療法が有効なのかが明らかになってきました。(1)3cm以下の原発性肺がん、(2)2cm以下かつ5個以内の転移性肺がんで、従来のがん治療(手術、放射線、抗がん剤)を受けられない患者さんにとって、凍結療法は有効な治療手段となりえます。治療をご希望の方は、月~水曜日の呼吸器外科外来を予約受診してください。

最終更新日:2015年10月15日
記事作成日:2014年10月1日

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